「は…?」
私宛に届いた分厚い封筒。それが始まりだった。中にはいろんな書類と、見慣れたサイトのロゴマーク。
“先日行われました新人発掘コンテストの選考の結果をお送りいたします。
桜楓様のエントリーされました「愛を私の音色に乗せて。」を、最優秀賞とさせて頂きます。”
「…え?何これ新手の詐欺?」
そう思って、住所や電話番号を調べたけど、しっかり私の知っているあの出版社で。
「…嘘、本間に通った?」
心底信じられない瞬間だった。
私は中学生の頃から、ネットのアプリで小説を掲載していた。ミステリーや青春物など、いろんなジャンルを書いていた。恋愛小説のコンテストが開催されることを知って、苦手ながらも初挑戦したところ、こうなってしまったわけだ。
元々本が好きで、小さい頃から絵本を作ったりしていたが、インターネットを使える年齢になり、このアプリを知って興味本位で始めたところハマりにハマって、ここまで来たわけです。
「…てかこれ、選ばれたら…書籍化ちゃうかったっけ、」
応募概要に書いてあったことを思い出すと、書籍化やら賞金やらが示されてあったことを思い出した。
「あかん怖いわ…」
まさか通ると思っていなかったし、手の震えが止まらなかった。
“この書類に目を通していただけましたら、弊社の事務までご連絡お願い致します。”
アルバイトでさんざん電話対応をしてきていたが、その経験も全く役に立たない程に緊張していた。書類に記載されている番号に恐る恐る電話をかけてみる。
「お電話ありがとうございます、想像出版社でございます。」
「あ、あの…新人コンテストの事でお電話させていただいたのですが…」
「…すみませんが作者名をお聞きしてよろしいでしょうか?」
「えぇっと、桜楓と言います」
「あっ桜楓さんですね!お電話お待ちしておりました。担当のものにお代わり致します」
昔ながらのオルゴールの音に切り替わり、しばらくすると、
「お待たせしました!担当の田中と申します!」
…なんとも元気な男の人が出てきた。
「は、じめまして」
「君が楓さんか、この度はおめでとうございます。大変素晴らしい作品でした!」
「ありがとうございます…最優秀賞って、本当だったんですね、」
「あははっ、もちろんですよ!書類に書かせていただいた通りですっ。えぇ、本題に入らせていただきますと、早速なんですが書籍化の準備をさせていただこうと思っています。それにあたりました、我々と直接お話をさせていただきたいと思ってるんですが…楓さんは現在、高校生でいらっしゃいますよね?」
「はい」
「ある程度のお話はビデオ通話などでできるのですが、出来れば本社の方にも何度か来ていただきたいんです」
「本社…って、東京ですよね?」
「そうなんです。親御さんの許可が得られるようであれば、こちらの方に来て頂きたいんですが…あ、もちろん交通費などはこちらで持たせていただきますので」
「…ちょっと相談してみます」
「分かりました!また色々と決まりましたら、書類に記載されているメールアドレスに連絡していただいてよろしいでしょうか?私のメールアドレスになりますので、すぐに返信できるかと」
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