第43話
3-17
●学長とトランプゲーム
しかし、そうするとこの屋敷の裏手の山裾をくり抜いて、従業員用の建物を作らないとダメか。
そこにサーバーを置く場所と、生体アンドロイドのメンテナンスポッドの部屋を作らないといけないんだろうなぁ。
俺、後々、この拠点に家庭菜園と出来ればだけど露天風呂作りたいんだよな。予算的に大丈夫かな。
まぁ。エツコの時にお世話になった、生体アンドロイドのメーカーに連絡とってみるか。
それから、各自の研究棟の図面と言うかラフ画を書いて、この屋敷を建てた建設業者に見積もりを依頼した。
その後、俺は帝都の軍の工廠にウラスを持ち込み傷ついた場所を点検し修理を行った。
前回、帝都に行った時は、サミリーの事があってとっとと逃げて来たから後回しになっちゃたんだよ。
実際、取り換えたのは格納庫の床面パネルだけ、尾翼と左翼端はかすり傷で塗装が剥げた部分を塗りなおしただけなんだけどね。
で、今工廠での修理をする間、帝都のホテルに滞在しながら完了するのを待っているんだが、俺はクランドル総合大学学長のクラニカ侯爵と俺が作ったカードゲームをやっている。
ホントはポーカーのようなカードゲームが出来たらよかったんだけど、ポーカーって相手の表情が見えない中でやっても面白さ半減だよね。
だから、今は試作としてババ抜きと大富豪だけしか作っていない。
今は、チャットで学長と話しながら大富豪をやってるんだけど、メンバーは俺と学長のほかは以前大学で講義をしてくれたクラリッサ・バルディーニ助教授がラプター146-9c_3の話を聞きたいらしく参加してくれた。
もう1人は生体アンドロイドのメーカーの社長でエツコを作った技術者でもあるスコット・シーマンスさん。
エツコの同僚の作成の話をした時にトランプゲームの話になり参加することになったんだ。
後はアニエルは俺のお付き合いで一緒に参加してくれた。
この5人で大富豪をしてるのだが、何故か勝てない。いや、最初の数回は勝てたんだよ。
現在、俺は大貧民、ビリである・・。
『よし。これでビリから抜けられるこれで勝てる。5が4枚で革命!』
『あそれ。3が4枚で革命返しです。』
アニエル・・。俺に恨みでもあるのか・・。この俺の手元にある4が1枚どうすんの・・。
『ワハハハハ。ユースケ君は分かり易いなぁ。』
スコットが言うには、俺は良い手が来るとすごく強気になって序盤からバンバン勝負してくるから手筋を読みやすいそうだ。
そっ、そうなんだ。気が付いていなかったのは俺だけ・・。org and omg
これ、学長に相談しようと思ってた表情連動アイコン機能要らないかも・・。
クラリッサ助教授への報告?は終わったし、とりあえず学長に聞いてみるか。
『・・・。話は変わりますが、学長このゲームのキャラクターアイコンに実際のプレーヤーの表情を読み取って、アイコンの表情を連動させたいですが、大学でこの手の研究って行われてますか?行われてたら研究者を紹介していただけないでしょうか。』
『そうじゃのう。表情の認識プログラムの研究か。うーーん。直ぐに思い出せんの。誰かやって居たような気がするが誰じゃったか。』
学長の言葉を聞いてスコットさんが教えてくれた。
『ハハ。私が学生の時に研究していたのはワルター教授でしたが、今も同じ研究をしているのでしょうか?』
『そうか。思い出した。ワルター君だ!』
『ワルター教授は私が学生自転で結構なお年でしたが、まだ、表情認識システムの研究をしてるんですか?』
『いや。15年位前にな。亡くなったよ。』
『そ、そうですか。お悔み申し上げます。』
『だんだん。思い出してきた。そうだ。あやつは生体アンドロイドの表情認識がどの位出来るのか研究に行くと言って、帝都の場末の風俗店。名前は何と言ったかのう。』
『・・・。”ヘブン”ですか?』
『そうじゃ。”ヘブン”じゃ。そこで心臓発作を起こして、まさしく天国に行ったよ。』
『・・・。私は謝った方が良いのでしょうか。』
『なぜじゃ。』
『”ヘブン”に生体アンドロイドを売ったのはうちの会社ですから・・。』
『気にするな。480歳も過ぎたあやつが研究のためとはいえそんなところに行くからじゃ。』
思いもよらぬ方向に話が進んでしまったが、再度聞いてみよう。
『あのぅ。それで表情認識の研究は・・。』
『すまん。すまん。あやつの研究はその後は誰も引き継いでいなかったように思うのぉ。』
『いや。いや。ユースケ君、君の所に生体アンドロイドを販売した時にソフトウェアのカスタマイズしたから、設計書とソースコードを渡したでしょう。その中に表情認識部が含まれているよ。』
『・・そうだった。でもあれ物凄く量が多くて見る気が・・。』
『ハハハ。モジュール化してるから、後でモジュール名を調べて連絡するよ。』
『有難う御座います。ただ、そのソース流用しちゃっていいんですか?』
『良いよ。使っちゃって。この遠隔で話しながら出来るカードゲーム面白いからさ。』
『良かった。これでもっと心理戦に特化したカードゲームが作れます。有難う御座います。』
『そういえばスコットさん。生体アンドロイドのエツコが最近ますますヒューマンぽくなって来たんですけど何かご存じですか?』
『そうなのかい。特に特別な事をした訳ではないんだけどね?ユースケ君の所に販売した生体アンドロイドは学習能力を強化しているのと他の生体アンドロイドとは違ってかなり大きなメモリーと記憶保持装置が付いている位だね。』
『そうなんですか。いえ。この間生体アンドロイドの追加する見積もりお願いしたじゃないですか。あれってエツコが”同族とお話したい”、”他の皆は同族が居るのに自分には居ない”って話からお願いする事になったんですよ。』
『それは凄いのぅ。人工AIが自己学習によって自我が芽生え始めているという事か。ユースケ君その研究のレポート書かないか?ちゃんとレポートを提出してくれて一定の研究成果が得られれば大学の卒業認定を出しても良いぞい。』
『はあ。それは非常に魅力的ですが、俺の第一目的は惑星探査ですからね。レポートを出すにしても定期的に出せるか自信がありませんよ。』
『よいよい。レポート提出は定期的に提出する必要はない。ユースケ君の目的も分かっているし、大体、うちの大学の助教授連中も定期的にレポート出してくる奴なんて、本当に真面目な奴だけじゃ。ほとんどは半年に一回出してくればいい方じゃ。まったく困ったもんじゃ。』
『そうなんですか。じゃあ、何処まで出来るか分かりませんがレポートを提出していきますね。』
『うむ。宜しく頼む。ところでじゃ。次は何処の星を探索しに行く予定なんじゃ。』
『次はトライピット-1eに行って見ようと思ってます。出発は2週間後ですね。』
『なるほど。トライピット-1eか。あそこは何人もの探検家が行方不明になっとるから、気を付けるんじゃぞ。』
『分かりました。気を付けます。』
その日の夕方、スコットさんからメールがあり、約束した生体アンドロイドの表情認識部のモジュール名が送られて来た。
早速、俺は設計書を確認して、モジュールの役割を確認した。
それによると、画像からヒューマンの顔を認識し、誰なのかを割り出した上で、データベースと照合し感情指数を計算して各人に割り当てられた感情用変数領域に書き出している。
『うーん。これ画像に映っている複数人に対して感情取得をしてるのか。』
どうしよう。複数人の画像解析と感情指数取得を行って、携帯端末の処理能力を超えないだろうか。
ただ、プレイヤー個人を正確に特定するとなると、プレイヤーの顔登録が必要になり照合が必要になる。
そうなると、照合時には負荷がかかるが、その後の感情指数取得は複数人の感情を取得する場合より負荷は少なくなると思う。
とりあえず、試作でテスト用プログラム作ってみるしかないか。
俺はエツコの納品と一緒に貰ったUSBみたいなデバイスをパソコンに刺して、中のソースプログラムを見ようとした。
『なんだこれ・・。』
メールで貰ったモジュール名を検索してみたんだが、ファイルがない。
『ん。これ圧縮ファイルか?』
試しにファイルの一つをダブルクリックして見た。
案の定、新しいウインドウが開きその中に数十個のソースプログラムが入っていた。
『・・・。これ圧縮ファイルが500個位あるんですが・・。全部の圧縮ファイル解凍しろって事・・。』
俺が迷っていると、携帯端末にメッセージが入り、夕食の用意が出来たから食堂に来いとの事だった。
自室を出て食堂に向かったのだが、どうするか気になって食事も上の空になってしまい何を食べたかよく覚えていない。
もう、直接エツコの中のプログラムを検索した方が早いような気がしてきた。
俺は、食堂の席を立つ時にエツコの聞いてみた。
『なぁ。エツコ。俺の部屋でエツコの中身見せてくれない。』
『はい。ご主人様。ご主人様でしたら、どうぞエツコの中身を確認ください。』
俺はエツコを伴って部屋に戻り、専用の接続ケーブルを取り出し、まずはケーブルをパソコン側に接続した。
エツコのメンテナンス用インターフェースは首の後ろに蓋がありその中に存在する。
また、両脇の内側に開閉スイッチがあり、このスイッチを同時に3秒間押すと蓋が開くようになっている。
『じゃぁ。腕を少し上げてくれ。』
俺はエツコの両脇に手を入れてスイッチを押した。
『ご主人様。くすぐったいです。』
『少しだけ我慢してくれ。』
3秒間たちインターフェースの蓋がカチャっと開いた。
『服は脱いだ方が良いですか?』
『いや。ほらこれ。先が曲がってるだろ。だから大丈夫だ。』
この専用の接続ケーブルは先が90度曲がっており、服を着た状態でも接続出来るようになっている。
俺はエツコのメイド服の襟を少し引っ張って手を入れてケーブルを押し込んだ。
『痛い!痛いです。』
インターフェースの接続部と少しずれたみたいだ。
『ごめんごめん。今度はちゃんと入れるから。』
俺はケーブルの位置を修正し再度押し込んだ。
『あっ。はっ、入った。』
今度はちゃんと接続出来たみたいだ。
『じゃぁ。始めるよ。』
俺はパソコンを操作して、エツコの中にあるプログラムモジュール名の検索を始めた。
『ご主人様。・・(データ転送のタイムラグで)気持ちが・・・。』
『目を閉じてれば、(処理情報が減るから)少し楽になるんじゃないか。』
『かっ、変わらないで、ででですぅ。』
『ほら。何も考えずに力を抜いて。』
『あっ。あっ。あああ。あーーー!』
その時、部屋のドアがドッバーン!と開いて、アニエルが真っ赤な顔で飛び込んできた。
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