第6話「熱」
まず学校に行くために、一旦役所まで進む。
窓を見ると、アクア村長が机に……あ、周りの子昨日と違うわ。
とりあえず、いつも通り仕事をしているのを眺めながら、
南へ向かう。
「えっと、こっちか」
すると、石造りの結構でかめな建物が目に入った。
門があるし、長い構造だしで、学校っぽい。
玄関まで向かうと、廊下を歩く教員がこちらに気づいて、
出てきてくれた。
「貴女方は確か……パールさんに、マリンちゃんでしたね。
どうされたんですか?」
「マリンをここに通わせたいんですけど、
転生者でも学校って通えますかね」
「多分いけますけど、その手続を受け付けているのは村長ですね。
ここは村が直接管理しているので」
「分かりました。ありがとうございます」
「いえいえ、こちらも登校を楽しみにしてますね」
というわけで、役所まで戻って、村長の机の前まで来た。
村長の周りにいた子達はどこかに行っちゃった。
「おぉ、お二人さんじゃないか。何か用か?」
「マリンを学校に通わせたいんです。
義務教育も終えないままこっちにきたし、
同年代の交友関係も持ってほしいので」
マリンの賢さなら知識も教養も
自分で身につけていきそうな気はする。
でも、学びだけが学校じゃないよね。
こういう可愛い子だらけの集団なら特に。
可愛すぎる子供たちといっしょに過ごすとか、
絶対楽しいじゃん。
てか、私も通いてぇなぁ。
「分かった。手続きは数日で終わる」
「ありがとうございます!
あ、登校までに用意するものって何がありますかね」
「特に何も。備品は全てこちらが無償で用意することになっている」
「え、なんて親切」
でもその費用ってどっから出てるんだろ。
税金とかのシステムあんのかなここ。
「ただ、基本的な文具と鞄は例外だ。
各家庭の個性の見せ所でもあるから、自由に選んでくれ」
「ねぇ、ランドセル何色にする?」
マリンに聞くと、以外な答えが返ってくる。
「白」
「え、何で?」
「お姉ちゃんの色」
「あぁ、そういう……
でも白って汚れ目立ちそうじゃない?
貴女に合わせるなら無難に黒か青だと思うけど」
「じゃあ、青」
「決まりだね」
「……らんどせる、とは?」
あ、村長知らない?じゃあこっちには無いんだ。
……あれ、無いってことは、買えない?
どうしよう。一応描きまくってたし、
資料も大量に集めて見てたから、
構造は頭に入ってるけど。
革職人見つけて似たようなの作ってもらう?
「えっと……こんな感じの、後ろに背負う鞄です」
適当な紙とペンを借りて、三面図を描いた。
「前世では学校に通う児童たちはみんなこれを使ってたんです」
「……なるほど」
んで、横の絵に試しにマリンを付け足して背負ってる絵にする。
「背負うとこんな感じ」
「かなり、可愛いな」
「そうでしょうそうでしょう!!!」
さすが村長、一目でこの聖具の素晴らしさを理解した。
「私達はこれに親しんでるので、できれば作りたいんですが、
村に革を扱ってるとこってあります?」
「あるな。普通の手提げより複雑に見えるが、
オーダーメイドであれば可能だろう」
「おぉ、どこですか?」
「学校の門を出てから右に進んでいった先だな。
バッグやアクセサリを売っている店が見つかるはずだ」
「分かりました」
「……そういえば一つ思い出したのだが、
己の魔法の確認は済んだか?」
「あ、忘れてた」
昨日の集会の後はマリンに心打たれちゃって、
魔法のことは頭から抜けちゃってた。
「お二人が良ければ、今から行かないか?」
「いいですよ」「僕も、調べてみたい」
というわけで三人で魔法店とやらに向かった。
何を売ってるのか想像がつかない。
バッグの店への道の途中に、魔法店があった。
ガラスの奥に綺羅びやかな品々があって、
お馴染みの異世界感をダイレクトに醸し出してる。
「着いたな」
店に入ると、その感覚はより強まる。
いかにも動植物由来らしい道具類、
緻密な装飾がされた巻物や本が値札と一緒に犇く。
「んぉ、村長に、パールちゃんに、マリンちゃんじゃん。
おはよ~」
「おはよう、マリー。
今から二人の識別を頼めるか?
あと、魔法の基礎も教えてやってほしい」
カウンターで掃除や機材の手入れをしていたのは、
ところどころ跳ねた黄色い長髪の人。
ベースの服は暗めのローブで、フードも被っている。
頭から手の先まで、様々な装飾品や魔法具らしき品をつけていて、
異郷のマニアックな品を扱う商人って感じがすごい。
「それならお安い御用だよぉ。
あんたらの資質はただもんじゃないって
あたしの目と勘も囁いてきてるしぃ」
ぬるぬるした口調を続けながら、カウンターの下から何か取り出した。
手より少し大きいくらいの正方形の板で、
上部にはインジケーターが複数ある。
それが調べるための道具?
「ほら、手ぇ置いて。掌から指ん腹まで、べたぁって」
「は、はい……」
まずは私から。
「んぅっとぉ……
第一形質「剿滅」、第二形質「守護」、精神は「愛」……
平均魔力総量は……九九九・九……うそ、収まんないじゃん。
レンジ変えて……二六八〇……二六八〇?
うわ、ぶっちぎりの新記録……」
「マリー、二六八〇、と言ったか?
……故障でないのなら、予想以上にとんでもない値だな」
基準が分からんから、どう反応すればいいのか……
「どれくらいすごいんです?」
「普通がだいたい五百~六百、七百~八百で優秀、
九百以上でエリート中のエリートだよぉ。
ちなみに村でトップクラスの村長は九七一」
「……じゃあ、外れ値も良いところだと」
「そのとぉりぃ」
インジケーターの表示を深く見ていきながら、
マリーは話を続ける。
「そんでぇ、形質や精神もかなりアツいねぇ」
「それって何なんです?」
「雑に言やぁどんな魔法かって感じ。
「剿滅」は攻撃特化、「守護」は防御特化。
「愛」は誰かのためを想うと魔力が増幅される」
「攻守が揃ったバランス型ってことですか?」
「ん~、今はそれでいいよぉ」
奇抜な能力じゃなくて、スペックで勝負するタイプ。
物語だと意外とこういうのが厄介だったりするし、
ガチャゲーだと一時期環境を築いた後インフレに飲まれそう。
「じゃあ、次マリンちゃんおいでぇ」
続いてマリンが板の上に手を置いた。
「第一形質「解析」、第二形質「騎士」、精神は「癒やし」……
こりゃぁまた珍しい組み合わせ……
んで、平均総量は五六三っと」
「強いの?」
「「解析」は生命・物体・環境の情報とかを見る偵察、
「騎士」は攻撃を引き受けて自他を守る盾役、
「癒やし」は回復系魔法を燃費良く使えるって感じかなぁ。
使いようによっては大いに役に立つし、替えも利かないねぇ。
ちゃんと魔法を学べば唯一無二の魔法使いになれるよ?」
「おー」
表情からも溢れ出すわくわく。
見るからにサポートタンクだけど、
賢くて優しいマリンらしいと言える。
「マリンちゃんが敵の弱点や行動を解析して、
パールちゃんが高火力で敵を灰にする連携が王道でかなり強力だよねぇ。
そこに村長の回復と遠距離攻撃でバックアップもつけばさらに盤石に……」
「おいおい、まだ形質しか見てないだろうに。
相変わらず妄想の達者な奴だな。
実際にどういう魔法を主力にしてどんな連携をするかは
これから試行錯誤を重ねないと」
「えぇえぇその通りですねぇ。
では村の外れの訓練場にいきましょう」
マリーが店を一旦閉めて、
言われるまま四人で訓練場へと向かった。
順調に私達の訓練が進んでくれるとありがたいけど。
歩いている途中、ふと浮かんだ疑問を投げかける。
「形質ってどれくらい種類あるんですか?」
「パールちゃんもそれ聞くんだぁ。
あたしから言えるのは言葉と心の数だけ存在するってことかなぁ。
どう名付けるかは識別装置とあたしの解釈に委ねられるのでぇ。
例えば貴女の「剿滅」と似たやつに「破壊」「覇者」とかがあるよぉ」
「それってどれくらい違うんですか?」
「言葉のように使い方や目的にニュアンスや癖の差があるくらいで、
ほとんど同じと思ってもらって結構。
どれも相手を制圧することが第一なのは共通してるしぃ」
「へぇ……」
訓練場について、村長が管理者に指示を出して、
十五メートル程先に適当な的をセットさせた。
「じゃあパールさん、試しにあれに攻撃してみてくれ」
「え?どうやって魔法を出せば良いんですか?」
「心が貯蔵している魔力への感覚を手繰り寄せて掴むんだ。
こればっかりは各々の感覚で身につけるしかない。
手を前に掲げて、胸の奥を見続けて、力を引きずり出せ」
「………………」
ん~~~~……ダメだ、分かんない。
「ちょっと、いいですかなぁ?」
マリーが私の後ろにくっつくように立って、それから――
「っ!?」
脇から手を中に突っ込んで、急に胸を鷲掴みにしてきた。
一気に身体が火照って、強張る。
「ちょ、どこ触ってっ!!!」
「そう!その恥じらいと動揺!!
揺らいだ心から零れた魔力を捉えてぇ!!」
「んぅ、んううぅ……!」
闇雲に意識と力を集中させた刹那、
胸の奥から手まで、淡い熱が繋がった。
私の手の先からは、迸る炎が噴き出した。
その光景をみた村長も、感心しつつ次の指示を投げてきた。
「よし、魔力は掴んだな。
次はそれを魔弾の形に成形して、放て」
「は、はい……!」
垂れ流すままの魔力を操って、球形に固める。
そして、追加で魔力を発射するための力に変換して、
固めた炎弾を撃つ。
銃弾のような初速とともに私の手を離れた炎は、
見事に的を粉々にし、焦がすことができた。
「おぉ!やるな!」「お姉ちゃんすごい」
「あの、もう放してくれませんかぁ!!
完全に味わってる手つきじゃないっすかそれぇ!!!」
「おっとごめん、感触と反応が良くてつい、
へへへ、可愛い……」
前世でおっさんおばさんにされたら即通報だけど、
今は不思議とそこまで悪い気分じゃない。
もちろん、突然触られた驚きはあるけど。
やっぱり可愛さは不幸を滅してくれる。
「お姉ちゃん顔ぽかぽか」
「マリン、や、見ないで……」
「まぁ、僕に触られたらもっと赤くなるけど」
「い、言わないでよぉ」
マリーがもっとニヤニヤした顔でこちらを見てくる。
「おぉ、流石は家族……
姉妹で留めるにはもったいないほどに
お似合いですなぁ……」
「もう誂わないでください!んで次は何するんですかぁ!?」
「……え、終わりだけど」
「……はい?」
「魔力の使い方はおっけーだから、後は自分で練習してねぇ。
それか、似た形質の魔法を使う人に聞いてみるとか。
村長の第二形質なら一応いけそぉ?」
最低限、という感じで村長は返事をした。
「マリンちゃんは「解析」持ちなくらい頭がいいんだからぁ、
見ただけでもう分かるんじゃなぁい?」
「……なんとなくは」
え、マリンすごいな。
見ただけで分かっちゃうんだ。
私なんか
無理だったのに。
「試しに何か見てみぃ?」
「……マリーお姉ちゃんの弱点は、お腹と首筋。
舐めながらスリスリされるのが好きでしょ」
「うおっ、当たってるぅ……使いこなしてるねぇ」
そんな、弱点とか、分かっちゃうんだ。
……私の弱いところってどこなんだろう。
自分も知らないことを勝手に知られちゃって、
それから不意にマリンにそこを責められて……
うあぁ、ダメ、深く考えちゃいけない。
あと、マリーは女だった。
「んじゃ、基礎は大丈夫そうだから、
もう自由にしてもらっていいですよぉ。
いやぁ有望な魔法使いが増えてくれて嬉しいねぇ」
「全くだな。
気になることがあれば何時でもマリーに聞きに行くといい。
図書館で書籍を漁ってみるのもいいぞ」
「分かりました、必要になったらまた来ます」「どうも」
別れの言葉の後、私達は訓練場を出て、
家具店まで進んだ。
ローズさんの店の西に二つ隣だから……ここか。
全体的に白い壁が占めている、モダンな外装。
ドアを開くと、木材のいい匂いが広がる。
入った瞬間から椅子や机だったりの様々な家具が
明るい照明の下に展示されているのが目に入る。
「あっいらっしゃいませ~!」
店内のように明るい声で迎えてくれたのは、
木屑のついたエプロンとツールベルトを着た
レッドオレンジのツインテールで猫耳尻尾の子。
背はマリンよりもちっちゃくて、頭頂部が私の胸くらいしかない。
つまり百センチ切ってる。そんな究極のボディに、
コーラルちゃんみたいな輝かしい微笑み。
私の身体は勝手に、両手を顔に持ってきていた。
「お、おぉ……」
ワタシ、チッチャイケモミミゲンキッコ、スキ。
「どのような製品をお求めでしょうか?」
うわ、やっば、
あまりにも「刺さった」もんだからIQが下がってた。
にしても、敬語職人猫耳ツインテ幼児って……
属性盛りすぎじゃあありませんこと?
「えっえっと、絵を飾るためのフレームが欲しくて、
大きさはこれくらいの……」
「それならこちらにありますよ~」
案内された方を向くと、いい感じの商品が並んでた。
マリンと話し合っても一つに決めれなかったので、
オーソドックスな写真立てタイプと
ガラスでできたタイプを選んだ。
「五六八〇マルスです~」
「これでお願いします」
手に入れたばかりの万札で支払う。
「はい、少々お待ちくださ~い」
カウンターまで走って、お釣りを取って戻ってきた。
いちいち猫耳と尻尾が揺れるのもまたいい。
「四三二〇マルスのお釣りです~」
「どうも。……」
照明に照らされて、オレンジの髪と毛が輝く。
その耳、とってもふわふわなんだろうなぁ。
「どうかしましたか?」
気づけば貰ったお釣りを押し付けていた。
「あの、これも払うので頭撫でさせてもらえませんか?」
「え~?当店はそのようなサービスは提供してませんけど~?」
「そ、そこを何とか!」
もしかして、かなりガード固めな子?
まぁこんだけ住人居るならそういう子が居ても……
「そうじゃなくて、契約するようなサービスじゃないから、
お代要らないですよ?」
「ほ、ほんとに?」
そうでもなかった。
「私目当てのお客様もたくさんいますから、
こういうのは慣れてます。
ほら、好きなだけ触ってください」
「あ、ありがとうございます!」「あの、僕も……」
マリンも実は興味津々だったようで、
同じように恐る恐る触っていいか聞いた。
そっちも店員は快く許してくれた。
「じゃあ、行きますよ……」
手を頭頂部に置くと、フィグ人の匂いに加えて、
猫らしい香ばしさが舞い上がった。
そのまま耳や髪の感触をじっくり楽しみつつ、
頭から頬にすべらせて、もちもちほっぺを堪能する。
初対面だというのに、まるで長い間飼ってるペットみたいに
私達の手に身体を委ねてくれる。
家具店でこんなにも貴重な満足感を得られるとは予想だにしなかった。
「にゃうぅ~お客様上手いですねぇ……猫飼ってらっしゃるんですかぁ」
「い、いえ、飼ってはないですけど……猫カフェだったり
ペットショップにはよく行ってました」
「猫……カフェ?」
「前世には猫と交流できる喫茶店があって」
「へ~、そのような素晴らしいビジネスモデルが……
んぁ、前世?もしかして貴女達が噂のパールさんとマリンさん?」
「は、はい、そうです、パールです」「初めまして、マリン、です」
店員をもみくちゃにしながら、自己紹介。
うん、やっぱり集会に来てない、本当の初対面だった。
多分家具作るので忙しかったんだろうなぁ。
「んにゃ、わたしは、んぅ……メープルと申しますぅ」
「おぉ、まさに紅葉みたいなレッドオレンジ」
「葉っぱと違って、みぅ、年中紅いですけどにぇ~」
……よし、そろそろ止めよう。
今を逃せば歯止めが効かなくなる。
村を回るのを断念したとしても、
まだランドセルの注文が残ってるし。
「あれ、他のところは触らないんですか?」
「他?何を言って……」
「みんなスキンシップを終える時のシメは、
大抵おっぱい、お腹、お股、お尻、太もものどれかにするんですよ」
「……」
何面食らってんの私。
いい加減慣れてきても良いだろうに。
コーラルちゃんやローズさんでこういうのはもう
フィグ人の文化だって、学習できてるはず。
「い、いえ、今日はこのへんで」
「
我慢は身体によくないですよ?」
「ふぇ!?や、それは」
私に足でホールドしつつ飛び乗って、眼の前まで顔を近づけて、
挑発的な表情と声をぶつけてくる。
マリンも驚いて、目を見開いた。
「ぜぇんぶバレバレですよぉっ?表情筋よわよわ♡
こんな初対面で接客しただけのぉ、ちっちゃい子にぃ、
は・つ・じょ・おっ、しちゃうなんて、
おねーさんはぁ、どうしようもない変態さん、なんですねぇ~???」
……まさか、まだ手札を隠し持っていたなんて。
しかも無邪気キャラと切り替えるなんていう
離れ業まで見せてきた。
「露出してるならまだムラムラするの分かりますよ~?
でも、今の私全然肌出てない作業着なんですよねぇ。
こんな厚手でライン出ない服から身体を妄想できるなんて、
どんだけ普段から変な事考えてるんですかぁ?キモすぎ♡」
すごい、お手本のようなムーブ……この村専門学校でもあるのかな。
ちなみに私はそのまま負ける派。
分からせが地雷って程ではないけど、幼女様の上に立つよりも、
幼女様の奴隷になったほうがずっと存在価値を感じられるんだよね。
薄い本も題材にしたときはそっちしか描かなかった。
「うわっ、もしかして、罵られるともっとコーフンしちゃうタイプ?
おねーさんほんと終わってますね♡」
「……」
「まぁ見るからにそっち系のオーラはぁ、出てましたけど?
ここまで一方的にされるがままなんて、
前世にプライド置いてきちゃったんですかぁ??」
「……」
「初回であんまりいぢめるのもカワイソーだから、
今日はこれくらいにしといてあげます♡
ま、私の事大好きなクソザコおねーさんのことだから
明日も、明後日も、明々後日もぉ、来てくれますよね?
接客もこれでしてあげますよぉ?」
メープルちゃんの見事な台詞回しに
感心しつつも焦燥しきっていた私は、
小さく頷くことしかできなかった。
「やったー!新しい常連様ゲットですね♡」
両手でそのまま顔を抱きしめられて、
無理やり胸を押し付けられる。
憎いことに、メープルちゃんの匂いも感触も最上のものだった。
マリンはメープルちゃんを睨みつけていた。
多分これは妬いてる系のやつ。
「おっと、これ以上は流石にやばいですねぇ」
「……お姉ちゃんへの僕の好きのほうがずっとずっと大きい」
「お~、純愛ですねぇ?
大事にしてくださいよ、おねーさん♡」
……言われなくても。
マリンもどう反撃するかと思えば、
こんな張り合いをしてくれるなんて。
なんとか私もお姉ちゃんとしての正気を取り戻せた。
「……とりあえず、欲しい物は買えたので帰ります」
「またのご来店お待ちしてまーす♡」
メープルちゃんに加熱された身体も顔も冷めやらぬまま、
私達は店を出た。
今まで以上に、マリンは私に強く抱きついてきた。
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