第3話 運命の前兆
会津へ向かう当日。
私はそわそわしていた。
「なんかあんた楽しみじゃなさそうだね?」
「いや?めちゃめちゃ楽しみだよ。でもなんかそわそわするの」
「え~、前世会津の人だったんじゃないの~?笑」
「......」
まさかね、、?
「でも昔から学校の遠足とか剣道の帰りにみんなととか行ってたじゃん」
「そうなんだけどなんか今回は違うんだよねぇ」
「ふぅん」
確かに、今まで小学校の修学旅行も白虎隊聖地巡りだったし、会津で大会があるとチームみんなで帰りに飯盛山にお参りに行ったりしてた。その時は何ともなく、むしろ実際の出来事を学ぶのが楽しかった。
でも今回は、、、
そんなこと考えていたらあっという間に会津についてしまった。
5月だってのになんで30度近くあるんだ?
「もうつくよ」
「うん」
お母さんに急かされ外を見ると目の前に鶴ヶ城があった。
いつ見ても立派なお城だな。
「ここの塀があの場面かな⁈あそこがきっと~」
お母さんはやっぱり大興奮だった。
そして私も楽しさではない謎の高揚感があった。
「暑いし中入ろっか!」
こんなはしゃいでるお母さん、久々に見たな、、、
昔好きだったアイドルが復活したときのようなはしゃぎ方。
なんともまあかわいいお母さんを持ったもんだ。
入場券を購入して早速中に入ると当時塩釜となっていた石垣が目に入った。
びっくりするぐらい涼しい。。。
続いて1層目に上がると鶴ヶ城の歴史が書いてあり、当時は会津若松城と呼ばれていたそう。
今まで何回も見てきた内容だけど大人になって見るとまた違う見え方ができて少し楽しかった。
2層目に上がると有名な伊達家・上杉家・加藤家・保科/松平家など6名家についての説明があった。これは会津若松城を含む会津藩を治めてきた名家で、戊辰戦争時代の
会津藩は最後の松平家が治めていた。城主の松平容保は徳川慶喜と義理の兄弟であり、会津藩は強いと全国でも名が売れていたそうだ。
そんな内容を見ているうちに少しずつ海底に沈むかのように肺が圧迫される感覚があった。
「あれ、階段そんな登ったかな、、、」
動悸と呼吸困難で限界を迎えたのは3層目に上がった時だった。
お母さんに肺が苦しいことを伝え、扇子で仰いでもらいながら展示を見ていた時、目の前に白虎士中2番隊全員の顔写真があった。
過呼吸気味になっていた自分はある写真を見た瞬間に呼吸が止まり、いままで聞いたことないくらい早い心音以外何も聞こえなかった。
【篠田儀三郎】
なんでだろう。なんでこんな切ないんだろう。
今まで感じたことのない気持ちに整理がつかず、ただただ1枚の写真を見て泣いていた。
そこで意識が途切れ、目の前が真っ暗になった時、、、
「...こどの...紀子殿...」
その声だけが聞こえた。
同時に身体が浮く感覚。
あぁ、わたし死ぬんだ。
「紀子殿、紀子殿、寝てはいけませんよ、約束したんですから…」
約束?なんの話だろう。ってより誰だろう。
逆光で顔が見えない。
そのままわたしは意識を失った。
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