朝が弱いはずの俺が、目覚ましより早く起きた事が今まであっただろうか。

「…どんだけ楽しみたんだよな」

 自分でも気づかないうちに、彼女への想いが膨れ上がっていたみたいだ。勝が

「夏月に好かれてるよ」

 と言ってくれたおかげで頑張れそう

 電話やメッセージでのやりとりは毎日のようにしていたのだが、実際会って話すのは3ヶ月以上ぶりで…朝から顔が緩みまくってるのは自覚済み。恋の力のおかげで早起きで来た俺は、時間通りの新幹線に乗り込む。

 …トキメキって凄いな。2歳くらい若返った気がする。

 数時間後、無事目的の駅についた俺はレンタカーを調達。彼女が来るであろう付近に駐車して辺りを見渡す。

「あ、」

 木の近くに居ると連絡してたからか、俺を探してキョロキョロしている。もうそれだけで可愛い。

「なっちゃん」

 少し控えめに彼女の名前を呼ぶ。俺のことを見つけるとニッコリ笑ってこちらへ走って来た。

「おはよ、久しぶりだねっ」

「おはようございます!お久しぶりです!…なんか、さらにカッコよくなりましたか?」

「…へ?」

 会っていきなり彼女の口からそんな言葉が飛び出て来たので変な声を出してしまった。

「あ、髪型や!前あったとき短かったですもんね。最近テレビ見てなくて…最新のカッコいいとこ見れてよかったですっ」

「…ありがとう褒めてくれて」

 面と向かって褒められると、こう返すのが精一杯だ。俺よりもなっちゃんのほうがはるかにほめる所があると思うんだけどなぁ…

 高校生ってことを忘れてしまうほど大人っぽい性格と、耳につけられたレモン型のイヤリング。対照的な印象のその2つがとても似合っていて、その魅力に見惚れてしまう

「なっちゃんもめっちゃ可愛いよ?そのイヤリングも良く似合ってる」

「あ、これ可愛いですよね!私イヤリング大好きで、、これは特にお気に入りなんですよ」

 自分が褒められていることに気づいていないのか、イヤリングを嬉しそうに見せてくれる…まぁそれも可愛いからいいんだけど。

「よし、行こっか?」

「はい!運転お願いします」

 俺が運転するってだけで、少し申し訳なさそうにするなっちゃん。

「そんな顔しないでよ~?俺の事情で車移動になってるし、運転好きだから気にしない気にしない」

「…んふっ、ありがとうございます」

 笑顔になったなっちゃんを、ドアを開けた車に促す。運転姿までカッコいいのは罪ですねぇ。なんておばさんみたいな感想を言われた。

 途中休憩を挟みながら目的地へ向かう。2時間ほど車を走らせると、どんどん緑が多くなってきた。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る