かひもなく目を三角にしたらずはなぐさが花を摘むべかりけり

【読み】

かひもなくめをさんかくにしたらずはなぐさがはなをつむべかりけり


【語釈】

甲斐(詮/効)――①ある行為に値するだけのしるし。ききめ。効果。また、ある行為をしたことに対する、自身の心の満足。②ある行為と代わり得る価値があること。また、そのもの。代価。代償。また、一般的に、価値、値打。

[精選版 日本国語大辞典]


目を三角にする――目を怒らす。怖い目つきをする。目に角(かど)を立てる。

[デジタル大辞泉]


なぐさ(慰)――人の心をなごやかに静まらせるもの。気をまぎらわせるもの。なぐさみ。なぐさめ。

[精選版 日本国語大辞典]


【大意】

かいもなく目を怒らしていないで、「なぐさ」という花を摘むのが良い(ものを)。


【付記】

怒りにつける薬を探しあぐねている。わたしは我慢などするものでないと思っており、感情のやり場を見つけるのが急務である。


【例歌】

味飯うまいひを水にみなし我が待ちしかひはさね無しただにしあらねば 作者不詳

春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなくたたむ名こそ惜しけれ 周防内侍すおうのないし


吾れのみそ君には恋ふる吾が背子が恋ふとふことはことのなぐさそ 大伴おおともの坂上さかのうえの郎女いらつめ


しるしなき物を思はずは一坏ひとつきの濁れる酒を飲むべくあるらし 大伴旅人

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