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 あさみさんのお母さんの言葉が、上手く頭の中でつながらなかった。あさみさんが「死んだっていうのにうろうろしている」のはわたしたちのせい――でも「わたしたちのせい」ってどういうことなんだろう。わたしたちのせい、というのは。

「あたしたち、あさみさんが嫌がることをしてるわけじゃありません」

 はーこの声がして、わたしは我に返った。いつの間にかぼんやり考え事をしていたのだ。

「あさみさんはいいって言いますもん。あたしたちのこと手伝ってくれるって。あたしたちだって、あさみさんに悪いことをさせたりしません」

「だから麻美が行くべきところに行けなくても構わないってこと? あなたたちは浅はかよ」

 お母さんはきっぱりとそう言い切って、わたしたちを順番に見た。最初にはーこを見て、次に木田ちゃんを見て、最後にわたしに視線が向いた。

「麻美は普通の子どもじゃありませんでした。私はずいぶん気にかけていたのよ。亡くした姉の生まれ変わりとも思って、大切に育てていたのよ。その娘を亡くした私がどれほど悲しんで落胆したか、あなたたちはわかりますか? その子が安らかに眠れていないと知って、どんな気持ちになったかは?」

 何も答えられなかった。そんなこと急に聞かれたってわからない。わかりようがない。ただわたしたちがとにかく「よくないこと」をしていたのかもしれない――突然生まれた疑念が、ぐんぐん育っていくのはわかった。はーこも木田ちゃんも、何も答えなかった。

「もうずいぶん経ったのよ」

 お母さんはそう言うと、突然目頭を押さえた。冷静そうだったぺったんこの声が、急に震えた。「娘は娘だけど、もう元のあの子ではないのよ。だんだんと変質してきている」

「あさみさんはあさみさんでしょ」

 はーこが突然口を開いた。口調が厳しい。木田ちゃんが慌てて「やめなよ」と止めようとする。争いの気配が漂う。まだ学校に残っていた生徒たちが、遠巻きにこちらを見ているのがわかる。

「麻美は麻美よ、でも元の麻美じゃない。こんなことになってしまったのは、麻美を便利に使っていた子どもたちのせい。あなたたちのせいよ」

「何が悲しいなの。もとはと言えばあんたがいやなことばっかりあさみさんに頼もうとするから、あさみさんは生きていくのがいやになっちゃったんじゃないの? あたし聞いたもの。いやなことを頼まれるって」

「他人のあなたに何がわかるの」

 はーこの言葉にかぶせるように、お母さんが言った。はーこが黙った。

「もう二度と麻美を呼び出さないで」

 決して大きな声ではないのに、ずしんと重かった。

「呼び出したらあなたたち、大変なことになるわよ」

「何勝手なこと言ってんの」

「やめて、はーこ。すみません」

 木田ちゃんがはーこの肩を抱き、お母さんに向かって頭を下げた。

 わたしは黙って立っていた。どうしたらいいかわからない。あさみさんをもう呼び出さないで? どうして? だって、あさみさんはいつだって「いいよ」って言う。わたしたちが言わせたわけじゃない。わたしたちの降霊術に付き合ってくれるのは、あさみさんが望んだことだ。だからわたしたちは悪いことなんかしていない。していないはずだ。

「いい? 麻美をもう一度呼び出したら、大変なことになるからね」

 お母さんはもう一度、念を押すようにゆっくりと言った。

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