第2話   ココちゃんが拾えるアイテムは小さめ

 少し強めの風がふいて、樹木を彩る桃色の花びらが、たくさん連れ去られていった。


 ココは目を丸くして、桃色たちを呆然と見送った。ふと、どれくらい残ったのかと樹木を見上げると、枝葉に、ほんの少量だけが。心なしかしょんぼりして見えた。


「あやや~……」


 ぽかんと口を開けて、樹木の迎えた現実を見上げていた。



 また強く風が吹いてきて、スカートがばたばたとはためくのを不思議そうに見下ろしていたら、頭上でまた花たちが吹き去ってしまった。


 ほとんど花を失ってしまった一本の樹木。だけどココは綺麗だったのを覚えている。一番初めに、お服を助けてくれたのも覚えている。


 太い幹に両腕を伸ばして、抱きしめた。


「ありがと。だいすき」


 幹をぽんぽんと叩いて、腕を離した。


 おでこに、花が落ちてきて、足元に転がった。ココはしゃがんで拾い上げると、それを手でいじりながら、よくよく観察した。花びらは五枚、中に紐みたいなのがいっぱい生えている。


 匂いは、鼻を近づけてみても、よくわからなかった。周りの雑草の青々とした匂いのほうが強かった。


 指先でくるくると回転させる。花びらの薄い感触も、指で挟んで確かめてみた。その柔らかい色と感触に、へへ、と笑顔になる。


「ありがとう。コレもらってくね」


 初めてもらった小さな花に、ご機嫌で歩きだした。サンダルで元気に歩くうちに、雑草を取り除かれた歩きやすい歩道が見えてきた。


 まだ見ぬ誰かも歩く道。そこへ移動してゆく前に、サンダルの爪先を立ててくるりと半回転、少し距離ができてしまった樹木に、大きく手を振った。


「またねー!」


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