第2話 最初に出会ったのはエルフでした

あれから少し時間が経った。

僕はアテもなく太陽の方向にただひたすら、歩いていた。


幸いなのかは分からないが、水は魔法で出せるので困っていない。

だがしかし、1つだけ問題がある。

「ウォーター。」

目の前に数十リットルはありそうな水が一気に出てくる。

「はぁ…魔力制御とかないのかな。」

よく異世界転生物では初めて魔法を使う際、自身に流れる魔力を感じる所から始めるものだと思うのだが…。

「何故か僕は唱えるだけで魔法が使えてしまうみたいだ。」


「これがこの世界の常識なのかは分からないけど…分からないことを考えても仕方ない。」


「とりあえず…腹減ったー!!!」

腹の底から大声を出した。この世界に来て始めてこんな大声を出した。


すると…ザワザワと周りの草木が揺れ始める。

「さっきまで静かだったのに。」

急に喪失感を覚え始めた。

先程まで静かで考え事にふけっていた。

今後どう生きていくか考えてたら喪失感なんてものは感じなかったのだ。

しかし草気が揺れ物音がすると、物音が気になってしまい急に我に返るのだ。

これから1人という事実。家族も友達も、兄弟もいない。

涙が出てくる。僕はしばらく、その場で泣き崩れたまま動けなかった。


…かなり時間が経っただろうか。

泣き崩れていた僕は時間なんて忘れていた。

先程まで明るかった空が暗くなり、周りは何も見えない漆黒の闇に変わっていた。

今日は新月か、月明かりもない。

怖い。そこに自分が存在しているのかも分からない。


しかしなぜだ。真っ暗なその空間が落ち着く。

「僕は根っからの陰キャだからかな。暗いところで1人の方が落ち着くや。」

クスッと笑い、泣き崩れていたとは思えないほど気持ちが落ち着く。

冷静になり今はどうすべきか、自然と頭に浮かぶ。

「落ち葉や枝を集めて、火を起こそう。」

そう考えると暗がりの中、地面を這いながら手にあたる枝や葉を集めて回った。


『スキル発動。危険察知』

「うわああ!」

びっくりした。無我夢中で枝葉を集めていたからだ。

「え、危険察知?野生動物でもいるのかな」

野生動物が居たとしても暗闇で何も見えない。

明るくできる魔法がないかとウィンドウを開く。

『火属性魔法 ファイアボール』

山火事になりかねない。ダメだ。

集めた枝葉を燃やすか。まだ全然集まってない。ダメだ。

『光属性魔法 ライトボール』

「これだ!ライトボール!」

目の前に光の玉が現れ周囲を明るく照らす。

「はぁ…見なければ良かった…」

オオカミだ。1匹や2匹じゃない。群れだ。

囲まれている。しかし何故だか冷静だ。

『鑑定』

「これは便利だ、勝手に鑑定してくれるのか。」

『ブラックウルフ HP 30』

「あれ…?HPが…」

「鑑定にもバグとかあるのかな」

そんなことを言っていると1匹のブラックウルフが僕に向かって走ってきた。

完全に獲物だと思われてる。

一瞬で距離を詰められる。平和な国で生きてきた僕は直ぐには反応出来なかった。

「うわああああああ!!!」

死んだ。ふとそう思った

「僕の異世界ライフも短かったなぁ」

「………あれ。」

僕は生きている。そして目の前には青髪の女の…子??

この世界で初めて人を見た僕は安心したのか、泣き疲れているのかまだ危機的状況だと言うことも忘れて気を失った。


圭人: 「ん…あれ。俺は…」

木々を揺らす程の強い風の音で僕は目を覚ました。

外が明るい。僕はどうしたんだろう。

「昨日は…はっ!!ブラックウルフは!!」

???: 「やっと目を覚ましたみたいね」


圭人:「だ、誰ですか!!」

起き上がった僕の2m程先に彼女は座っていた。

青髪で整った顔立ち。耳が長く尖っている。

僕は知っている。これはエルフだ。

異世界に来て初めて会ったのが異世界好きの憧れ。エルフだなんて。しかし僕は警戒する。

僕の知ってる物語のエルフと言えば人種族に対して敵対心を持っている。


エルフの女:「そう警戒しないでくれ。私は君を取って食ったり殺したりなんかしない。」


エルフの女:「名前はミア。エルフ…と言えば分かるだろうか。」



3話に続く




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