なんとなく

@pino1996219

第1話

煌々と光る町並み、0時になっているのに走っている電車

眠らない街新宿

所々に置かれているゴミ袋

そこに群がるでかいドブネズミ

しゃがんだ少女の下にバラ撒かれている睡眠薬やお酒の残骸

この街は悲鳴をあげている

その悲鳴は誰にも届かない、人自身がそうであるように

映画館のすぐ横に彼女達は居場所を見つけた

問題視されるニュースや時々やって来ては居場所を奪い取る警察

彼女達は悲鳴をあげている

その悲鳴は彼女達にしか届かない、この街と同じように

空を見上げてタバコをふかす男性

日曜なのに仕事終わりかのようにどっと疲れ果て、男性はため息を誤魔化すかのように深く深くタバコの煙を吐く

時々、声が漏れていることに周りすら気づかない

僕たちは段々と麻痺している

その毒は段々と体を蝕み、気づかないうちに僕達は東京の人になっていく


そんなことを考えながらいつしか初めてしまったタバコをふかす僕

「僕ってまだやれてんのかなぁ」

その問は自分自身の心に波紋を残し

光輝く東京を見ながら「明日、仕事だし寝るか」そんなふうに波紋は薄れていきやがて消えていく


朝、何万人もの人達が行き交う駅

みんながスマホを覗き込みながら見ていたのは今朝のニュースだった

「あの大物歌手が未成年淫行ですか、これはなんといいますか、、」

ニュースは週刊誌に掲載されたあの大物歌手「えいた」の記事についてのニュースだった

週刊誌の写真を取ったのはまぎれもなく僕だった

僕は北海道の大自然に生まれそこでその風景を写真に収めるのが好きでこの仕事についたはずなのに、いつしか僕が立っていたのは人のプライベートを盗み撮りお金にする仕事だった

その日、僕は夢を見た

気だるくなるような熱さ、蝉の声が響き渡る山や川

その大自然の中で少女の写真を撮るそんな夢を



僕はいつも通り仕事に向かっていた。

いつも通りの道、いつも通りの人並、けれどそこに違和感を覚えた。

僕はいつも通りの道を歩きながらその違和感について考えていた。

ばんっ、僕は人にぶつかってしまった。

考えながら下を向き歩いていたので、そうなるには時間の問題だったと思う。

「すいません!」僕はすぐさま謝った。

ぶつかったのは20代前半くらいの女性で彼女は床に尻もちをつきながら大事そうに花を持っていた。

「よかったぁ、受け止めきれたぁ」彼女はぶつかったことよりも花の方が心配らしい








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