第2夜 好きなタイプは?という難問

飲み会も中盤に差し掛かり、お互いの近況や仕事の忙しさだったり、一通り話題が尽きてから、幾度となく投げかけられる「好きなタイプは?」という難問の答えを私は未だに持ち合わせていない。

私ごときの恋愛観なんぞは、恋人の愚痴だとか次の話題の前座に過ぎないのだから、何も一生懸命考える必要はないのだが、酔いが回った頭だと何か変なことを言いそうで、恥ずかしい思いをするか、開き直って冗談めかしてしまうので、シラフのうちに考えておこうと思う。

こういったときには「優しい人」だったり、「メンタルが安定している人」だったり、大前提の条件は必要とされていない。何度もこう言って場をしらけさせた私が言うのだから間違いない。なんというか、そこそこ掘り下げやすくて、万人には当てはまらないような、なおかつオリジナリティが出せて、コイツはそこらのやつとは違うと唸らせるような、そんな答えはないものだろうか。


足りない頭をこねくり回して、小一時間考えた結果、一つの答えがふと浮かんだ。

「言葉のプロレスができる人」はどうだろうか。

元来、私はよからぬことを思いつくと、どうしても言いたくて言いたくてたまらない質だ。黙って聞けばいいとわかっているつもりなのに、思いついたことを言ってしまうから、いつの間にか友人は私に恋愛相談をしなくなった。余計な事を言っているのは十二分にわかっている。それでも私の傍にいる人には私の言うことにいちいち傷ついて欲しくないのだ。

……このままでは私がただただ口が悪くて性格の悪い阿呆だと思われてしまうかもしれないが、ここで大事なのは「プロレス」という点だ。

私は余計な事を言いたいし、言われたいのだ。私の言うことをニコニコと受け入れてくれる聖人は私にはもったいないし、そんなやりとりはなんとも張り合いがない。私のラリアットを受けてから、ちょうどいい威力の逆水平チョップをお見舞いしてほしい。

ここまで考えてレフェリーが待ったをかける。「お前はちょうどいいラリアットをお見舞いできるのか」と。

これは痛い指摘だ。ただただ痛いだけの地味な技は受ける側も気持ちよくないだろう。本当に体が壊れてしまっては長続きもしない。プロレスには派手で痛くないラリアットが求められる。

さらにレフェリーはこう続ける。「お前は相手の逆水平チョップをうまく受けることができるのか」と。

これも痛いところをつかれてしまった。プロレスとは受けの美学だと聞く。思いがけず急所に入ってしまったチョップを受けた私は胸を張って再び立ち上がれるだろうか。相手が気持ちいいようにうまくリアクションをとることができるだろうか。何度か技をかけあって、お互いに満足してまた試合をしようと固い握手を交わすことができるだろうか。挨拶がわりのチョップにうずくまって、そのままリングから降りてしまわないだろうか。

相手に求めるばかりではいけないのだ。相手に見合うだけの人間にならなければならない。こんな当たり前のことに今更気づくくらい、私には経験と鍛錬が足りない。


あれこれ言ってきたが一言にまとめるとこういうことである。

「ちょうどいいラリアットをお見舞いするために、とりあえず腕立て伏せから始めよう」

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深夜の書き散らし(仮) じゅげむ @ju-game

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