第4話 萱野家

......ん、、、

わたし寝てたの、、?

確かお母さんと鶴ケ城に来て、、

「.....お母さん!」

わたしは勢いよく起き上がった。

周りを見渡してもお母さんがいない。

そして見覚えのない部屋に寝かされてる私、、、


ここ、、どこ、、、?


「あら、紀子様!お目覚めになりましたか?!」

紀子?だれそれ。わたしは莉奈なんだけど...

って、なんか手が若い、、?


「あの、、わたしは誰ですか、、?あなたは、、?」

駆け寄ってきた女性に聞いた。


「まさか、わだすを忘れたんですか?乳母の千代です!......奥様~~!!!」

千代という人が走っていってしまった。


乳母?それに着てる服が着物、、

これってもしかして昔、、、?


「紀子?!目が覚めたのね!どこか痛いところない?」

「あの、、どちら様でしょうか?それに紀子って誰のこと、、、」

「......!!タニです!あなた、紀子の母のタニですよ!紀子はあなたでしょ?!」

タニだなんて、聞いたことがない、、、

それに私が紀子、、?どこかで聞いた気が、、、

「...すみません」

「なんてこと!?千代!すぐにお医者様を!」

「わがりました!」


訛りからして会津っぽいけどタニってだれだろう、、

誰かの奥さんなのは間違いないが、聞き覚えがない。

きれいな人。現代だったら絶対女優になれるね...



それから医者だというおじいちゃんが来て記憶喪失だとか言ってる。

その話を聞いた母と名乗るタニさんは号泣していた。


お母さんはどうしてるだろう。

わたし死んでここに来たのかな。

お母さん、、会いたいな、、


ふと外を見るときれいな夕日が見えた。


「紀子......大丈夫よ。きっと思い出すわ。」

手を握ってくれるタニさん。

「全部1から覚え直しましょ?大丈夫、大丈夫よ。とりあえず、もう一度寝てなさい。母も色々と手筈をくまなければならないからね」

「...はい」


その後、どれくらい寝たのかわからないが、騒がしい声で目が覚めた。

「母上~~!!紀子が目を覚まされたのですか?!」

「紀子のお体は問題ないのですか?!」

「姉さま......」

「大丈夫ですよ、心配いりません」

「....ん、、、」

「紀子起きたか!大丈夫か!」


誰だこの人たち。

一番小さい子はめちゃめちゃかわいいじゃないか

「紀子、大丈夫です、母がすべて教えてあげますからね」

「長正、寛四郎、虎彦、紀子はまだ遊べるほど力がないのです。広間に行ってなさい」

「「「...はーい」」」

長正、寛四郎、虎彦と呼ばれた3人はしょんぼりしながら寝室から出て行った。

「紀子、今は何年だかわかる?」

「...いえ」

「今は1865年、あなたは15になる萱野紀子なのですよ。三月(3ヶ月)ほど寝込んでいたの」

「1865年...ここは会津ですか?」

「まぁ!会津はわかるのね!!そう、ここは若松城の城下にある屋敷なのよ」

やっぱり。ここは白虎隊がいた当時の会津なんだ。


たしか戊辰戦争は1868年、、、

ってことはあと3年ほどでここは戦場となり、たくさんの血が流れる。。


そう思ったとき、顔から血が引けるのがわかった。


「先ほど来た3人はあなたの兄弟で、兄の長正、寛四郎、弟の虎彦。もう一人長男がいたけど戦で亡くなりました」

兄2人に弟1人か、、、

現代では兄ちゃんしかいなかったからなんか不思議だなぁ

「3人とも、紀子のことを慕っていてね、うるさかったらこの母に申すのですよ」

「...はい」

「そして、あなたの父上は上様に仕える萱野権兵衛長修と言って....」

名前を聞いた瞬間、タニの話が入ってこなかった。

白虎隊のドラマをがっつり見ていなかった私でも知っている。

福島出身の俳優がやっていた役で、戦で敗れた会津藩の責任者として死ぬ運命をたどる人。

本当は西郷頼母が処刑の対象者だったが、孝明天皇からの御宸翰(ごしんかん)を松平容保に託されて長男を連れ隠密に会津を離れた為、家老である萱野権兵衛が対象となった。

「...そんな、、、」

せっかく生き残ったかもしれないのに今度は自害しなきゃいけないの?

萱野権兵衛のことは知ってるが、萱野家の家族のことまでは調べてなかった、、、

「紀子、顔色が、、、!いきなり詰め込んでしまったかしら、、、一旦横になりなさい!母が急ぎすぎましたね、ごめんなさい」


これからどうしよう、、

とりあえず私が紀子って名前だってことはわかった。

生き残るにはどうすればいいのかな、、、

戦を止める?、、、そんな力はない

ここから逃げる?逃げるにしてもどこに?

地元のいわきは今たしか磐城だったはず...

でも遠すぎる、、、

これからどうしよう.........


そんなことを考えていると投下から足音が聞こえた。


...!誰か来る...!寝たふりしておこう!

スゥー…パタン

「紀子が目を覚ましたって?」

男の人?

「はい、ただ記憶がないようで、お医者様にも診てもらったのですが...」

この声は母タニの声...

「なに、ゆっくり思い出してくれればいい。私のこともな」

誰かに頭を撫でられた

「先ほど家族のことを紀子に教えていたのですが、あなたのことを話した途端顔色が....」

「そうか、俺の名前を聞いて何か思い出したのかもしれんな。花見に行ったことか、もしくは叱られたことか...」

「あなたが紀子のこと叱ったことなど1度もないじゃありませんか。紀子もあなたの教えを守っていましたし」

「とにかく、急に色々教えても混乱を招くだけだ、あまり押し付けなさんな」

「わかりました、まずは早く体調が戻ることを祈るばかりですね」

「お前も気をもみすぎるでないぞ。目は覚ましたんだ、今度はお前が倒れたりしたら大変だからな」

「そうですね、目が覚まさないときは気が気でなかったですが、これからは私がしっかりしないとですね」

「大丈夫、ゆっくりやろう。どれ、俺も飯を食べようとするか」

「準備いたします」

スゥー…パタン


来たのは父、萱野権兵衛だった。

怖い人だと思ってたのに、全然優しい人じゃん。

聞いてた限り今でいう親バカなくらい溺愛してるっぽい...

こんな人が3年後には亡くなるだなんて、、、


しばらくするとタニと乳母の千代が部屋に来た。

「紀子?一度起きれる?粥を作ってきたのだけど...」

私は体を置きあげてタニの方を見た

「先ほどはごめんなさいね、母が急ぎすぎたせいで」

「...いえ、母上のせいではございません」

「そう...」

「おぐさまが紀子様のために直接粥をお作りになったんですよ!これは絶品まちがいねぇっす!」

タニさんが作ってくれたのか。


「あなたが好きなキノコと山菜を細かくして入れてみたのだけれど食べれそう?」

美味しそうな香り...

「はい、いただきます」

そういうとタニさんは嬉しそうだった。

「そう、よかった!母が食べさせてあげますからね」

現代では27だった私が食べさせてもらうなんて、、、

めちゃはずい、、、

「おぐさま、そんなことは私がやりますよ」

「いいのよ、大切な娘がやっと目を覚ましてくれたんだもの、これくらい...

 千代、お水持ってきてくれないかしら?」

「わがりました」


乳母の千代はなまりがひどいが、タニさんはきれいな話し方だなぁ


それからお粥を食べたあとは横になって寝ることにした。


タニさん、いい人だけど、お母さんに会いたいなぁ...


そう思ってると涙が止まらなくなり、思いっきり泣いた後いつの間にか眠っていた。









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