第8話

アレンを一人にする訳にはどうにもできなくて、それから半日ほど僕はアレンが目を覚ますまでアレンのそばにいた。

夕日も沈みかけた頃、というか僕は約一ヶ月ぶりに夕日を見た訳なのだが、アレンは目を覚ましたようだった。


「ずっと、私のそばにいたの?君は」

「だとしたら、何か問題でも?流石に唯一の同居人が死にでもしたら、寝心地悪いし‥」

「素直じゃないなぁ、君は‥相変わらず」

「え?今、何か言いました?」

「何でも?まぁ、お礼と言ってはなんだけど少しだけ僕のこと教えてあげる」


そう言ってアレンは何をしているのか教えてくれた。

アレンは毎日、ドラゴンやらゴブリンやらまるでラノベに出てくるような異世界の魔物と戦っていた。おおよそ信じられない内容ではあったが、そもそもこの世界は虚構の上に築かれた砂状の城でなんだよ?と面白おかしく言った。

人はこの世界へきた外来生物で、過去に住んでいた星は氷河に覆われ始め、住めなくなりこの星に来た。しかし、すでにこの星には他の生物が巣食っており人は最先端の技術を駆使してバリケードを作ることにより、他からの侵害を防ぎなんとか暮らしていた。それも束の間、そのバリケードも長くは持たなくなりつつあり、他からの攻撃も通すようになってしまったらしい。

要するに、今まで僕ら人間が温暖化により暑くなってきたと思っていたのはドラゴンがこのバリケードへ向けて炎を吐いていたからであり、コンクリートが溶けるような酸性雨だって他のモンスターが吐き出した酸性の毒だったのだ。それを見かねて、もともとこの星の片隅で細々と己の持つ魔力を頼りになんとか暮らしていた屍者が提案を持ちかける運びとなったらしい。


「話は、、大体はわかった。納得はしてないけど。でも、なんで僕たち人間を助けようと思った訳?アレンにはメリットなんて何もないのに。それに、こうして人間を手助けするようになってアレンの魔力跡?っていうの?それが他のモンスター達に見つかりやすくなって‥むしろ危険になってる。っていうか、今まで人間はいなかったのにどうやって生きてきた訳?人間を食べなきゃ死ぬんじゃないの?」

「別に人間を助けようと思って、助けてる訳じゃないよ。他に目的があったから、そうなる運びとなっただけ。それに、別に僕は人間を食べなきゃ生きられない訳じゃないよ?」

「よく‥分からない‥」

「でも、君は1年後に死ぬ。あぁ、もう1年切ってるね。そこは君の認識で合ってるよ。これでいい?」

「良くはないけど、もういいよ。とりあえずアレンは休んで。」


余計にアレンの謎が深まった気がしたけど、早く頭を整理したくて僕は医務室を出た。

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