(三)-5

「だから、あなたは黙っていなさい!」

「ねえ、マキちゃん、何か言ってよ」

 つぐみに入室を阻止されているが、あまり背の高くないつぐみの肩越しに男が言った。

「その……、ゴメンナサイ!」

 マキは、そう言って深々とお辞儀をした。ともかくも、謝らなくっちゃ。そう考えた結果の言葉であった。

 それを聞いた男は、驚いた表情になった。しかし、五秒ほどでその表情は失意に歪んだ。

「やっぱり……、やっぱりそうだよね……。アイドルだもんね。アイドルはみんなのアイドルだもんね。僕一人のものになんか、なれないよね」


(続く)

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