#04 - 変貌
そしてアタシは学校帰りに洋服を買いに行った。ライブにはどんな洋服を着ていけばいいのかわからず、
バンドのものだろうと思われるフライヤーが店の外壁にベタベタと
中に入るとブロンドのショートカットで淡いピンク色のジャンプスーツを着た女性が「いらっしゃいませ」と片手間に声を出した。
店内の壁にもフライヤーやポスターや写真が
アタシが当てもなくあまり広くない店内を入り口から順に物色していると、その女性が店の奥のカウンターから
「初めてだよね?何探してる?」
と、アタシに気さくに声をかけた。
「ライブに行く服ならココだよって教えてもらったので」
「初心者のバンギャちゃんなんだね。一緒に選ぶよ」
さっぱりした
彼女はこの店のオーナーでデザイナーのミサと名乗った。
ロックやパンクが好きな人が好みそうな、それこそライブハウスに居そうな人たちが着ていそうな、Tシャツやパンツ、スカート、小物が所狭しと並んでいた。
ミサがデザインだけして、業者に発注していくつかのサイズを数枚ずつ販売している。たいていのお客はこれらを購入していく。彼女は自分で作業もするので、その場で丈やサイズの調整もしてくれる。
ミサが主に力を入れているのは舞台衣装だった。特に近隣で活動しているバンドからの発注が多いが地下アイドルなどの衣装も手掛けているらしい。店の奥の作業場で手作りで1着ずつ仕上げている。
もちろん地元の近い
スカートやパンツをただ立っているだけのアタシに次々と合わせながら、この店について話してくれた。
「私はロック好きだけど、パンクが好きなんだよね」
と、言いながらミサは数ある写真の1つを指さした。
「だから、
アタシもその写真に目をやると、派手にペイントされたライダースを着て1人で写っている
「彼はパンク感あるから」
まだ音楽を聴き始めたばかりのアタシにはよくわからなかったが、ネットか何かで
家に帰ったらパンクについて調べてみることにした。
ミサはアタシへ赤いタータンチェックでプリーツのミニスカートを手渡した。黒いシャツは持ってるか聞かれ、持ってると答えると同じ柄のネクタイも差し出した。
「お顔がキリッとした美人系だからクールな感じも似合うと思うんだけど、あえて可愛いのでどう?ネクタイなら可愛くなりすぎないし」
と、何もわからないアタシは言われるがままに試着室に通された。
制服はもっとダークな色合いだが同じようなプリーツスカートなので抵抗はなかった。
スカートだけ試着すると足元が寒々しい。持っているニーハイソックスを履けばサマになると教えてくれた。もっと寒い時期だったら黒いタイツでもいいし、そのタイツがまばらに破けた加工がしてあるものならなおいいと、それを履いている女の子の写真を指差して説明してくれた。
アタシは元の制服に着替えてスカートとネクタイのセットを購入した。
「赤いリップ似合うよ、きっと」
と、ミサは買ったものを紙のショップバッグに丁寧にしまいながらアドバイスしてくれた。
それと靴はエンジニアブーツ、コンバース、ラバーソールなど何が合うのか、どこで売っているのかなど事細かに教えてくれた。
「また来ます。」と、言ってアタシは店を後にした。
ミサはとても気さくで親切だったし、お店の
帰り道ミサに教えてもらった靴を買おうかと靴屋に寄ってみたが、さすがに今日は服を買ってしまったし高校生のお小遣いでは買えずに諦めた。そういえばエンジニアブーツは雪の日用に買ってもらったものがあった。海沿いの街に雪なんてほとんどふらないので、靴箱の中にあるはずだ。
代わりにドラッグストアで赤いリップグロスを買って帰った。
家に着いて買ったものを言われた通り着てみることにした。
袋から買った洋服を出すとステッカーが床に落ちた。“
持っていた黒いシャツにタータンチェックのネクタイをしておそろいのプリースのスカートを履く。ニーハイソックスを履いて靴箱から出してきたエンジニアブーツを広げた新聞紙の上に乗って履く。
シャツは入れるべきか、出すべきか……、あれこれと試す。
アタシの制服も似たようなもので、ワイシャツに紺のブレザーに暗い色のチェック柄のプリーツスカートで濃い緑のネクタイかリボンかを選べる。アタシはどちらかと言うとネクタイの使用頻度の方が高かったので、今日買った服装はあまり普段とかけ離れていないセットだったが、赤色のせいか姿見に映るアタシはいつもより元気そうに見えた。
腰まで届きそうな黒髪のストレートで一直線に眉の少し下でそろった前髪。まるで着せ替え人形のようだとよく言われる髪型。この髪型しかしたことがなく、もう自分のことなんて
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