ココはここにいる

小花ソルト(一話四千字内を標準に執筆中)

第1話   まずはココちゃんを動かしてみよう

 ココは大きな石の上に座っている。頭上からは温かな日差しが降り注ぎ、体が頭のてっぺんからほかほかしてくる。石もあったかくて、お尻が冷えることもなかった。


 裸足をぶらぶら揺らしても、爪先が草原に届くことはない。大きな大きな石だった。両足をピンと伸ばしてみると、まるで飛んでいるみたいだった。


 ひとしきり石の上で遊んでいると、ふと裸でいるのはおかしなことだと気が付く。このまま地面に下りてもいいのだろうかと迷うココの視界の端に、ピンクの花を満開に咲かせる一本の樹木が。枝に白いワンピースが掛かっているのが見えた。


 カボチャみたいなパンツも干してある。


 そうすると、靴も欲しくなる。


 樹木の根本に、サンダルが一足、そろえてあるのも見つけて、ようやく石から下りようと決意できた。石はすべすべで、するりと滑り降りることができた。


 樹木の根本まで走っていき、


「借りるだけ、借りるだけ」


 と繰り返しながら、木によじ登って、パンツを取り、ワンピースも回収した。地面に飛び降りて、洗い立てのパンツを履き、石鹸の匂いのするワンピースを頭から被り、「ふぅ」と一息ついて、それからサンダルも足にはめて、ようやく「ココ」が完成した。


 石の上で生まれた彼女の物心は、身に着けた物によって輪郭をはっきりさせた。


 おはよう、ココ。


 私たちはあなたを祝福する。


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