どぜうさま
えにょ
第1話 どぜうさま
むかし、あるところに大きな池があったそうな。
そこには一匹の大きな「どじょう」が住んでいて
雨を降らせてくれたそうな。
ある夏のことだった。
まったく雨が降らなくて、村人達が困り果てておった。
「どうしたもんかのう。」
「どぜうさまというのが、雨を降らせてくれると聞いたことがある。」
「うーん。信じられないが、みなで会いに行ってみようか。」
みんなで池のほとりに着くと、どぜうさまを呼んでみることにした。
「おーい!どぜうさまー、出てきてくんろー!」
「こんなんで、本当に出てくるんだか。」
そのときであった。
人間と同じくらいの、大きな大きなドジョウが一匹
ザバーっと水しぶきを上げて出てきた。
「オイッス!」
右のヒレをあげて、元気よくあいさつしてきた。
「わ、わ、わ…本当にいたんだ」
「ドジョウだ!どでかいドジョウだー!」
村人たちはとても驚いた。
「なにー?なにか用?」とドジョウは顔をかしげている。
「このごろ、めっきり雨が降らなくなってしもうて、そいで聞いた話だと
どぜうさまが雨を降らせてくれるということで、わしら来たんだ。」
「雨降らせてほしいの?」と困った顔をして
「あれ大変なんだけどな~。どうしようかな。」
「おねげーしますだ。」
と村人が言うと、どぜうさまは片目を開いてチラっと村人を見た。
「もうすぐお昼だから、近くのうなぎ屋さんでうな重買ってきて。」
「は?なんですと?」
「うな重とな!?」
村人が困惑していると
「帰るわ、またね」と後ろを向いて帰ろうとした。
「あー、待って!」
「おい、うな重を買ってこい!」
しばらくすると、うな重が届いたので
どぜうさまが器用にヒレで箱を開けた。
「うまそうだ、いただきまーす!」
箸をヒレで持って舌をぺろりとさせて、食べ始めた。
「パクパク…あ、そうだ。」
「なんですか?」
「山椒持ってきて。」
「なにいってんだこいつ」と、村人の1人が言った。
どぜうさまは
「帰るわ、またね」と後ろを向いて帰ろうとした。
「おい、山椒だ!」
「山椒持ってこい、早くしろ!」
村人たちは慌てて山椒を取りに行った。
「持ってきました!」
「ありがと。ふんふん、やっぱ香りがあって良いね。」
しばらくして食べ終わると、ゲップをして
「プフー、デザートはソフトクリームでお願い。」とウインクしてみせた。
「デザートまで食べるのかい!」
「なんと欲張りな、どぜうさまだこと。」
「しかたないのう。」
ソフトクリームが届くと、ヒレで持って食べ始めた。
「えーと、なんだっけ?」
「えっ?」
「君たちのおねがい。」
「雨を降らせてください。おねげーしますだ。」
「あーそれね。わかったー。」
「ありがとごぜーます。」
「明日ぐらいに降るから、待っててね。」
そう言うと、どぜうさまは帰っていった。
どぜうさまが池のはずれのほうに着くと
「おーい、カエルさん」と呼びかけた。
小さいカエルが振り向くと
「なんだケロ?」と言った。
「雨を降らせてくれ。」
「わかったケロ。」
そして次の日…
村人たちが空を見ていると、今にも雨が降りそうな天気になってきた。
「おーい、雨さ降るぞー!」
「おお!やったべ。」
それからすぐに大雨になった。
「さすが、どぜうさまだべ!」
村人達は、おおいに喜びましたとさ。
おしまい。
どぜうさま えにょ @enyorin
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