幕間3

キラキラ

「高台寺部長」


「何かね? 原係長」


「······なんですかその係長って、それになんの係ですか」


「んー、あたしの卵係?」


「最近、毎昼ゆで卵食べさせられるのは係だったんですね」


「そうそう♪ あ、ちょっと原くん、殻あんまり細かくしないでよー使えなくなるからー」


「文句言うなら自分でして下さい」


「えーやってよー、あたし不器用だからさ♪」


「せめて食べるのは自分で」


「あたしソーセージパンあるのでー」


「毎日同じパン飽きません?」


「むしろ安心? あたしの血肉はソーセージパンでできてるのさ。そして原くんの血肉はゆで卵でできてるのさ」


「他人の血肉勝手に決めないで頂いて」


「原くんこそ文句ばっかー」


「毎日ゆで卵食べさせられれば文句も出ますよね?」


「味変用にマヨネーズあるわよ?」


「僕コレステロール値ヤバそう」


「味変の味変用にからしマヨもあります!」


「なぜドヤ顔。味、というかせめてメニュー変えてもらって」


「メニュー?」


「玉子焼き、とか」


「タマゴヤキ?」


「アレですか? 全部ツッコまないとダメなやつ?」


「あたしゆで卵しか作れないのー」


「あ、一応作ってるんですね、コレ」


「そうそう♪ どう? あたしの手料理♪」


「嬉しいような嬉しくないような······そもそもゆで卵は手料理、なのか?」


「煮る焼く蒸すが料理じゃなかったらなんなのさー」


入ってないじゃないですか」


「あーもう、分かったわよ。はい、あーん」


「な!? なにが分かってそうなるんですかっ!」


「······」


「ん? 今スマホで写真撮りました?」


「原くん耳まで赤くなってめんこかったから♪」


「消して下さい」


「えーやーよ。寝る前に見てニヤニヤするんだからー」


「なっ! こ、高台寺部長、そんなに僕をからかって楽しいですか!?」


「もちろん楽しーよ。原くんと尾形くん来てから毎日楽しい♪」


「······」


「ずっとひとりだったからさー」


「······部長」


「原くんという愛弟子もできたし♪ ······原くんは楽しくない?」


「た、楽しくない、事はない、です······」


「ぬふふふ♪」


「こ、高台寺部長という師匠もできましたし······」


「ぬおっ!! めんこいっ! 超めんこいー!!」


「ちょっ、くっつかないで下さい!!」


「ぬふふふ♪ 良いではないか良いではないか♪


「わーんセクハラ部長だ」


「あ、ねぇねぇ、部長係長って堅苦しいからさ、もっと馴れ馴れしく呼び会おうよ」


「馴れ馴れしくって言ったし。係長は今日初めて聞きましたけどね」


「ね、ね、あたし原くんのこと今から羊一って呼ぶからさ。羊一も呼んでよ、あたしのこと下の名前で」


「し、下の名前?」


「そうそう♪ 羊一♪ さん、はい♪」


「······」


「羊一♪」


「······ま、ま、まき······」


「羊一♪」


「······ま、蒔絵、先輩·····」


「······」


「な、なんで黙るんですか」


「······思ったより破壊力すごくて。やるわね」


「お、お昼終わるから僕そろそろ。卵の殻使うんですよね」


「そうそう今年の工芸展は卵殻貼りしようと思ってさ。そこ入れといてー」


「卵殻貼り見るの初めてです。だいぶたまりましたね殻」


「羊一もやりなよー楽しいよー」


「いや、僕はまだまだ基本から······」


「いいじゃん、教えてあげるから。手とりあ·し·と·り♪」


「ま、蒔絵先輩が言うとセクハラ部長ぽいんだよなー」


「ぬふふふ♪ あ、羊一、明日のお昼も、その、来てくれる?」


「えーと」


「明日は玉子焼き作って来るからさ······」


「蒔絵先輩······」


「······いいよね?」


「いい、というか······家で玉子焼き作るならここで食べる意味なくないですか?」


「おおっ! ホントだ」


「······殻、まだ必要なんですよね」


「うん······」


「······いいです。ゆで卵で」


「羊一······」


「あと、僕、ゆで卵は塩派なので」


「うんうん! 持ってくる持ってくるっ!いや買ってくる岩塩、ピンクのやつ! ゴリゴリ削るやつ!」


「普通で大丈夫ですから」


「うおぉぉ愛してるよ羊一!!」


「離れて下さい」


 キーンコーンカーンコーン······

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