#15 - 聖餐
最初のお給料で次のライブに着ていくための服を買いに
始めて行ったライブの感想や服がどうだったかなど聞かれて話がはずんだ。
「赤似合うからさ、また同じタータンだけどワンピどう?」
と、ミサは見せてくれた。ノースリーブで腰あたりから大きなプリーツになっているミニスカートのワンピースだ。
「これ着て髪アップにしたら夏っぽいし可愛いと思うんだぁ」
と、ミサはアタシにあてながら言う。
「絶対似合う!」
可愛いデザインだし赤いチェックも好きだが、ノースリーブだし首元は四角くアタシにしては大胆に空いていてどうしようか悩んだ。
そして同じデザインでピンクのチェック柄もあって、それは
「双子コーデしちゃう?」
と、いう
お会計を終えたミサは「ちょっと待ってて」と言って奥の作業場に引っ込んでしまった。アタシと
15分もしないでミサは戻って来て、アタシ達に今買ったワンピースとお揃いのチェック柄の紐状のモノを手渡した。
「プレゼント。ポニーテールにしてこれでリボンしたら可愛いよ。もしくはさ、ワンピは首元寂しいから首に巻いても可愛いし」
ミサはアタシ達のために今急いで同じ生地で作って来てくれたのだった。
「すごいうれしいです! しかも早い!」
と、美雨が言うと
「これくらいウチの息子でも作れるよ」
と、ミサは笑った。まだ20代半ばくらいに見えるが息子がいるのかと驚いた。
アタシ達はお礼を行って店を出た。
このままアタシは靴を買いに行きたい事を伝えると
それから
電車に乗る前に再び駅ビルの食品フロアに行って少し高級なスイーツ店に寄って父の分と2つプリンを買った。フルーツや生クリームが乗っていて、いつも食べているあの大好きなプリンよりもだいぶ高級感がある。
家に着くと父がリビングでテレビを見ていた。
バイトを快く許してくれて、バイト代が入るにもかかわらずお小遣いも相変わらずくれている父にお礼がしたかったから、アタシは父に高級プリンを差し出し2人で食べた。
それから数日後、アタシがバイトから帰ると父にダイニングまで来るよう呼ばれた。バイトの日の夕飯は各々適当に済ますことにしていたから何事だろうと思いダイニングに入った。
ダイニングテーブルの上にダンボールが1個置いてあって、足元にもダンボールが2個重ねてある。その1個をゴソゴソと探りながら父が言った。
「昨日納戸でコレ見つけてさ」
ダンボールから取り出した
「おお、お宝じゃん」
思わずアタシは声をあげた。
「他にもあるんだよ、お父さんが持ってたレコード、おじいちゃんのも入ってるかな。よかったらあげるよ」
「でも聴くものがないよ」
すると父はテーブルの上のダンボールを軽く叩いて
「だから買って来たんだ、これ」
と、したり顔をした。
ダンボールを開けるとレコードプレイヤーが入っていた。DJが使っているアレだ。
「この前のプリンのお礼」と言って父はアタシの方にそれを寄せた。
「もらっていいの?」と聞くと父は笑顔で頷いた。思いがけず父からプレゼントをもらった。
レコードの入った重いダンボールとプレイヤーを2人で2階のアタシの自室まで運び、父がコンポと繋いでくれてプレイヤーから音が出るようにしてくれた。
「LPは33回転だぞ」と言って父はレコードに針を落とした。
アタシはその光景を見るのは初めてだった。まじまじと針を見つめるアタシを見た父は
「そっか、レコード知らないか……LPって大きいやつで要はアルバムだな。昔は小さいのもあったんだよ。それが45回転なんだけど……」
と、レコードについて説明し始めた。アタシはそれを真剣に聞いた。
「ひっくりかえしたらB面だぞ」
と、言い残して父は部屋から出ていった。
他には何があるかダンボールを探ると
これからまたさらに古い時代の探求が始まると思うと心が躍った。
とりあえずコンポの近くの床に直にレコードプレイヤーを置いたので次の休みの日にでも簡単に部屋の模様替えをしようと考えていた。
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