いい友達の話
「なっつん!お久~!」
「あ、陸…」
ホームルームを終えて帰ろうとしている私の前に現れたのは、違うクラスの陸だった。
「…だからさいつも言ってるけど、大声で呼ばんといてって。陸の声めちゃくちゃ注目浴びるから、」
「あー、ごめんごめん」
クラスは離れていても、こうやって中学生のころと変わらずに話しかけて来てくれる。とても嬉しいのだけれど、アイドルに大声で名前を呼ばれて2人で話しているという状況はかなり目立つ。
「どうしたん?」
「そうそう、今度俺と咲と尚くんで映画するってゆってたやん?大阪に挨拶しに来るから、そのチケット私に来てん」
前々からその日は空けておくようにと念押しされていたので、ちゃんと予定はいれていない。
「やったぁありがとう!最近めっちゃ予告流れてるよな?早く見たかってん…2枚くれるん?」
陸はいつも映画や舞台に出るときに、私を招待してくれる。いつもチケットは1枚渡してくれていたのに、何故か今回は2枚入っている。
「なっつんが彼氏いるっぽいって情報を聞いたから、2人で来るかなぁって思って入れといた!」
…彼氏?
「…せっかく2枚入れてもらってんけど私彼氏おらんで?」
「えっそうなん?夏月がデートしてたんだよねってこの間しょー君がゆっとったで?」
「しょー君…」
しょー君がその話をするという事は、ふーがさんと遊びに行った時の話しかない。陸が誤解するようなことをわざわざ言ったな。
「しょー君は話盛ってるだけやから鵜吞みにせんといて!普通に遊びに行っただけやし、2人はどういう話の流れでその話題になったんさ…」
「え?しょー君に会うたびになっつんに変な男が付いてないか確認されるから、その流れで教えてくれた」
もしかしたら私の知らない間に変な情報を陸に流しているかもしれない…あの心配性のお兄ちゃんは。
「残念ながら彼氏居らんねんから、お母さんと行けたら行くわな!」
「うん、ありがとっ。挨拶終わったらさ、裏に来てくれへん?咲がめちゃくちゃ会いたがってるから」
「分かった!また場所連絡して?チケットありがとう!」
こう言う映画に、友達とは行かない。色々羨ましがられたり、陸や咲の事を根掘り葉掘り聞かれるのが目に見えている…というか日常生活もそんな感じなので、内心結構困ってたりする。
私にとったら陸も咲も、しょー君もふーがさんも、縁があって仲良くなっただけだ。…そうは言っても、高校という状況下ではアイドルファンは山ほどいる訳で。私と陸の中の良さを知っている人もたくさんいるし、良いように思わない人もいるんだろう。
「…顔になんかついてる?」
急に真面目な顔になった陸は、まじまじと私の顔を眺めている。
「大丈夫か?」
「え?なにが?」
「顔が疲れてる…というか、顔色が悪い。寝不足?今までも何回かクマひどかったことあったけど、また最近体調良くなさそうに見えてたからさ」
「あぁ…ちょっと寝不足なだけやで?ごめんな心配させたみたいで…ありがとう」
「…そう?まぁ大丈夫なんやったらいいけど。なんかあったら言えよ?」
「うん!ありがとう」
長い時間一緒にいる陸だからこそ、ちょっとした変化に気づいてしまう。昔から私の家のことまで心配してくれて、本当にいい友達過ぎる。
「絶対来いよ!」
「だからでかい声出すな!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます