ウチの奥さんヴァンパイア

タヌキング

幸せな結婚

「どういことだか説明してよね。」


玄関で仁王立ちで怒り心頭の妻と、正座で項垂れている僕。

どうしてこんなことになったか説明するとなると、時間を今日の昼に巻き戻さないといけない。



僕の名前は汐留 修(しおどめ おさむ)。平凡なサラリーマンである。ただ一つ他の人と違うとすれば、奥さんが人外ってことだけさ。

会社にて昼休みになり、自分の席で弁当を開けていると、課長が声を掛けて来た。


「また手作り弁当かい?やはり新婚は良いねぇ。」


「は、はい、課長。」


課長でもね。毎日レバニラとニンニクのバクダンが入っているんですよ?いい加減飽きますよ。と心の中で愚痴をこぼす僕。例え会社であろうとも奥さんの文句は口に出さないのが僕のポリシーである。

ニンニクが嫌いなんて迷信だったのは結婚してから知った事である。

弁当を食べていると他のことに注意が散漫になってしまい、僕の首筋に止まった奴の存在に気付けなかったことが今回の僕のミスである。





「ねぇ、説明してって言ってるの。この浮気者。」


「だから浮気じゃ無いですって。」


はい、現代に戻ってきました。ご立腹であらせられる僕のワイフのベルさんは、頬を膨らませて可愛く怒っている。だが可愛いのにかまけて会話の選択肢を間違えれば、僕には死という最悪のエンドが待ち構えているので注意が必要である。


「ムキ―‼その首筋の痕‼それを浮気じゃなくてなんなのよ‼」


「だから蚊に刺されたのを浮気にカウントするのやめようよ‼」


蚊に刺されたぐらいで何をそんなに怒っているのだろう?と読者の皆さんの中にはそう思っている人も居るかもしれない。僕だってそう。

でも、彼女が怒っていることには、彼女の種族が関係していると言わざるをえない。

実はうちの奥さんは純血の吸血鬼、言うなればヴァンパイアであり、毎日僕の血を吸いたがっている欲しがり屋さんなのである。

ヴァンパイアといっても、見た目は他の人と変わらない。強いて変わることといえば、髪は金髪ロングで、八重歯が長くて、Gカップでスタイルが良く、顔がメチャクチャ可愛いことぐらいである。


「あなたが会社に行っている時は血を吸いたくても我慢してるのに‼下等な虫族のアバズレに血を吸われるなんて浮気よ浮気‼もう心臓に杭を打ち込んでやりたい‼」


「やめてよ。何でいつも殺害方法がハンター側の発想なの?」


この間も鞭で僕のことを叩いて来たしなぁ。でもあれは少し良かった。


「もう別れる‼実家の城に帰る‼」


「城に帰らないでよ。あそこフランスの山奥だから行くの大変なんだから。」


「・・・じゃあ埋め合わせしてよ。」


急にベルちゃんの顔が赤くなり、モジモジし始めた。今日は怒りモードが短かったな。よっぽど欲求不満らしい。

僕は立ちあがってベルちゃんを抱き締めた。


「喜んで。お姫様。」


そう言いながら、お姫様抱っこでベルちゃんをベッドまで運ぶ僕。

恥ずかしそうで、尚且つ嬉しそうなベルちゃんの顔が見れて眼福である。

ちなみにこの後メチャクチャ血を吸われて、輸血が必要になったのは言うまでも無い。


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ウチの奥さんヴァンパイア タヌキング @kibamusi

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