05
「神谷さん、何て書いてあります?」
「えーと、『平成×年に英星高校合唱部に所属していた方へ』ってなってます」
タップしてみると、これもまたブログらしい。タイトルのすぐ下には鳥居と五十音が書かれた紙――つまり「こっくりさん」だ――の写真が表示されており、私は猛烈な違和感を覚えてぎょっとした。
アイキャッチにしてはちぐはぐだ。学校の校舎とか部室とか、もしくは合唱部らしく音楽に関係のあるものを載せるのが普通ではないだろうか? 女子高の合唱部とこっくりさんに使われる紙、少なくとも私には関連性が見いだせない。
画像の無意味さはいったん置いておくとして、元々のテンプレートをそのまま使用したような、至ってシンプルなブログだった。問題の記事の公開日時は、十年も前の日付になっている。私はシロさんにだけ聞こえるように、小声で文面を読み上げた。
『当時騒がれた合唱部の呪いについて、多くの部員の皆さんは無関係です。
もしも巻き込んでしまっていたら、ごめんなさい。
どうすることもできません。ごめんなさい。
呪いが今どうなっているのかは、言えません。
しかし、万が一あなたのところに、知り合いが、普段とは違うヘラヘラした様子で訪ねてきたらご注意ください。
できれば無視してください。
何か頼まれても、聞かないでください。
そのほか、何かおかしなことがあったら、可能な限りしかるべき人に相談してください。
画像や、この文面に心当たりがある人は、本当に気をつけてください。ごめんなさい』
記事の最後にはメールアドレスが表示されている。アドレス自体はランダムに作成されたような、意味の読み取れない英数字の羅列になっていた。私は例によってそれも小声で読み上げた。
インデックスにはこの記事のタイトルしか表示されていない。ブログ自体のタイトルも『平成×年に〜』と、記事のタイトルそのままのようだ。
「なんか、この記事のためだけに作ったみたいですよ。ブログ」
シロさんにそう説明しながら、私は改めて記事を眺めた。
正直、怪しい。怪しいのだが、なにしろシロさんがピンポイントで指定したページだということが気になる。
「うーん、何だろ……とりあえず何かあったら、このメアドにメールしろってことですかね……」
「そういうことじゃないですかねぇ」
シロさんはそう言うと、私にもう一度メールアドレスを読み上げさせた。何かしらスマホをタップしているなと思っていたら、さっさと例のアドレスにメールを送ってしまったらしい。
「だ、大丈夫ですか? ウィルスとか送られてきません?」
「まぁ〜……そういう感じではないし、大丈夫でしょ!」
そう言いながらシロさんは、三つめのゼリー飲料を取り出して蓋を開ける。三つめ、さすがに多くないか? 本当に大丈夫なのだろうか……?
「そうだ神谷さん、ブログのURLと、ここ作った人の名前教えてください」
シロさんが、思い出したようにそう言った。なるほど、任意で変えられるものなら、手がかりになるかもしれない。
「ああ、それ大事ですね。はい!」
私はブログのトップページに飛んだ。
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