あれからも毎日のように連絡を返してくれたなっちゃん。分かったことは、毎日早朝からおそらく学校に行く前であろう時間までは割とすぐに返ってきて、日中は音信不通。そして夕方ちょこちょこ返ってきてまたまた音信不通。そして夜遅い時間帯は少し返事がある。というルーティン。

 学校の後毎日バイト行ってるのかな?

 最近はそんな連絡の流れができていたんだけど、平日の今日、昼間のいつもは返ってこない時間帯にメッセージが返ってきていた。リハの休憩時に気がついた。…学校休みなのかな?もしそうなら声聞きたいなぁなんて思って、1回で出なかったら諦めると決めて電話をかけてみた

「…もしもし、?」

「あ、なっちゃん久しぶりっ…」

 なんと2コール目で可愛らしい声が聞こえてきてしまい、心の準備をしていなかったのであたふたしてしまった。

「お久しぶりですっ、急に電話来たからめっちゃびっくりしました、」

 可愛らしい声に変わりはないのだが、いつもの語尾にビックリマークが付くような元気がない。

「なっちゃん大丈夫?体調悪いの?」

「………」

 …この沈黙はYESと捉えて良いんだね?

「今元気になりました。ふーがさんの声聞いたんで元気です」

 …そして今日俺の命日強にしようとしてんの?

「いま元気になったって事は、元気じゃなかったんだね?どうしたの、正直に言ってみ?」

「いや、そんな大したことやないんです!…ちょっと体調悪くて、学校休んでて。なんか寂しくなってきて、もしかしたら返事返ってくるかも、と思っちゃいまして…すみません。お仕事中でしたよね、」

 あんまり可愛い事ばっかり言ってるとおじさん勘違いしちゃうよ。

「風邪?熱ない?」

「んふっ、大丈夫ですって。目眩が酷かったんですけど、もうましになったので」

「そう…?あ、ごめん体調悪いのに電話しちゃって…もう切った方が良いね」

 俺と電話したせいで体調が悪化したとなれば、過保護のしょー君に怒られかねない。じゃあねと通話を切ろうとすると、少し眠そうな弱弱しい声で引き留められた。

「ん?」

「…ふーがさん今忙しいですか?」

「今は休憩中だよ?」

「じゃあ10分、いや5分だけでいいので、電話しててもいいですか?」

 まさかの展開に言葉を言い淀んでいると、俺が困っていると勘違いしたのか、忘れてくださいと今度はなっちゃんの方から通話を切ろうとする。

「こらこら何勝手に切ろうとしてんの!もともと俺が声聞きたくて電話してるんだから、切りたくないにきまってんじゃん。もうちょっと話そっか?」

「…いいんですか?」

「そりゃいいよ!でも、しんどくなったらすぐ切るんだよ?分かった?」

 いつもよりゆっくりなペースでたわいもない話を進めていくと、彼女の声がだんだん眠たそうな声に変わっていった。

「なっちゃん、もう切ろっか?」

「…いや、大丈夫です」

「はい無理しない。また元気になったら電話しよ?今はゆっくり休んで」

「…はい。ありがとうございました、楽しかったですっ」

「こちらこそ!またね」

 プープーという機械音が、なんとも憎たらしいほど名残惜しい。

「夏月と電話?」

「うおっ⁉びっくりさせんなよ…」

 背後から現れた勝にしんぞうを縮こまされた。

「こんな時間に出たの?」

「なんか、体調悪くて早退したらしい」

「早退⁉なに大丈夫だった?」

 過保護のこの男には、早退というワードが強かったようで俺の腕をグイグイ引いてくる…

「…まぁでも、ふーがと電話出来てるなら大丈夫か」

「勝ってさ、過保護な割に俺に対するなっちゃんの許容範囲緩いよな?」

 街中の男にはギラギラ目を光らせているのに、俺にはガードがゆるゆるなのだ。

「そりゃあ2人をくっつけたくて会わせたんだから」

「…は?え、あぁ!お前っ、計画犯かよ⁉」

「いやぁ、前々から考えてたんだよ。ふーがと夏月の波長は合いそうだなぁって。チャンスがあったから引き合わせてみたわけ。俺の大切な夏月を、俺以外の変な男に任せるとか絶対いやだからさ?ふーがはいい奴で信頼できるって分かってるし安心じゃん。思った通り…というか、早過ぎるくらいに夏月の事好きになっただろ?」

 悔しいけど、なっちゃんに出会わせてくれたことに関しては感謝しかないから…何とも言えません。

「どうなの?」

「…好きになりましたとも。あんなにも良い子で笑顔が可愛くて純粋な女の子初めて会ったし、一目惚れしたのも初めてですけど何にか」

 一度開き直ってしまったら、もうどうでもよくなってしまって異常に素直になった。

「言っとくけど、俺の妹同然の夏月傷付けたら許さねえからな」

「分かってるって」

 この際、アイドルだからとか相手が未成年だからとかどうでも良い。絶対に、なっちゃんを振り向かせてみせる。






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