第8話 初クエストは緊急クエスト!?

窓から入ってくる日差しが強くて目が覚めた。


圭人:「ふぁぁ、朝か。…学校!!…そうだった…」


あまりにも熟睡していたせいが異世界にいることを忘れていた。


相当疲れていたのか、それともベッドで寝たことによる安心からなのか夢も見ずに気付いたら朝だった。


コンッコンッ


圭人:「はーい」


受付:「失礼します。よかった、起きてらしたんですね。ケイトさん、朝食が出来てるので食べにいらしてください。」


圭人:「朝食…!!ここの宿は朝食まであるのか!」


受付:「はい…?どこの宿にでもあるかと…」


そ、そうなのか。朝から恥ずかしい…


圭人:「そ、そうか。わかった、すぐに支度して降りるよ。」


受付:「はいっ。お待ちしてます!」


受付はそう言うと部屋から出ていく。


さて、今日は昼までにはギルドに行かなければいけない。


圭人「今はだいたい何時くらいなんだろう。」

『現在時刻 8:22』


圭人:「ははっ、便利なこって…」


時間は分かった。

そして問題がもう1つ。

異世界に来て今日で3日目。

そう。体がベタベタなのだ。

この世界の人は慣れているのかもしれないが、現代の地球で生きていた俺にとって、2日目までは耐えられる。

しかし3日目となると…とにかく気持ち悪い。


圭人:「体を洗えるような魔法無いかな。」


『水属性魔法 ウォーターベールクリーン』


なんかそれっぽいやつがあった。

なんならクリーンって書いてるし。


ウォーターベールだから、体に水を纏うのかな。

服は脱いでおこう。


全裸になり魔法を唱える

圭人:「ウォーターベールクリーン」


予想通りだ。体に水を纏い、体が綺麗になる。

『息を止めてください。』


指示通りに息を止める。

顔、頭まで水に覆われる。


10秒程で身体中を纏っていた水が無くなる。

どうやら終わったようだ。


圭人:「服はどうしようか。」


魔法を組みあわせてみるのはどうだろうか。


ちょうどベットの横に桶がある。


圭人:「ウォーター。」


桶に水が溜まる。


ここに昨日まで来ていた服を入れる。

圭人:「風属性魔法 ウィンド。」


桶の中の水が勢いよく回る。


圭人:「よし、成功だ。擬似的な洗濯機!」


そして仕上げに。桶から服を出し、軽く絞る。


圭人:「ウィンド。」


強い風により、服がみるみるうちに乾いていく。


圭人:「よし!成功だ!!」


ドンドンドン!!


受付:「ケイトさん!上からすごい風と音がしたんですが、大丈夫ですか!!」


受付:「あっ……ごめんなさいっお着替え中失礼しました!!!」


バタンッ!!

勢いよく扉が閉められる。


扉の向こうの受付:「はわわ〜、どうしよう…初めて男の人の見ちゃった…あたし、お嫁に行けないよ〜…」


やってしまった…… 思いっきり正面から全裸を見られた。

まさか異世界生活3日目にして物凄く恥ずかしい事件が起きてしまうとは。


圭人:「はぁ…迂闊に魔法を使うもんじゃないね…」


受付の人にどう顔向けしよう。

とりあえず朝食が出来てるらしいから、降りるしかないか…


急いで服を着て降りる。


受付:「あっ…お、おはようございます。朝食は階段の裏の扉を開けてそこで食べてくださいっ…!」


顔を赤らめ、そそくさと立ち去っていく受付。


圭人:「…やっぱり気まずいよな…」


とりあえず階段の裏の扉を開け、朝食を済ませた。


圭人:「結構…美味しかったな…」


さて、ギルドに向かおう。

カウンターへ行くと受付が変わっていた。


圭人:「あれ、あの子じゃないんだな。」


受付:「あぁ、ロザリーの事ですかね。あの子は私の娘でね。ああやって週2回程店番を代わってくれるのさ。おかげで私も休めるし。全くいい娘を持ったよ。」


圭人:「そうだったのか。あんたも身体壊さんように気をつけてな。無理は禁物だ。」


受付:「あら、そんなこと言って貰えたの初めてだわ。ありがとうね。一応ギルドから1週間分の宿泊料貰ってるみたいだから、美味しい晩ご飯作っとくよ。」


圭人:「おっ、それは楽しみだ。美味い食事は元気が出るからな。楽しみに帰ってくるよ。」


受付:「はいよ!いってらっしゃい!」


そして俺は宿から出た。

現在時刻は…10:02


うん、ちょっと早いくらいかな。


ギルドに着いた俺はすぐにリーズレットの元へ向かう。


向かっている途中周りの声が聞こえてくる。


「おい、あいつ。新人の癖にBランクだとよ。」

「アギルも倒したらしい。」

「一体どんな不正をしたってんだ。」

「アギルに金積んだんじゃねえか?」

「ありえる。アギルなら金で買われそうだ。」


やはり初日からBランクというのは色々と疑われるようだ。


リーズレット:「あっ!ケイトさーん!おはようございます!」


圭人:「おはよう。ちょっと早かったかな。」


リーズレット:「いいえー!そんなことありませんよ!ほんの5分ほど前に昨日の素材の査定が終わりました!」


圭人:「おお、結構いいタイミングだったんだな。」


リーズレット:「まずお預かりしてたのが、ゴブリンの耳×20、ブラックウルフの毛皮×20

毒消し草×230、薬草×315 生命の花×40 マンドラゴラ×150でしたね。」


リーズレット:「まずゴブリンの耳×20とブラックウルフの毛皮×20ですが相場で買い取らせて頂き、銅貨1枚と300ペトです。」


リーズレット:「そして毒消し草×230と薬草×315ですが、こちらは相場の倍で買い取らせて頂きます。理由は毒消し草と薬草はクエストを受けてくれる方が少なく、この量はとても助かる為。

そして綺麗に根から抜かれているので痛みもなく、高純度のポーションを作るのに最適な状態。

以上を踏まえまして相場の倍の値段。銀貨5枚で買い取らせて頂きます。」


は…?これだけで既に500万ペト稼げている計算だ。


リーズレット:「続いて生命の話。こちらもかなり綺麗な状態ですが生命の花の買取価格に色を付けてしまうとギルドとしてもかなり痛いので相場でお願いします!金貨30枚です。」


んー、なんか桁がおかしくなってきたぞー?

こんな大金どうしろってんだよ〜…。


リーズレット:「さて、最後のマンドラゴラ×150ですね。こちらは裏でお渡しします。」


そう言って昨日ゲイルと話した部屋へと連れていかれる。


リーズレット:「さて、マンドラゴラですがこちらはかなり希少性が高いものです。マンドラゴラが素材の万能薬は滅多にお目にかかれないモノ。そして見つけても普通に抜こうものなら、この世の者とは思えない叫び声をあげ、人を死に至らしめる危険な植物の為滅多に市場に出回らないものです。」


圭人:「おいおい、俺はそんなものを150個も持ってきたのか。」


リーズレット:「はい。これはとてつもない買取価格になっているため、こちらに来ていただきました。」


リーズレット:「では、マンドラゴラの買取価格ですが白金貨4枚です。白金貨を渡したのは私ですら初めてなので、ものすごい緊張してます…。」


白金貨でまとめられているため、なんか少ないな…と思ってしまったがそんなことは無い。

白金貨1枚で1億ペト。4枚で4億ペトだからだ。


俺は昨日1日で4億を稼いでしまったのだ。


圭人:「は、ははっ…白金貨4枚…とんでもないものを大量に持ち込んでしまったようだな。俺は。」


リーズレット:「はい。まだ私、手が震えてます。」


圭人:「すまんな。そんなに緊張するような仕事をやって貰って。」


リーズレット:「いえ、私はケイトさんの専属ですし、やらなければいけないんです。あの、ケイトさん。申し訳ない気持ちがあるなら…その…1つお願いを聞いてください。」


圭人:「なんだ。俺に出来ることならするぞ。」


リーズレット:「あの…震えが止まるまで、手を…握って貰えたら…なんて…」


圭人:「あ、、ああ…わかった…。」


リーズレットの手を握る。


リーズレット:「なんでしょう。この安心感。ケイトさんに手を握られるとすごく安心します。」


圭人:「そ、それならよかった。」


しばらくの沈黙の後、突然笛のような音が鳴り出す。


「緊張クエスト発令!緊急クエスト発令!」


「森にてモンスターピートが発生!」

「森にてモンスターピートが発生!」


「おおよそ20万の魔物がエンジークの街に向かっている!住民は速やかに避難せよ!」


「おおよそ20万の魔物がエンジークの街に向かっている!速やかに避難せよ!」


「ギルドのハンターたちはスタンピートを止める緊急クエストに参加せよ!」


「ギルドのハンター達はスタンピートを止める緊急クエストに参加せよ!」


リーズレット:「ケ、ケイトさん!!!」


圭人:「ああ、わかっている。俺の初クエストはとんでもないクエストのようだ。」



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