第5話 ギルドに登録…ってそう簡単にはいかない。
俺はミアにギルドまで案内してもらうため、街の中を歩いていた。
しかし今の俺にこの街はキツイ。
なぜなら至る所で食べ物の露店を出しているからだ。
そう、俺こと市村圭人はこの世界に来て早2日。
何も食べていない。
圭人の腹:「グーギュルギュル」
ミア:「フッ、お前腹が減ってるのか。」
ミアは笑顔でそう言う。
圭人:「ここ2日間何も食べてないんだ。腹も減る。」
ミア:「そうか。それは腹が減って当然だな。ギルドに行く前になにか食べようか。」
圭人:「そうしたいのは山々だが、俺には金がない!だから一刻も早くギルドで稼ぎたいんだ。」
ミア:「気にするな。とてつもない魔法を見せてもらった礼だ。私が出そう。これでもこの街では結構稼いでる方なんだぞ。」
圭人:「申し訳ないが1食だけご馳走になろうかな。俺も早く稼いで今度ミアにめちゃくちゃ美味いご飯でもご馳走するよ。」
ミア:「私は食通で飯にはうるさいからな。」
圭人:「肝に銘じておく。」
そんな会話をしながら歩いているととある食堂に着いた。
『ローガン亭』
ミアが扉を開け、先に入っていく。
ミア:「ローガン、いつもの2つ!」
ローガン:「おっ、ミアじゃねーか。今日は珍しく彼氏連れか〜?」
ミア:「違う違う!森で殺されそうになってたとこを助けてな。どうやら森にいたところ記憶喪失になって路頭に迷ってたらしい。
見て見ぬふりも出来ないし…。」
ローガン:「相変わらずのお人好しだなっ!おっしゃ!今日はミアのそのお人好しな一面に感動したってことで俺からの奢りだ!たんと食いな!」
ミア:「ローガン!それはダメだ!せめて私の分だけでも払わせてくれ!」
ローガン:「うーん、そうだな。確かにミアに奢ると店は大赤字になっちまうな!分かった!そこの兄ちゃんの分だけ奢るわ!」
ミア:「…っ!!ローガン。どういう意味だ?」
ローガン:「さっ!気張って作りますかね〜!」
そう言うとローガンさんは厨房の方に逃げていった。
圭人:「ちょいちょい。」
ミア:「あいつめ。余計なことを…。ん、どうしたケイト。」
圭人:「せめて俺を会話に混ぜてくれ。挨拶もなんにもする間もなかったじゃないか。」
ミア:「あっ、ごめんごめん。いっつもこんな感じでさ。気付いたら会話終わっちゃってるから。」
ミア:「…っ! まぁなんだ、ローガンが料理を運んで来た時に挨拶すればいいさ。」
圭人:「そうだな、そうするよ。」
今の違和感。気のせいじゃない。
ミア。この女はキャラを作ってる。
元々こんな喋り方だと思って気にしていなかったが。
今の一瞬見せた女の子らしい喋り方……
めちゃくちゃ可愛くて推せる!!
…まずいまずい。オタクが出てきてしまう。
ミア:「そういえばケイト。」
圭人:「どうした。」
ミア:「お前、あんなすごい魔法を使えるくらいだ。もしかして…アイテムボックスとか持ってたりしないか?」
アイテムボックス!!忘れていた。異世界転生系では必ずと言っていい程主人公特典で付いてくるあの便利機能!
圭人:「アイテムボックス…?」
ミア:「高位の魔法使いでも一部の人間にしか使えない貴重なスキルだ。なんでも異空間のような場所にアイテムをしまえるらしい。」
ゲームのインベントリみたいなのを想像すればいいかな。
圭人:「アイテムボックス」
目の前にゲームのインベントリのようなウィンドウが表示される。
(うん。やっぱりあるよね。)
圭人:「あぁ、持ってるみたいだ。」
ミア:「っ…!持ってるのか!…いや、いいかケイト。面倒事に巻き込まれたくなければ、その事は今後私もしくは本当に信用出来る相手以外には喋るな。」
圭人:「お、おう。分かった。」
あれ。なんか見知らぬアイテムがたくさん入ってる。
ゴブリンの耳×20、ブラックウルフの毛皮×31
ブラッディタイガーの牙×3 キラーツリーの枝×50
毒消し草×230、薬草×315 生命の花×40 マンドラゴラ×150
マンドラゴラってあのマンドラゴラか!?
いや、それよりもなんでこんなに入ってるんだ。
まさかっ!!
頭の中でウィンドウを開く。
『スキル 自動採取』
やはりこういうのもあるのか…どれだけチートなんだ俺は。
圭人:「インベントリの中にブラックウルフの毛皮が入ってるんだが、恐らくこれはミアが討伐したものだろう。後で渡すから覚えておいてくれ。」
ミア:「分かった。しかしなぜケイトが持ってるんだ…?……いや、聞かないでおこう。魔法の件と言いアイテムボックスの件といい、お前は普通の人とは違うようだ。」
圭人:「恐らくこれも知られると面倒事に巻き込まれそうだから他言無用で頼むよ。」
ミア:「もちろん。そのつもりだ。」
ローガンが厨房から戻ってくる。
ローガン:「ほらよ!いつものブラッドベアのステーキだ!そして今日はサービスに他にも肉関係の料理を沢山作ってきたぜ!残すなよ!」
おそらく全て合わせたら15kgはありそうな量だ。
ミア:「ローガン。ありがたく頂くよ。そうだ、いつも世話になってる礼に今度肉を仕入れて持ってくるよ。仕入れると言っても自分で狩るんだが。」
ローガン:「なぁに!気にすんなって!たらふく食ってけ!そこの兄ちゃんもな!」
圭人:「ローガン…と言ったか。恩に着るよ。俺はケイト、これから俺もこの店を贔屓にさせて貰うよ。」
ローガン:「嬉しいこと言ってくれるね兄ちゃん!この店の店主ローガンだ。よろしくな!」
圭人:「よろしく。っておい!ミア!もう食べてんのか!2日食ってない俺が我慢してたのに…」
ミア:「へいとほはふぇはいふひひはへお!(ケイトも冷めないうちに食べろ!)」
圭人:「まったく…何を言ってんだか…いただきます!」
ローガン:「………おいおい、ミアがかなり食べるのは知ってるが…兄ちゃんもか。」
そう、俺は見た目は痩せているが食べる時は大食いファイター並に食べる。
おそらく今も2kgは食べているがまだまだ余裕だ。
その後も俺とミアは食べ続け、ついに出された料理を全て完食した。
ローガン:「まさか全部食べ切るとはな…恐れ入ったぜ。いい食いっぷりだった。今回はミアも勘定は要らねぇ。いいもん見せてもらったぜ。」
そう言うとローガンは嬉しそうな顔で俺とミアをさっさと追い出した。
圭人:「いいのか?自分の分は払うって言ってたのにこんな簡単に追い出されて。」
ミア:「いいんだ、ローガンのあの嬉しそうな顔見たでしょ?あんな顔滅多にしないんだ。そこに水を指す訳にはいかない。」
ミアも嬉しそうにそう言った。
ミア:「さて、日が暮れそうだ。早くギルドに行こう。」
そう言うとギルドに向け歩き出した。
少し歩くとかなり大きな、立派な建物が見えてきた。
おそらくあれがギルドだろう。
ミア:「着いたぞ。ギルドだ。」
圭人:「これがギルド…デカイな…」
ミア:「この街で1番大きな建物だからな。」
圭人:「そうだ、ブラックウルフの毛皮。先に受けとってくれ。」
ミアは周りを見渡し、誰もいないことを確認する。
ミア:「そうだったな。アイテムボックスからアイテムが出てくるのを見るのは初めてだからな、楽しみだ。」
圭人:「アイテムボックス」
さてどうやって出すのか。
試しに手で操作してみるか。…出来た。
ブラックウルフの毛皮×31を選択
目の前にブラックウルフの毛皮がドサッと落ちる。
ミア:「なるほど、こうやって出てくるのか。ふむふむ………多くないか?」
圭人:「いやぁ、とりあえず入ってた31個全て出したんだけど。」
ミア:「私はアイテムボックスなんて持ってないんだ。こんな量持てない!」
と毛皮を数えだし、11枚を手に取る。
ミア:「残りの20個はケイトにやる!いや、むしろ貰ってくれ!持てない!」
圭人:「そういうことなら分かった。ありがたく貰うよ。」
ギルドの中で渡そうとも思ったが誰かに見れても面倒だ。ありがたく貰っておこう。
2人でギルドの中に入る。
中は広かった。入って目の前には受付、クエスト受注、達成報告。採取物など項目に分けられているカウンター。
クエストボードやパーティを募集しているグループ。座って談笑してるパーティもいる。
そして2階もある。2階はかなり騒いでいるな。おそらくクエスト終わりに2階で飲食ができるようになってるのだろう。
ミア:「そしたらケイト。私は依頼達成報告をしてくるから、受付で登録をしてくるといい。」
圭人:「わかった。ありがとう。」
そういってミアは達成報告をしに行った。
俺は…登録だったな。
受付へ行く。
受付:「初めまして!ギルドへの登録でいいですか?」
圭人:「あぁ、登録をしたい。よろしく頼む。」
受付:「分かりました!ではこちらの水晶に手をかざしてください!犯罪歴などある方はギルドへの登録は出来ませんので!」
圭人:「わかった。」
水晶に手をかざす。白く光った。
受付:「はい!大丈夫ですね!ではギルドへの登録の為こちらの紙にお名前と年齢、職業の記載をお願いします!」
不思議だ。この世界の文字は全くと言って知らないはずなのに。全て日本語に変換され、読める。
名前…ケイト・イチムラ
年齢…16
職業…魔法使いでいいか。
受付:「ケイトさんですね!わぁ、16歳で魔法使いですか。大変だとは思いますが、頑張ってくださいね。」
言っている意味がよく分からなかったがとりあえずいいか。
圭人:「これでギルドの登録はもう出来るのか?」
受付:「いえ、ギルドへの登録は実技試験を受けていただいてからになります。」
圭人:「実技試験?」
受付:「はい。試験官と模擬戦を行って頂きます。」
模擬戦か…対人で俺は戦えるのだろうか。
圭人:「わかった。俺はすぐにでも試験を受けられるが試験官は?」
受付:「少し待ってくださいねー。多分すぐ来るので…。あっ、先に言っておきますが試験官と戦ってどれだけ惨めに負けても辞めないでくださいね?魔法使いの方は登録に来ただけでみんな辞めてしまうので…」
圭人:「…?どういうことだ?」
???:「おう、お前か。ギルドに登録しに来た魔法使いってのは。」
圭人:「ケイトだ。よろしく頼むよ。」
???:「アギルだ。」
ミア:「そうだった…魔法使いの試験官はアギルだった…。私でギリギリ勝てる程の相手だ。しかも容赦ない。ケイト、折れるなよ…」
『鑑定』
アギル 種族 人
Lv340
HP…1020
攻撃力…900
防御力…100
回復力…50/m
魔法耐性…40
攻撃魔力…5
受付:「アギルさん。ほんとに新人の子を辞めさせるまでやるのやめてくださいよ。このギルドでミアさんと2人しか居ないAランク冒険者に新人が叶うわけないんですから。」
圭人:「Aランク…」
アギル:「それは約束できねぇな。俺なりの優しさってやつだぜ?実力もねえのにギルドに登録しに来る死にたがりばっかだからよ。とことん痛めつけて厳しい世界を教えてるだけだよ。」
……こいつの言い方にカチンときた。
何が優しさだ。確かに最初は厳しくて採取クエストとかになっても少しづつ成長してモンスターとかを倒せるようになっていくんだ。
最初からまともに戦える人間なんていない。
こいつが辞めさせた人の中にほんとに優秀な人が居たかもしれない。そう考えると腹が立つ。
アギル:「それじゃあケートとやら。地下に訓練所があるから、来な。先行ってるぜ。」
そう言うとアギルは受付横の階段を降りていった。
受付:「試験が始まったら無理しないで棄権していいですからね。Gランク相当の実力があれば棄権しても試験には合格出来ますから。」
圭人:「ありがとう。その優しさに感謝するよ。それじゃ、アイツぶっ飛ばしてくる。」
そういって俺も階段を降りる
受付:「お気をつけて……えっ?」
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