第10話 二人の身柄

 逮捕されたミレイユとショウは、基地内で監視付きではあるがかなり自由に振る舞っている。拘束されず、個室と当面の生活必需品が与えられて、2人で会って話すことも制限はない。ただし、その会話は盗聴されている。

 まあ、それは2人も承知の上だ。


「アンタらさぁ、何の権利があってわたし達を逮捕できると思ってるわけ? さっさとコロニー連合軍に確認取りなさいよ。これ以上グズグズしてたら冗談やウッカリじゃ済まなくまるよぉ」


 ミレイユは、相変わらず「軍に確認」が取れれば直ぐに解放されると思っているようだ。


「アンタらがぶっ壊してくれた強化服パワードスーツも、弁償して貰うからね。相当な金と手間をかけて改造したんだから。アンタらの最新型の強化服パワードスーツの現物と設計資料は頂くよ。絶対、逃さないからね!」


 ミレイユは技術屋でもあるらしく、地表圏の強化服パワードスーツに興味を持ったらしい。わたしの顔を見る度、ネチネチと絡んでくる。

 一方のシュウは、日を追うごとに顔色が悪くなる。


「オレ達……実は、ホントに宇宙には還れないんじゃないのか?」


 いや、最初にそう言ったはずだが?



 わたし達は、宇宙圏から地表に降りてきた正規兵を何度か逮捕・確保している。彼らが今どうしているかと言えば、極刑で処分された者を除けば、ずっと地表で監視付きの生活をしている。これまでに「宇宙圏に帰還した」例は1件もない。

 逆に、地表圏から誘拐されたと言われる事件でも、奪還に成功したとの報告もない。

 宇宙圏と地表圏の間では、闇取引があって闇商人が暗躍してるのに、政治的な交渉を行う窓口が存在しないのだ。だから、逮捕・確保した者の返還に関して交渉があったことがない。



 当然、この2人に関して宇宙圏とは確認も交渉もやりようがないのである。


「もうすぐレダの……恋人の誕生日なんだよ。これをしちゃったら、オレ捨てられちゃうよ。半年口説いてやっとOK貰えたのに……どうしてくれるんだよ」


 一瞬でも真面目に話を聞こうとしたわたしがバカでした。ごめんなさい。



 わたし達が所属する都市国家ポリスザンキでは、人員の返還は諦めている。しかし、この都市国家ポリスヴォルガは違った。


「冒険者と言う集団は、彼ら以外にも存在するようです。他の集団が地表に降りてきた際に、彼らの身柄を預けてみてはどうでしょうか?」


 カーン大佐から、そんな案が打診された。個人的には反対だった。身の安全が保障されたら、は行動をエスカレートさせると思うから。

 カーン大佐には、都市国家ポリスザンキの本部に意見を求める約束をするが、正直気乗りはしない。

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