第7話 ギルド長に早速借りを作らせてしまった。

俺はまだ実技試験の結果を待っていた。


リーズレット:「すみませんケイトさん。もう1時間は過ぎてると思うんですけど、もう少しかかりそうです。」


圭人:「ああ、全然大丈夫。」


リーズレット:「すみません…もう少々お待ちください!」


圭人:「わかったよ。」


今は時間があればあるだけいい。

なぜなら問題を解決させるために色々考えているからだ。

その問題とは……俺のキャラが安定しない!!


最初はクールキャラで行こうと思ったが慣れない。

今は少し優しめのキャラで行こうとしてる。

がしかし、クールキャラの方が良さそうな気もしてきた。


うーん、どうするべきか。正直なところキャラを作っていてもいずれバレるのだろうが…

変な輩に絡まれないためにも表向きだけでもキャラを作っておきたい。


今ところキャラを作ってない状態を見てるのはミアだけだ。

まだなんとかなる…はず。


そんなことを1時間も悩んでいたのだ。

全く俺は異世界に来て何を考えてるのか。


今後のことも考えなければいけないのになぁ

とりあえず少しでも常識を付けるために今度図書館にでも行こう。


そして今日から宿暮らしになるだろう。

少しでもお金を稼いで自分の家を買おう。

自分の家を買うなら王都の近くとかの方がいいのかな。

色々と便利そうだし。


そんな先のことを考えていると、足音が聞こえてくる。

(コンッコンッ)

誰かが入ってくるようだ。

「どうぞ。」


入ってきたのはリーズレットと知らないおっちゃんだ。


ゲイル:「初めましてだな。ここのギルド長をやっているゲイルだ。」


ギルド長が直々に来たようだ。それだけ俺がやったことはイレギュラーなのか。


圭人:「ギルド長が自ら来てくれたのか。ケイトだよろしく。」


握手を交わす。握った手に力が入っているのが分かる。

…この世界はこんなのばっかなのか。

俺は30%程の力で握り返す。


ゲイル:「……っ!!分かった分かった!!いきなり悪かった!」


ゲイルは手を無理やり振り解き、痛がっていた。


リーズレット:「…うちのギルド長よりも強い握力…」


ゲイル:「ケイト、お前は16とは思えないほど桁違いな実力を持っているようだ。」


ゲイル:「俺の握力はこのギルドでは一番強いんだがな…お前は俺以上のようだ。

期待の新人…というか実力はもうベテランの域でも申し分ないだろう。」


圭人:「そんなことないよ。俺はまだ常識も知らなければ知っているモンスターも少ない。そして場数も少ないアマちゃんさ。」


ゲイル:「自分に足りない部分をわきまえてるのはいい事だ。しかしお前はAランク冒険者を軽々と圧倒するだけの実力はある。もう少し自信を持ってもいいぞ。」


圭人:「そうか…分かった。」


ゲイル:「ところで1つ提案なんだが。お前、俺と戦ってみないか?」


圭人:「………は?」


ゲイル:「いやー、今でこそ現役を退いてギルド長なんてのをやっているが、実は2年前まで王都でSランク冒険者をやっててな。」


圭人:「え、Sランク!?」


ゲイル:「そう。Sランクになれるようなやつって大抵戦いに飢えてやがるんだよ。」


圭人:「なるほどな…それでギルド長になって戦う機会が減ってしまったと。」


ゲイル:「その通りだ。アギルを倒したお前ならいい相手になりそうだからな。」


圭人:「俺はあまり目立ちたくない。秘密裏にやると言うならいいだろう。」


ゲイル:「ほぅ、それほどの力を持っていながらそれを誇示しない。好きだぜそういうの。

ただお前今日は疲れているだろう。聞けば明日、素材の買取のためにまたギルドに来るらしいじゃないか。」


圭人:「ああ、そのつもりだ。」


ゲイル:「明日の昼なら俺も空いている。どうだ?」


圭人:「はぁ…なんとなくギルド長の性格がわかったよ。やるまでしつこく対戦をせがまれそうだ…」


リーズレット:「ケイトさん。その通りです。まさに!その通りです!!」


ゲイル:「よし!そうと決まれば明日の昼に待っておるぞ!」


圭人:「もう決まってるのね…ところで俺のギルド登録の話はどこに行った。」


ゲイル:「おお、戦いの事で頭がいっぱいで忘れてた。」


圭人:「しっかりしてくれよ…」


ゲイル:「ゴホン!えー、では本日よりケイトはエンジークギルド。ギルド長より直々にBランク冒険者に任命する。」


圭人:「は…?え…?いきなりBランクか?俺はてっきりE辺りだと思ってたんだが…」


ゲイル:「いや、俺も最初はそこまで飛び級させるのは問題化と思っていたんだがな。Aランク冒険者が本気を出して殺しにかかってきていたにも関わらず軽々と倒し、Bランクモンスターブラッディタイガーの素材も持ってきたと聞く。」


ゲイル:「そこまでの実力があるのであればEランクやDランクでは逆にギルドの不利益になる。異例中の異例だがBランクスタートとする。」


圭人:「別に俺はいいが…お偉いさんは黙ってないんじゃないか…?」


ゲイル:「くっ…痛いとこをついてきやがる…だが俺は思ったのよ。ケイト。明日の対戦。絶対に負けようとか思わないでくれ。」


圭人:「はぁ…なんとなく察したよ。お互い本気を出した上で自分が負ければお偉いさん達を黙らせられるってことか。」


ゲイル:「ハッハッハッ!話が早くて助かる!よろしく頼むぜ!」


圭人:「わかったよ…俺も面倒事には巻き込まれたくない。断れば恐らく俺も巻き込まれるだろうからな…。」


ゲイル:「よし!まあ巻き込んでることに変わりはないがな!詫びと言っちゃなんだがこの後飯でもどうだ?もちろん奢るぜ。ちなみに今日の宿も手配しておいた。もちろん金の心配はいらん。」


圭人:「マジでか!!そこまでしてもらったら断れないだろ…」


ゲイル:「ハナから断らせる気なんてねえからよ!よっしゃ行くぜ‼️」


そういってギルド長に肩を組まれ、半ば強引に連れて行かれた。


ギルドの中で済ませるのかと思いきや、ギルドの外に出てしまった。


圭人:「ギルドの上じゃないのか?」


ゲイル:「俺がケイトを連れてあそこで食事してみろ、かなり目立つぞ?」


圭人:「確かに…」


目立ちたくないというのをしっかり考えてくれているようだ。


そうして歩いていると、とある路地裏へと入っていく。

その奥にひっそりと店があった。


ゲイル:「よし、着いたぜ!」


そういって俺とゲイルは店の中に入っていった。


ゲイル:「よっ!ナンシー!邪魔するぜ!今日は客として…な!」


ナンシー:「やっとかい…客として来たのなんて何ヶ月ぶりだい…いつもいつも相談事ばかりで…」


ゲイル:「まぁ今日はその分しっかり食ってくからよ!」


ナンシー:「それならいいけど…ところで隣の子は誰だい?」


ゲイル:「こいつはケイト!今日うちのギルドに入ったスーパールーキーだ!なんとスキルまで使った本気のアギルを軽々と倒しちまってよ。異例のBランクスタートになったってわけよ。」


ナンシー:「ほう、この坊やがアギルを…」


圭人:「ケイトだ。アギルを倒したのは本当だがそんな大した人間じゃないよ。」


ナンシー:「冒険者なのに珍しい謙虚な子だね。ナンシーだ。ゲイルとは昔の冒険者仲間ってとこかね。」


ゲイル:「ナンシーは王都では最強の魔法使いでな。魔法ならこいつに叶うやつぁいなかったよ。」


ゲイル:「…なぁケイト、明日の1戦ナンシーに見せてもいいか。お前も魔法使いだし、ナンシーに見てもらって魔法使いの戦い方を教えて貰え。」


圭人:「…まぁ1人くらいならいいか…。」


ゲイル:「そういうことだナンシー。明日の昼頃ギルドに来てこいつの戦い方見てくれねえか?」


ナンシー:「まあそのくらいならいいだろう。」


ゲイル:「っし!決まりだな!そしたらナンシー!料理をおまかせでどんどん持ってきてくれ!」


ナンシー:「ったくしょうがないね。育ち盛りの子もいるんだ。たくさん食べいきな!」


そして俺は腹いっぱいになるまで食べた。


ナンシー:「ふぅ…久々にこんなに疲れたよ。あんた、いい食いっぷりだったよ。」


圭人:「こんな美味い飯だったらいくらでも入る気がするよ。」


ナンシー:「いいこと言ってくれるね!!あんた気に入ったよ!これからも来ておくれ!サービスするよ!」


圭人:「そしたらここの経営に支障がない程度で頼むよ。」


ナンシー:「間違いないね!」


2人で笑いながら話しているとゲイルが少し浮かれない顔をしていた。


ナンシー:「なんだい!大の男がそんなつれない顔して!」


ゲイル:「い、いやぁな…ナンシー、ちょっと頼みが…」


ナンシー:「なんだい。勘定ならまけないよ。」


ゲイル:「そ、そうだよなぁ…」


ゲイルは肩を落としていた。


圭人:「す、すまん。さすがに食いすぎたか。」


ゲイル:「いや、俺の予想の10倍は食ったからな。見てて気持ちのいい食いっぷりではあったんだが…」


圭人:「ナンシー、ちなみに勘定は?」


ナンシー:「そうさねぇ、10万と5200ペトってとこかね。まぁケイトが私と同じ魔法使いで私が気に入った人間ってことでサービスして10万ペトにしとくよ。」


圭人:「そうか、わかった。これで頼む。」


銅貨1枚を手渡す。


ナンシー:「ったく、ギルド長ともあろう者が新人に奢られるなんて情けないねえ。」


ゲイル:「す、すまんケイト…この埋め合わせは必ずするからよ。」


圭人:「いいっていいって、正直今日の宿代が浮いただけでも助かるからさ。こんな美味い店も紹介してくれたし安いもんだ。」


ゲイル:「お前、良い奴だな…」


ナンシー:「さっ、外も暗いし明日は昼からギルドにも行かなきゃだし。今日は店じまいだよ。帰った帰った!」


ゲイル:「わ、わかった。ありがとう。ご馳走様。」


圭人:「ご馳走様!また必ず食べに来るよ!ほんとに美味かった!ありがとう!」


ナンシー:「またねっ待ってるからね。」


そして店を後にした俺はゲイルに宿まで案内してもらい、解散することにした。


ゲイル:「ケイト、今日はすまんかった。必ずこの借りは返すからよ!」


圭人:「分かった分かった!俺は気にしてないからそんな落ち込むなよ!」


ゲイル:「あ、ああ。それじゃ、また明日。」


圭人:「ああ、また明日。」


俺は宿に入る。


受付:「いらっしゃいませ!エンジークギルド長ゲイルさんからお話は聞いています!お部屋へ案内しますね!」


そうして案内された部屋はかなり綺麗な部屋だった。


受付:「ゲイルさんの紹介ですから!張り切って隅々まで綺麗にしました!」


かなりドヤ顔だ。


圭人:「ありがとう。これはぐっすりと眠れそうだ。」


受付:「ではごゆっくりとどうぞっ!」


そう言って受付の子は戻って行った。

そして俺はすぐベッドに横になった。


今日は色んなことがあったな。

ミアと出会い森を出てエンジークの街に着き。

なぜかミアの言葉であっさりと中に入れてもらえ、ローガン亭で2日ぶりの食事。

そしてギルドではいきなりAランク冒険者のアギルと戦い勝利。

そしていきなり俺専属の受付兼買取役になったリーズレット。

ギルド長直々のBランク冒険者任命。

そしてなぜかギルド長に飯を奢る…


これが1日で起こったのか…内容濃すぎだろ…。


圭人:「はぁ、今日は疲れたな。もう寝よう。」


そうして俺は気を失った。














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