第3話 圭人、ステータスの常識を知る
エルフの女:「名前はミア。エルフ……と言えばわかるだろうか。」
圭人:「エルフ…とは何ですか?」
俺は知らないフリをする。
なぜなら、俺はこの世界の常識など知らない。
せっかく会えた彼女にこの世界の常識を教わる為、何も知らないことを装う必要がある。
ミア:「…!? エルフを知らないとは、君は一体どんな教育を受けたんだ。」
圭人:「僕もよくわからないんです。気付いたらこの森にいて。。」
ミア:「どういうことだ?…あくまでこれは予想だが、この森にいる最中に記憶喪失にでもなったのかもしれないな。」
圭人:「そう…なんですかね。一応名前と年齢は覚えているんですけど、それ以外のことは何も分からなくて…」
彼女が記憶喪失という言葉を出してくれて助かった。
異世界から来たなんて知られたらどうなるか分からない。
今は記憶喪失ということでこの世界のことを教えてもらおう。
圭人:「名前は市村圭人。16歳です。」
ミア:「イ…チム…ラケイト…?ここらでは聞かない名前だ。変わった名前なんだな。」
圭人:「よければケイトって呼んでください。その方が言いやすいと思うので。」
ミア:「ケイトだな、分かった。ところで…1ついいか?」
圭人:「なんでしょう?」
ミア:「敬語はこの世界では辞めておいた方がいい。ギルドの輩共に舐められるぞ。」
圭人:「そうですか…あ、いや。そ、そうなんだな。」
ミア:「それと自信を持って堂々と喋るんだ。」
圭人:「…分かった。こんなんでいいか?」
ミア:「そんな感じで大丈夫だ。それと、ケイトは記憶喪失なんだよな…ここで会ったのも何かの縁だ。近くの村までならタダで!護衛してやるぞ。」
圭人:「いいのか?正直俺としてはこの世界の常識なんかも全て忘れてしまっているようだし、よければ護衛と同時にこの世界の常識について教えてくれないか。」
ミア:「んー、正直追加料金を取りたいくらいだがいいだろう。そのくらいなら教えてやる。」
圭人:「ありがとう。助かるよ。今度恩返しをさせてくれ。」
ミア:「ブラックウルフにすらやられそうになってたケイトに返せるものがあるのか分からないが期待しないで待っておくよ。」
そういってミアはクスッと笑った。
その笑顔を僕はこれからも忘れることはない。
なぜなら…ものすごく可愛かったからだ。
圭人:「そ、そういえば!ブラックウルフは?まさか全て倒したとか…」
ミア:「ああ、全て倒した。ブラックウルフ初心者用のモンスターだからな。いくら束になられても負ける気はしないよ。」
圭人:「…!?あ、ありがとう。あんたは命の恩人だ。」
ミア:「気にしないでくれ。あのくらい造作もない。」
言葉とは裏腹に、少し照れているようだ。
命の恩人にこんな感情を持つのは間違っているのかもしれないが、可愛い。とても可愛い。
ミア:「さて、ここで長話をしていてもまた日が暮れる。続きは歩きながらにしよう。」
圭人:「そ、そうだな。よろしく頼むよ。」
そういって彼女と僕は太陽の方向に歩き始めた。
圭人:「1つ聞いてもいいか?」
ミア:「なんだ?」
圭人:「ミアはどうしてあの森にいて俺の事を助けられたんだ?」
ミア:「あぁ、あの森にはギルドの依頼で毒消しの草を採取しに行ってたんだ。思ってた以上に時間がかかってね。」
ミア:「採取が終わったと同時に、誰かの叫び声のようなものが聞こえてきてな。急いで助けに行こうとしたんだが中々見つからずに気付いたら辺りは真っ暗。
どうしたもんかと思っていた矢先に物凄い光が君のいた方向から見えてな。見に行くとケイトがブラックウルフに殺されかけていた。とまぁこんなところだ。」
圭人:「なるほどな、恐らく叫び声も俺だな。恥ずかしながら記憶を失いポツンと森の中に取り残された状況に絶望して叫び、泣き崩れていたんだ。」
ミア:「ハッハッハッ!ま、その叫び声のおかげで私はケイトの近くに寄ることが出来た。その結果ケイトをすぐに助けられた。それでいいじゃないか。」
圭人:「ミア、本当にありがとう。」
泣き崩れるなんて男としては後悔しかない。
しかしその結果命が助かったとあっては恥ずかしがらず、あの時の自分に感謝するしかない。
しばらくまた歩くと俺はステータスのことを思い出した。
圭人:「そういえば…ステータスって平均どのくらいの数値が普通なんだ?」
ミア:「ステータスのことは覚えてるんだな。それなら話は早い。特別に私のステータスを見せてやる。
普通、人には見せないんだが。これに関しては見せた方が早いだろう。」
そう言うとミアは自身のステータスを見せてきた。
これって他の人のウィンドウ見れるんだな。
ミア 種族エルフ 20歳
LV…321
HP…660
攻撃力…520
防御力…200
回復力…30/m
魔法耐性…70
攻撃魔力…300
うん?思ってたよりも俺のステータスはやばいのかもしれない。
そしてなんだ、このLVというのは。
僕にそんな表示は無い。
ミア:「これでも私、ここらの村や街では強い方でな。」
圭人「そんな奴に助けてもらったのか俺は。運が良かった。…このLVってなんだ?俺にはないみたいだ。」
ミア:「まさか!記憶と同時にレベルも失ったのか!?これはレベル。モンスターを倒すと経験値が手に入りレベルが上がる。LVが無いのはケイトがモンスターを記憶喪失後1度も倒していないのが原因だ。
しかしLVが無いのは後々厄介だ。1くらい上げておこう。」
圭人:「俺、戦闘なんて出来るのかな…」
ミア:「まあ、やってみな!ちょうどあそこにゴブリンが見える。危なそうなら必ず私が助けるからさ!」
正直怖いがこの世界で生きていくためだ。
慣れるしかない。
圭人:「わかった。覚悟決めるよ」
僕はゴブリンに向かって歩き始める。
するとゴブリンは僕にすぐ気付いたようだ。
すぐに臨戦態勢に入るゴブリン。
僕は恐怖から足がすくんでしまい、その場から動けなくなった。
ミア:「あっ、アイツ。武器とかないのか!?このままじゃまずい!」
後ろからミアが僕に向かって走ってくる。
これは相当まずい状況のようだ。
僕が一瞬後ろのミアに気を取られ、前を向いた瞬間僕は今の状況がとても危険だということに気付かされる。
なぜならミアが確実に間に合わないからだ。
ゴブリンはもう目と鼻の先で鋭い爪を携えた腕を振り降ろそうとしている。
やられる…!
ゴブリンの腕が振り下ろされる。
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