④受け取ったメール
新一くんへ
突然、こんなメッセージを送ってごめんなさい。でも、今、どうしても伝えなくちゃいけないことがあって、これを書いています。
多分、きっと、絶対に……新一くんがこのメールを読んでいる頃には、全てが終わっているでしょう。
驚かせちゃったと思う。怖がらせたかもしれない。そんな中でも、新一くんが悲しんでくれていたら……最低だとはわかっているけど、嬉しいなって私は思います。
あなたの幼馴染として生きた十八年間。このメッセージを書いている今、この瞬間だって、私は幸せでした。
物心ついた時から傍に居て、お父さんを亡くした時にわんわん泣いて、それでも「これからは僕が母さんと弟たちを守るんだ」って一生懸命に頑張って、大きく立派になっていくあなたの姿を誰よりも近くで見続けられたことは、何よりの誇りです。
実はね……新一くんと結婚して、家族になれたらいいなって、そう思ってたんだよ。
新一くんがどう思ってたかはわからないけど、あなたと家族になって、子供も産んで、一緒に幸せになれたらいいなって……大好きなあなたと、一緒にこれからの人生を歩んでいけたらいいなって、そう思ってた。
……でもね、もういいんだ。叶わない夢だって、自分でもわかってるから。
こんなに気持ち悪い傷を負った女、あなたに相応しくないもん。
優しい新一くんはそんなの気にしないって言うだろうけど、私が苦しくてつらいから……もう、傍には居られないんだ。
それでも、本当は嬉しかった。新一くんが事故の後で引き籠りになった私をずっと気にかけて、毎日訪ねてきてくれて、本当に嬉しかったよ。
あなたのおかげで、もう一度学校に行こうって思えた。あなたのおかげで、死にたい死にたいって思い続けた日々から抜け出せた。
私が今、感じている幸せは、全部あなたがくれたもの。
だからね……私、決めたんだ。新一くんが幸せになれるなら、なんでもしようって。それが、私にできる唯一の恩返しだって、そう思ったから。
……新一くんが信じてくれるかどうかはわからない。でも、ちゃんと伝えておく必要があると思うから、ここに書くね。
あの日、新一くんが住んでいるアパートが火事になった、あの日の夜……私、見たんだ。
現場に来ていた夕陽くんが、その場から立ち去りながら笑っている姿を。
絶対に、間違いない。あの火事は、夕陽くんが仕組んだものだ。
夕陽くんは、新一くんを殺そうとしてるんだって……そう、思った。
だから殺したの。新一くんの幸せを壊そうとする彼を、そのままにはしておけなかったから。
でも、まだ終わりじゃない。私は責任を持って、最後まで彼に付き合うつもり。
本当にごめんね。こんなこと言われても困るだけだよね。
でも、でもね……最期にあなたに伝えたかったの、私が何を思って、誰を愛していたのかを、あなたに知ってほしかった。
ありがとう。そして、さよなら。
あなたのことを、ずっと想ってる。でも、あなたは私のことなんて忘れて。
それが私の、最後の願いだから。
誰よりも、何よりも、大好きでした。どうかあなたが、幸せな人生を送れますように。
あなたの幼馴染だった、四宮まひるより
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