第6話 兄弟
2時間ほど経っただろうか。
夕焼けも出てきてそろそろ日が暮れようとしている。
私の膝で寝ていた虎彦を布団に移し、縁側で部屋にあった本を読んでいた。
「ん.....姉さま、、、姉さま!」
虎彦が目を覚ました。
私がそばにいなくて慌ててるのだろう。
「虎彦おはよう。ぐっすり寝れた?」
そう声をかけると泣きそうな顔で飛びついてきた。
「ぐっすり寝ました!でも起きたら姉さまがいなくて、、、」
「ごめんごめん。虎彦が寝ている間、書物を読んでいたの」
「あのね、夢見たんです!姉さまと長正兄さま、それに寛四郎兄さまと4人で桜の花見をするのです!父上と母上は少し離れたところでお話ししてました!」
「...そう、幸せな夢ね」
「今度みんなで行きましょう?近くの桜が咲いてるところ!」
「そうね、季節になったら家族でいこっか」
そういうとパァッと笑顔になり、かわいらしい顔がさらにかわいらしくなった。
「「ただいま戻りました母上」」
「あ!長正兄さまと寛四郎兄さまがお帰りになった!姉さまのこと知らせなきゃ!」
虎彦はそう言うと駆け足で玄関へ向かい、2人の兄を出迎えに行った。
その後5分もしないうちに廊下を駆ける足音が聞こえた。
「紀子!体調はどうだ!」
「記憶は戻ったのか!」
すごい勢い...
「ごめんなさい。記憶は戻ってないんです。ですが体調は良くなりましたのでお二人のことを教えていただけますか?」
「そうか、記憶は戻ってないのか、、、」
「今までのことは俺らから教えればいいだろう!紀子、俺は萱野家の次男の長正だ。もう一人兄さんがいたんだが戦で亡くなってしまった。だから俺が萱野家の跡取りとなる」
「俺は寛四郎!三男になるのかな。紀子の兄さまだよ」
「俺と寛四郎は日新館に通ってて、俺は紀子の3つ上、寛四郎は1つ上だ」
「何かあったら言うんだぞ!兄さまたちが必ず守るから!」
随分と頼もしい兄が2人だったのね。
紀子がうらやましい。
まぁ、現世にいる私のアホ兄貴も友達からはシスコンって言われてたらしいから負けてないだろうけど笑
「ありがとうございます。呼び方は長正兄さまと寛四郎兄さまで合ってますか?」
「「合ってる!」」
フフッ!双子かよ、、笑
ぴったりそろった声に思わず笑ってしまい、兄さまたちが顔を見合わせ、つられて笑っていた。
恐らくこの2人も相当心配してくれてたのだろう。
「父上とは会ったのか?」
長正兄さまが聞いてきた。
「いえ、今日戻られたら挨拶に行こうと考えているところです」
「そうだな、父上も表情には出さないけど相当心配していたから。なぁ寛四郎」
「そうですね、意識が戻ったと聞いた日、本当は上様に呼ばれていたのをお断りしてまで戻られたそうですから笑」
上様って松平容保でしょ?そんな無視していいの?笑
「まぁ、、では戻られたらすぐにご挨拶に行かせていただきます」
「そうだな。とりあえず元気そうでよかった!またゆっくり昔話はしてやるから。寛四郎、今日も稽古するぞ」
「わかりました!紀子、ゆっくり休んでるのだぞ!」
そういうと二人が部屋を出て行った。
嵐のような兄さまたちだな、、、ww
私は母上に父上はいつお戻りになるのか聞きに行った。
「父上?今日はお呼び出しがないはずだから夕刻には戻られるはずよ」
「そうですか、父上がお戻りになったら教えてくださいますか?気苦労をかけてしまったのでご挨拶をと思いまして」
「そうね、きっと喜びますよ。母が呼びに行きますから、部屋で休んでなさい」
「ありがとうございます」
父上が戻るまで私は自室の縁側に戻り、本の続きを見ることにした。
萱野権兵衛、、、ドラマでは真面目そうな役だったがどんな人だろう、、、
そして1つ決心したことがある。
歴史上名前が残るほどの人物なのであれば、相当力があり、頭がきれる人であるはず。
これからの会津について知っていることを話そう。
何て思われてもいい。とにかく事実を話すんだ。
そんなことを考えながら父上が戻るまで読書をしていた。
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