#13 - 恍惚
数日後、放課後に
「これ
と、その筒の端をこちらに向けた。そっと手を添えたアタシは
「え?! そんな……わるいよ……」
と、遠慮したが
「CDの初回特典だったの。5枚買ったからポスターも5枚持ってるから1枚おすそわけだよ」
美雨は相変わらず無邪気な笑顔で持っていた筒の端を手放し、アタシはその筒を自分の近くに引き寄せた。
「ありがとう。じゃぁスイーツ、アイスとかパイとかさ、ご馳走させて!」
「オッケー。それで気兼ねなしってことね!」
筒をアタシの横に立てかけて、ハンバーガーやポテトを食べながらおしゃべりを楽しんだ。
制服姿だったからか、
「アタシ、恋愛したことないかも……」
アタシは確かに誰かに恋したことはない、小学校の高学年くらいから独りでいることが多くなり友達さえいないのに恋愛なんて程遠い。少女漫画の中でしか知らない。
中学生の時も、高校生になった今も、アタシ以外の全員は『ただの同級生』というカテゴリーで
「私は好きな人いたけど、
アタシの話を聞いた
「でもさ、
確かに
「ずっと片思いだし、報われることなんてないけど、その人を見てるだけで幸せになれるのって恋だよね。愛かなぁ。ま、恋愛の一つだよね」
なにより、彼女の表情が恋愛を物語っている。
「なんて言うの……ツナガル? みたいなこと願ってないの?」
アタシはネットで見た用語を使い、しょうもないとわかりつつ興味本位の下世話な質問をしてみた。
「ツナガリ目的の子多いよね。私だって
「私がCD買ったりライブ行ったり応援することで、彼らの夢を叶える手助けができてると思うとそれも嬉しいしね」
ファンの鏡のような事も言った。そのキモチはアタシにも理解できた。
結局
「
と、
始めて見たときから今日までずっと
まだ理解できない自分の感情を上手く伝えられないが、最近起きたことを箇条書きのように話した。
「
と、聞き終えた
今まで1度も恋愛をしたことのないアタシが1度見ただけのバンドのベーシストに恋することなんてあるのだろうか。
話したこともない、実際どんな人なのかもわからない年上の男性に、突然恋をするのだろうか。
しかもアタシの場合、さっき
それも恋愛の1つなのだろうか。
夜になり
家に着き
ベッドの上に立ち作業を終えて2、3歩下がって正面からポスターを見ると
たとえポスターの中の彼でも見た瞬間、多幸感が胃のあたりから沸き上がり上昇して頭がカーっと熱くなり、まるで風邪をひいて発熱したときのようにボーっとする。
そのままベッドの上に座りポスターを見上げ、
時間がたつのを忘れ彼に心酔していく。
やはり
朝起きた時、家を出る時、帰ってきた時、夕飯を食べた後、お風呂から上がった時、寝る前、必ずそのポスターの
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