第7話 父の存在
しばらく本を読んでいると母が部屋に入ってきた。
「紀子、父上が帰って参りましたよ」
ついに来た。
正直怖い。歴史上に名を残し、会津の責任を負ったひと。どんな人だろうと思う反面、寝たふりしてたときの父上の言動も思い出される。
知っている限り全てを話そう。
父上なら何か歴史を変えてくれるかもしれない。
「わかりました、どちらにいらっしゃいますか?」
「自室で休まれてますよ」
「ありがとうございます」
わたしは腹をくくって父上の部屋に向かった。
「父上、紀子です。入ってもよろしいでしょうか」
「紀子か、入りなさい」
襖を開けると背丈は大きくないがオーラのせいで大きく見える萱野権兵衛がいた。
「そこに座りなさい」
「はい、父上」
わたしは書斎の前の座布団に座った。
どこから話そう、、、
「父上、此度はご心配をおかけしました」
「三月も目を覚まさないんだ、そりゃ心配するだろ。記憶はまだ戻らないのか」
「...はい。父上にだけはお話ししておかなければいけないことがあります。」
「なんだ、改まって」
「わたしは目を覚ます前、未来の江戸にあたる地域におりました。そしてこれから会津が辿る運命を知っています。」
「....話してみろ」
「ありがとうございます。結論から申しますと、会津は薩長と戦になります。」
「なに?薩摩は今京都で一緒に長州藩と戦ってるだろ」
「はい。ですが1966年に薩長同盟というものを組むんです」
「なるほど。会津を裏切るのか」
「父上、今の天皇様はどなたになりますか」
「孝明天皇様であろう」
「そのお方はもうじきお亡くなりになります。薩長と土佐藩は次期天皇の方と結託されており、会津藩を賊軍としてみなし会津に攻めいります。」
「なんと、、、」
「そしてわたしがいた未来は2024年でしたが、上様の名前はもちろん、父上の名前も残っておりました。他に神保しゅり殿や西郷頼母殿の名前も」
「ほう、記憶の無いお前がその名前を出すということは事実のようだな」
「何よりも名前が残っているのが白虎隊です」
「白虎隊?16,17くらいのあの少年達か」
「はい。会津は城は残りますが火の海となります。その歴史を知った上で私は会津を、この家族を守りたく思っております。父上、私に何かできることは無いでしょうか」
「おなごが出るでない。ただお前の気持ちはよく分かった。んー、そうだな、、、この父の相談相手になり、父が殿や重臣に話をする。それでどうだ」
確かに、この時代は女は戦に出ただけでも娘子軍として名が残るほど女が前に出ることはできない。
そんな中でも戦で戦っていたのが飯島八重。
私みたいな小娘に何ができるっていうのだ。
「...わかりました。私が知っている未来に残ってる歴史はすべて父上にお伝えします」
「あぁ、そうしてくれ。ただし、これは紀子と父だけの秘事じゃぞ。外の人間はもちろん、母上にも誰にも言ってはいけない。わかったね?」
「わかりました」
「ところで体調はどうなんだ」
「食事も取りましたし、虎彦達から記憶がない部分も教えてもらってます」
「そうか。ならよかった。ちょっと父の隣に来なさい」
わたしは父上の隣に席を移した。
「眠っている間、夢の中で辛いことは無かったか」
...夢、か。。。
「辛いこともたくさんありましたがその分、楽しいこともありました。現世に残る若松城を見学しているうちに頭がいたくなり、気がついたらこの世界で目が覚めたという、、、」
「そうか、お前も混乱しただろう。しかし忘れるな。紀子の父はわたしで、母はタニだ。父が家族を必ず守るから、お前は夢で見た、未来に残るであろう会津の事はなるべく忘れて今を幸せに生きなさい」
そういって父上はわたしを抱き締めた。
こっちに来てから親のありがたみを改めて実感してるな。。。
思わず泣いてしまったわたしに父は声をかけながら背中をさすってくれた。
「辛かったろう。混乱しただろう。もう大丈夫だからな」
必ずこの家族を守ろう。
会津の歴史は変えれなくても、家族だけは必ず守ろう。
そう決心した夜だった。
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