第4話 宝
次の日、わたしはスッキリした頭でいることができた。
体調も戻りつつ、萱野家の大きい屋敷を見て回っていた。
ほんと大きいなぁ、、、
現代に残っている西郷頼母の屋敷も大きかったが、大差ないくらい大きい屋敷だった。
「紀子様、おはようございます、ご機嫌いかがですか?」
声をかけてくれたのは住み込みの使用人の男性。
「えぇ、まだ記憶は戻っておりませんが体の調子は戻って参りました」
「それはよかったですね!あ、私は杉野と申します。以前紀子様からはスギと呼ばれておりました!」
「杉野さん、、ではこれからもスギと呼ばせていただきますね^^」
「ありがとうございます!ご用があれば何でも申し付けください!」
スギさんと挨拶を交わし、また屋敷見学を再開した。
回っていて気づいたのはスギさん含め6名の使用人がいること、ここは城下町ですぐそこに鶴ヶ城が見えること、私たち兄弟はみんな自室を持っていて千代さん曰く、
末っ子の虎彦は臆病で普段は私、紀子と寝ていたが今は千代と寝ていること。
随分と立派な家。まぁ、現代まで名前が継がれるほど位が高い人だもんね。
屋敷を見学しているそんな時、後ろから小さな気配を感じた。
「...だれ?」
顔を表したのは末っ子の虎彦。
「...ごめんなさい、姉さまが廊下にいるのが見えて.....」
「いいのよ、ねぇ、こっちに来てくれない??」
そういうとトボトボと近づいてきてくれた。
「ありがとう。私に何かお話したいことがあるの??」
「体の悪い虫はいなくなりましたか??僕のこと思い出しましたか??」
悪い虫?あぁ、体調悪かったから千代か母上がそういったのね。
この子は本当に紀子を慕っていて、心配していたんだ。
「...ごめんなさい、まだ思い出してないの。でも悪い虫はいなくなったわよ!だから君のことを教えてくれない??」
「...はい!じゃあ姉さまの部屋に行こう!いつも姉さまの部屋で遊んでるんです」
「そう、じゃあいこっか」
手を出すと嬉しそうにつなぎ返してきた。
弟ってかわいいんだな。
虎彦だからかわいいのかな
私の部屋につくとたくさん話してくれた。
年齢は5つになり、毎日紀子と寝ていたこと、毎日紀子と散歩していたこと、
そして自分の本当の家族は別にいること。。。
聞けば虎彦は母の兄弟の子らしいが、病気により死別したため母が養子に迎えたそう。その時は3歳ごろで、前の家族のことは少ししか覚えていないが、萱野家がよくしてくれるので本当の家族だと思ってること、中でも紀子が大好きだってこと。
...マシンガントークってのはこういうことを言うのね、、、笑
「ですので、姉さまには早く元気になってもらって、一緒に散歩もしたいのです!千代も優しいけど、姉さまが歌ってくれる子守歌がないとぐっすり眠れない、、、」
「子守歌?どんな歌だった??」
「ねんねんころ~り~よ~って歌です!」
この子守歌ってこんな昔からあったんだ、、、笑
「そっか笑」
そんな話をしていると虎彦が眠そうに目をこすっていた。
ぐっすり眠れていないと言っていたから眠くなってしまったんだろう。
「虎彦、おいで」
私は正座をし、太ももをたたきながらそういうと、泣きそうな顔をしながら横になって膝枕をした。
これまできっといっぱい我慢してきたんだろうな。
一番慕っている紀子が目が覚めず、冷めても記憶がないなんて、5つの子には辛いよね。
「ねんねんころりよ おころりよ~
ひこはよい子だ ねんねしな~
~~~~起きゃがり小法師こぼしに 振り鼓~♪」
歌い始めのころは静かに泣きながら、私に抱き着いていたが、
1曲終わることにはすやすや眠っていた。
「...こんなかわいい子が3年後に死ぬかもしれないなんて、、、」
虎彦の涙をぬぐいながらどうにかできないのか、、など考えていた。
すると廊下を歩いてくる人が。
スゥー…
「あら...虎彦寝ちゃったのね」
私の部屋を訪ねてきたのは母上だった。
「はい、記憶にない部分も教えてもらってたので疲れてしまったんだと思います」
「この子はあなたをこの家族の中で1番に慕ってましたからねぇ。なんてかわいいんでしょう」
「子は宝ですね。。。」
「あら、そしたら私は4つも宝があるのね^^」
なんて気のいいひとだ。
返答に困って微笑んでいると母上が尋ねた。
「紀子、もしかしたらあなたは今後もこれまでの記憶はないかもしれない。それでも私を母だと思ってくれる?」
きっと、昨日泣いていたことに気付いているんだろう。
夜様子を見に来ようとしたのかな。
でも私にはわかってる。誰よりも今の私を心配してくれて、誰よりも愛してくれているのが母上だってこと。
「もちろんです母上。もう混乱することもないと思うので少しずつ昔のことも教えてください」
「よかった...もちろんよ。何があってもこの母に任せてくださいね」
涙ぐみながらそう言って抱きしめてくれた。
母のぬくもりに私もまた涙がこぼれた。
「母上、体もだいぶ回復してきましたので、今日から虎彦と一緒に寝ようと思います」
「そう、わかったわ、千代に言って虎彦の分も寝室に準備しておくわね」
「ありがとうございます」
「じゃあ、虎彦よろしくね」
そういって私の部屋を出て行った。
あとは長正、寛四郎か、、、
二人は日中、日新館に通っていて家にはいない。そのため、会話するのは夕方ごろになる。
なんて話そう。そしてなんていわれるだろう。
少し怖いが、家族になる人だ。しっかり話しておかなければ。
膝の上で眠る虎彦を撫でながら私はそう決意した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます