第3話 サディストの本性

 海乱鬼は私を強く抱きしめた。奴は既に硬く隆起している股間を私の腹に押し付けてくる。やる気満々だ。


「リリィちゃん。服は着たままでいいかな?」

「好きにしてください」

「へへへ」


 ニヤリと笑った海乱鬼は乱暴に私をソファーの上に押し倒して覆いかぶさって来た。コイツは乱暴な行為で興奮する性質のようだ。ならば少しだけ付き合ってやろう。

 海乱鬼は首筋から頬にかけてベロベロと舐めまわしてくるが、私は顔を背けてあからさまに嫌がっている風を装った。


「嫌だ。乱暴にしないで」

「大丈夫だって。痛くはしないから」


 私は体の一部が接触しただけで相手の思考が伝わってくる。コイツが嘘をついているのがすぐにわかった。この男は女性を痛めつけ泣かせて興奮する性癖の持ち主だ。形だけ痛めつて雰囲気を楽しむというレベルではなく、本気で痛い目に遭わせて女を泣かせ、快楽を貪る正真正銘のサディストだったのだ。そういう目的の買春を日常的に行っているだけでなく、薬物を使用したレイプや誘拐監禁の常習者でもあった。

 そしてコイツの好みは未成年者。特に思春期前の、胸が膨らみかけている少女が大好きだったのだ。私を選んだ時点でそうではないかと疑ってはいたが、実際に対面すると酷く幻滅してしまう。


「嫌だ。優しくして」

「大丈夫、大丈夫。痛くしないから」


 今度は私の短いスカートめくりお尻に顔を擦り付けてくる。そして歯を立てて来たので、私はわざと声を上げた。


「痛い。痛いってば!」

「このくらい平気でしょ」

「痛いから止めて」


 海乱鬼は私の嘆願を聞くつもりはないようだ。お尻や太ももに歯を立てて、跡が残るくらい強めに噛みついて来た。そしてパンパンと音を立て、平手で私のお尻を叩いて来た。


「痛い。止めてってば」

「ちょっとくらい我慢してよ。お金はたっぷり払うから」


 金か。私としてはどうでもいい話だ。

 ふと脇を見ると、仁科がマダムの上半身を赤いロープで縛り上げていた。そしてマダムの肩を抱いて奥の寝室へと向かった。


 優しい。女性の扱いに関して、仁科と海乱鬼は全然違う。女性との行為自体を楽しんでいるのが仁科であり、女性を痛めつけて楽しんでいるのが海乱鬼だった。


 マダムが少し羨ましいと思ってしまった。こんな乙女心のようなものが私の心に沸き上がって来るとは違和感しかないが。


「服、破いちゃうよ。マダムの許可は貰ってるから」


 ニヤリと笑った海乱鬼がスカートのすそを両手でつかんでから引き裂いた。そして上着のセーラー服も胸元を掴んで引き裂く。海乱鬼はキャミソールの上から私の貧相な胸にむしゃぶりついて来た。そしてろくに前戯をしないまま、いきり立つアレを突っ込んできたのだ。


「痛い。痛い」


 これは演技ではない。本当に痛みを刻みつけられるセックスだった。

 私は両目に涙を浮かべて……上手く涙が出てきたのは幸いだった……必死に抵抗するふりをした。


 そんな健気な抵抗をする私に対して海乱鬼は更に興奮し、口角に涎を垂れ流しながら腰を必死に振り始めた。


「オラオラ! リリィちゃん感じてる? 俺の大砲の威力、半端ないでしょ? 美味しい? 味わってる?」


 んな訳ない。

 確かに海乱鬼のアレはデカい。しかし、大きければいいってもんじゃない。こうも乱暴に扱われると痛いだけで苦痛だけしか感じない。海乱鬼は私の苦悩した表情に欲情するのだから始末が悪い。


 そして、ここまで体が繋がると心の奥底まで見えてくるのだ。コイツは自分の欲情を満たすために大枚を払う。年に数回、海外へと飛んでいるのは正真正銘の未成年者、子供を抱く為だ。国内でもレイプまがいの乱交パーティを開催していたりもする。問題だらけの男だが、その資金源の方が大問題だった。


 基本的には女を騙し、ホストで吸い上げる。そしてホスト狂となった女を風俗で働かせる。場合によっては海外の買収宿に売り飛ばしたりもする。そして驚いたのは、この男がいわゆるロマンス詐欺の元締めだったって事だ。やり方としては、支配下のパパ活女子に非モテ男性と疑似恋愛関係を構築させる。そのうえで「借金がある。払わないと酷い目にあわされる」などと嘘の情報を信じ込ませ、数百万から数千万をだまし取る手口を常用していのだ。恋愛経験の乏しい男を手玉に取るためのマニュアルを作成し、借金で支配したパパ活女子に詐欺行為を働かせる。そうやって得た資金を自分に上納させていたのだ。


 正に腹黒。救いようのないクズだ。しかし、こんなクズの中のクズだからこそ、極上の獲物なのだから仕方がない。私がこんな事をしている理由はここにある。

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