「わぁ…天気よくてよかったですね!」

「本当だね。なっちゃんが教えてくれなかったら、こんなに良い場所知らなかったよ」

 以前どこか行きたい場所があるか聞いたときに、ここを提案してくれた。自然とアート、ちょっとしたアトラクションが一体化したような施設だ。

 周りは自然豊かで、川の流れる音が鮮明に聞こえるほどに静かな場所。東京にいたらこんなところとは無縁な生活を送っているので、体の中から綺麗になる気がする。

「…本当に私の行きたい場所でよかったんですか?」

「なんで?」

「いやっ…ふーがさんの方がいろんな場所知ってるやろうなぁって思って…それだけがずっと気になってたんです」

 表情を見るに、本気でそんなことを心配してたらしい。

「そんなこと気にしなくていいのに!俺なっちゃんにここ教えてもらってからずっと気になってたんだよ?1人だったら行けないし、なっちゃんと行けて嬉しいんだよ?」

「…そうなんですか?」

「そりゃそうじゃん!それにさっ、こんな可愛い子と一緒ならどこ行っても楽しいよ」

「んなっ…む、ありがとうございます、」

 今度の誉め言葉はちゃんと彼女の耳に届いたみたいで、恥ずかしくなったのか耳が真っ赤に染まっていた。

「ふはっ、耳にレモンだけじゃなくてリンゴもついてるみたいだね?」

「んぁあもう!見やんでください早く行きますよ⁉」

 よっぽど恥ずかしかったのか、背中をぐいぐい押されながら中に入った。というか入れられた。建物の中は入った瞬間から幻想的な空間が広がっていて、自然の香りに体が癒された。

「はいなっちゃん」

「本間に良いんですか?」

「いいのいいの。デートの時は男にカッコつけさせないといけないんだから、なんでも受け取ってくれるだけでいいよ?」

「じゃあ、喜んで受け取りますっ。ありがとうございます」

 事前に買っていたチケットを渡すと、嬉しそうに両手で受け取ってくれた。デートと言っただけで反応している姿を見ると、慣れてない感じがして顔が緩んでしまう。

「うぉ…すげぇ」

「わっ、見てくださいこれ!歩いたところに反応するんですけどっ」

「ふふっ、本当だね」

 床に映し出された映像が、人の動きを察知して変化していく仕掛けのようだ。あまりみる事の出来ないはしゃいでいるなっちゃんを見られて、またまたかっこ悪いくらいに顔が緩んでいくのが分かる。

「なっちゃんどこから行きたい?」

「ん~…とりあえず1周してみませんか?」

「そうだね、そうしよっか」

 思っていたよりも広い建物内を2人で並んで歩きだした。彼女は俺に気を使ってなのか偶然なのか分からないが、名前を呼ばないようにしてくれている。連休中とはいえはそこまで人は多くないし、顔も分からないようにしてきているから大丈夫だとは思うんだけど、その小さな配慮が嬉しいような、申し訳ないような…

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