二十 テレス帝国消滅
グリーゼ歴、二八一五年十一月十六日、夜。
オリオン渦状腕外縁部、テレス星団、テレス星系、惑星テスロン。
惑星テスロン、テレス帝国、首都テスログラン上空、静止軌道上、戦艦〈オリオン〉。
攻撃用球体型宇宙戦艦〈オリオン〉はステルス艦だ。〈V1〉、〈V2〉、〈⊿2〉、〈⊿3〉もステルス機だ。ステルス状態にある場合、百メートル以内の間近で直視しない限り、電磁波探査では見つけられない。現在、〈オリオン〉はステルス状態のまま、巨大な艦体を多重位相反転シールドに包み、首都テスログラン上空の静止軌道上にいる。
「明後日未明の攻撃は東西の皇帝の翼だ。
攻撃と同時に、皇帝と皇女の執務室を〈ウイング〉ごと分離する。
それまで、全員、休息してくれ」
Jの話が終らないうちに、首都テスログランのテレス帝国政府テレス宮殿周辺に張られた多重位相反転シールドの4D映像がホールに現れた。やはり、テレス帝国は、ニオブの円盤型小型偵察艦からプロミドンのテクノロジーを解読し、それらを駆使して防衛態勢を確立したらしい。
「緊急事態です。首都テスログラン近郊の軍事施設から、艦隊がスキップしました」
PDがいつものおちついた調子で、出撃した艦隊の4D映像を示した。緊急事態というのが奇妙に聞こえる。
「でも、緊急は緊急だよ~。
ネエ、どう対応するの?
どうするの?」
Jの精神思考を読んだPeJがトルクンになって、Jの肩の上ではしゃいでいる。
「明後日未明の攻撃は中止だ。
艦隊が攻撃したら、ヒッグス粒子弾を放って、艦隊と惑星テスロンの全テクノロジーと、皇帝テレスとオイラー・ホイヘンスの血を引く者、テレス帝国のディノス全てを消滅してくれ」
JはPDに伝えた。
「了解しました。早い決断ですね。
もはやJは、総司令官Jです!
艦隊から、レーザーパルスと粒子ビームパルス、各種ミサイルが発射されました。
心配ありません。多重位相反転シールドで守られています。
ただちにヒッグス粒子弾を発射します」
PDはおちついている。
デルフォンヌ・ロドス防衛大臣の私軍ロドス艦隊は、レーザーパルスと粒子ビームパルスと、ありったけの各種ミサイルを放ちながら、攻撃用球体型宇宙戦艦〈オリオン〉に接近した。その光景は、まさに大牛に群がる蠅だった。
「艦隊にヒッグス粒子弾発射!」
PDの号令とともに、戦艦〈オリオン〉が一発のヒッグス粒子弾をロドス艦隊にスキップした。
ロドス艦隊は一瞬に消滅した。
「惑星テスロンへヒッグス粒子弾発射!」
さらに〈オリオン〉が数発のヒッグス粒子弾をスキップした。
一瞬に、惑星テスロンの全テクノロジーと、オイラー・ホイヘンスの血を引く者、テレス帝国のディノス全てが消滅した。
全てのテクノロジーが消滅したテレス帝国軍作戦司令本部の暗闇で、テレス帝国軍総司令官ウィスカー・オラール中将は呟いた。オラール中将と中将が率いるテレス帝国軍装甲武装兵士・アーマーは全員がカプラムだ。
「なるようになったな・・・」
これで、惑星テスロンは未開の惑星だ。予定どおり、惑星テスロンとテレス帝国の新しい時代が始る。トムソやニオブを利用するとは、やはり、ニュカム(ミュータント)のジョーはウィザード軍団だ。しばらくのんびり休暇だ・・・。
オラールは暗闇の中から、司令部にいる部下を思念波で探査した。
「オラール元帥、指示をお願いします。
全員が思念波で空間を認識しています」
作戦司令部のアトラス・オラール大佐が、指令本部のオラールに思念波で伝えてきた。
オラール大佐はウィスカー・オラール中将の遠縁で、テレス帝国軍作戦司令部の参謀長だ。
「大佐、全員に十日間の休暇を与えろ」
オラールは思念波で伝えた。
「了解しました。
ニールス・ランド太尉、全員に伝えろ。
全員に十日間の休暇だ!十一日後、八〇〇〇時に、ここに集合してくれ。以上だ」
「了解しました。全員、休暇だ。十一日後、八〇〇〇時に、ここに集合しろ。
解散!」
作戦司令部から人員が去っていった。
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