第41話
3-15
●帝都とロボ_2
『採用。労働条件なんかは今説明できないので後で確認してください。』
俺が言い放った言葉に、サミリーさんとクラーサはびっくりして固まっている。
近くで聞いていたアニエルは呆れた顔をしているし・・。
『ちょうどパワーアーマーの技術者を探していたんだよ。メンテナンスなんかもお願いしたいんだけど、力仕事とか可能かな。』
『はっ、はい。大丈夫です。いえ、メンテナンスにはそれなりの設備が必要です。』
『そうか。そこは考えてなかった。とりあえず、明日パワーアーマーの話をしに行くから一緒に来てほしい。あぁ。ホテルも取るから。』
それから、俺達はまたアマンダ達との合流場所まで徒歩で移動した。
ショッピングモールに着くと、なぜか女性陣は洋品店に入りあれこれ物色し始めた。
ねぇ。アマンダ達と合流するんじゃないの?
俺とサミリーさんはもう女性陣の眼中にないようだ。
皆が買い物に夢中になっている中、サミリーさんは一人寂しそうっだので、1万Gを渡して一緒に買い物してくるように言ってあげた。
しかし、・・・また、この流れ。何件お店に寄るの・・。勘弁して。
仕方ない。とりあえずアマンダ達にメッセージ送っとくか。
俺が情報端末でメッセージを送信したら直ぐに返信があって、アマンダ達は今フードコートでお茶をしている所だと言う。
ついでに『ゆっくり、買い物を楽しんでね。』だって、俺は早く切り上げたいんだが!俺は楽しめないんだが!
まぁ。もう少しすれば子供達が飽きて俺のところに来るだろうから、それまで我慢するか・・。
それから、子供達が俺の所の戻って来たタイミングで、先にアマンダ達が待つフードコートに行って買い物が終わるのをそこで待っていたんだけど、もう日が暮れようとしている。
今日はホテルの予約もしてないんだが、まだ部屋が開いてるだろうか。
気になった俺は何時も泊っているホテルの部屋の空き情報を確認したら、1人部屋が1室、2人部屋が3室、4人部屋が1室しか残っていないじゃないか。
とりあえず、全部押さえちゃえ。俺は急いで情報端末から空いている全部の部屋に予約を入れた。
それからどの位待っただろうか、女性陣がフードコートに来たのは日も落ちて暗くなってからだった。
フードコートも閉店の準備を始めて、そこに居るお客さん達も皆帰り支度をしている人が多く見受けられる。
子供達は当然疲れて寝てしまっているし・・。
俺達は子供達を抱っこして、タクシーで予約したホテルに向かったんだが、ホテルのフロントで問題が起きた。
ダブルブッキングである。
予約していた1人部屋に別のお客さんを入れてしまい、俺達が借りられたのは2人部屋が3室と4人部屋が1室になってしまった。
ホテルの人は謝ってくれたけど、どうしよう、部屋の泊まれる人数的にはピッタリなんだけど、俺が他の誰かと一緒の部屋に泊まらないといけない。
誰と泊まっても問題はあるんだけど、カムミムさんとサミリーさんは絶対に一緒に泊まる訳にはいかない。
でだ、佐井田さんは子供達と2人部屋で泊まるだろ、クラーサとサミリーさんは同じ部屋にしないとサミリーさんを知らないメンバーと一緒にするわけにもいかないし、アマンダ達3人とカムミムさんが一緒に4人部屋に泊まるとすると、アニエルが俺と2人部屋に泊まる事になるんだけど、アニエル的には大丈夫なのだろうか。
『アニエル。すまないが俺と一緒の部屋でも良いか?』
『い、いにゃでぃはにゃいでしゅが・・。』
おう。噛みまくりだし、一瞬で顔が真っ赤だし。
そっ、そう言う反応されると、こっちまで恥ずかしくなってくるな。
言っておくが、結婚するまでHな事するつもりはないからな。アニエルのお父さん怖そうだし・・。
しかし、アニエルに迫られたら・・。いやいやいや。絶対しないぞ。しないからな。しないと・・思う。
仕方なく俺とアニエルはホテルの同じ部屋に入ったが・・気まずい・・。
そうだ。明日の予定とパワーアーマー「PAM-12AS」の仕様を確認しとこ。
俺は自分のバックから情報端末を取り出そうとバックのジッパーを開けだんだが、いや、ちょっと待て、夕飯が先だよな。
なんか訳が分からん緊張してるな。変な冷や汗が出て来たぞ。自然体で良いんだよ。自然体で。Hしに来た訳でもなんだから。
『アニエル。』
『ひゃ。ひゃい。』
自分のベットの端に腰掛けていたアニエルが小さく飛び跳ねながら返事をした。
『夕食ってもうレストランに行って良いんだっけ?』
『あぅ。までぃあでちゅ。あろ20ぴゅん位ありましゅ。』
なんか、アニエルが真っ赤な顔をしていて今にも目を回して倒れちゃいそうだ。
『そっかぁ。じゃぁ。お茶でも飲んで時間を潰すか。』
『ひゃい。おちゃをいりぇてきましゅ。』
『あぁ。良いよ。俺が入れるよ。アニエルはそこの椅子に座ってて。』
俺は、ケトルに水を入れてスイッチを押して、紅茶の茶葉をガラスの器に茶こしが付いている急須に入れようとして躊躇した。
これどの位茶葉を入れれば良いんだ。俺って紅茶の正しい入れ方なんて知らないぞ。
今まで自動調理器で紅茶を指定して出て来るの待ってただけだしな。地球に居た時はティバックで入れてたし・・。
しかし、この世界は自動調理器が有るのにお茶は茶葉から入れるんだな。
なんだか変な矛盾があるよな。それともこのホテルの拘りなのだろうか。
まぁ。2人分だから、スプーンで2杯位入れればいいか。
茶葉の入った缶からスプーンで茶葉を二回掬って急須に入れて、ちょうど湧いたお湯をケトルから入れた。
ティーカップを食器棚から出して準備をし、急須から入れようとして、ん、紅茶って蒸らすみたいなこと誰か言ってなかったっけ?
少し待った方が良いのか?
んー。こんな感じで良いのだろうか?茶葉も開いたし良いか。
俺はティーカップに急須から紅茶を注いでアニエルの前に出した。
アニエルは上の空で俺がティーカップを置いたのにも気が付いていないようだ。
『アニエル、お茶入れたよ。』
『はい。頂きます。』
アニエルはティーカップを持って一口すすったと思ったら、ブーー!と噴き出した。
『ユースケさん。このお茶、物凄く渋いです。』
『まじか。』
俺は慌てて自分のカップの紅茶を飲んでみた。
『ゴホッ。しっぶ。ごめんな。俺さ紅茶入れようとした時に入れた事が無い事に気が付いて、浅知恵を駆使して入れてみたんだけど、ごめん。』
『ふふ。ふふふふ。ユースケさんもそんな顔するんですね。』
『何それ、どんな顔だよ。』
『眉尻が下がって、情けない顔。ふふふ。』
『そりゃするだろ。失敗したんだし。』
『そうなんですか?私は初めて見ましたよ。』
『ハハ。』『ふふふ。』
俺とアニエルはお互いの顔を見ながら笑った。
『あのぉ。その。ユースケさんは女性と、そのぉ。Hな事したことあるんですか。』
『なっ。なんで今そんなこと聞くの。』
『だって、だって。なんだか、私と同じ部屋に居るのに余裕そうで、私だけ緊張してびくびくしてるのがなんだか悔しかったんですもの。』
『俺だって余裕なんかないよ。余裕な振りをしているだけ。それと、学生の頃、当時お付き合いしていた女性とHな事したかな。ただ、付き合い始めてから1年位で彼女の方から別れを告げられてね。別れちゃったよ。』
『そうなのですね。やっぱり、Hな事してるんんだ・・。』
『やめて、そこだけ抜き出さないで・・。でも、まぁ、佐井田さんにも怒られてけど、俺って女性の興味ありそうな事にとことん無頓着なんだよ。だから当時付き合っていた女性も自分の事分かってくれないし、興味もないみたいな俺に愛想つかしたんだろうね。』
その後、俺とアニエルはたわいもない雑談をし、夕食の時間が来たのでレストランへ行って皆と合流し食事をした。
皆でわいわい話しながらの食事は楽しくあっと言う間に時間が過ぎてしまい、食後は各自部屋に戻って休んだ。
俺とアニエルも部屋に戻ったが、アニエルも緊張が解けたのか普通に接してくれて有難かった。
次の日、朝起きると何故かアニエルが俺のベットに入って来ていたが、ちょっとの間二の腕に当たる柔らかい感触を堪能しただけで特段特別な事はなかった。
無かったったら、無かったからな。
朝食を取った後は、俺とアニエル、クラーサ、サミリー、アマンダ達3人は軍の施設に出かける用意をした。
佐井田さんと子供達、カムミムさんはお留守番だ。とは言え、4人で動物園に行くような事を言っていたが。
俺とアニエル、クラーザ、サミリーは提督の所で報告とパワーアーマーの話をするんだが、アマンダ達3人は軍の講習会に参加してお勉強だ。
本当はロッテには、こちらに来てパワーアーマーの話を聞いて構造の勉強をしてもらいたかったが仕方がない。
この講習と試験を受けないと彼女たちは軍に在籍出来ないからな。
まぁ。アニエルとクラーサが教えていたから多分大丈夫だろう。
タクシー的な乗り物に乗り、軍のゲートを潜った所で俺達は分かれた。
サミリーは軍に登録している訳ではないので、入場時に入館手続きで身分証を見せた後に俺も一緒にサインすることですんなり入れた。
軍の中央施設に入り、俺達は提督の執務室に向かった。まぁ、この辺は何度も来てるんで迷子になる事はない。
提督には予めスケジュールを抑えていたので、直ぐに合う事が出来た。
執務室に入るなり、提督はサミリーを見て聞いてきた。
『そちらの方は誰かな。』
『おぁ。すいません。今度、私が雇ったパワーアーマーの技術者で、サミリーと言います。』
サミリーが提督に会釈をしている。
『この度ユースケさんに雇われましたサミリーと申します。宜しくお願い致します。』
俺達は応接セットのソファーに座り、今回のラプター146-9c探索の報告書を提出し説明を行った。
『やはり、あの彗星ストーミーベルト横断は無理があるか。』
『はい。あそこはウラスで通るのも非常に厳しい所でした。危うく岩石に挟まれて機体を大破させるところでした。と言うか、垂直尾翼と左翼端を岩石に擦ってしまって、修理が必要な可能性があります。』
『なるほど。後で点検するからウラスをドックに入れてくれ。』
『分かりました。後、格納庫の床材ですが、このサンプル入手時に一部を溶かしてしまいました。』
俺は、ローテーブルの上に鞄から取り出した、サファイヤの原石を置いた。最初に採取した丸い原石だ。
『分かった。確認しよう。』
『後、これはお土産です。』
次に10cm角に切り出した四角い原石をテーブルの上に置いた。
これに反応したのは、提督の娘さんで秘書をしているミンシアさんだ。
原石を持ち上げて、『これってサファイヤなんですよね。こんな大きなサファイヤ初めて見ました。』
『コラ。ミンシア燥ぐな。ユースケ君もこんな物を土産として渡してくるな。軍規に違反するぞ。』
『そうですか?私は拾ってきた石ころをお渡ししただけのつもりなんですが。』
『石ころって・・。』
『ちなみに陛下には、その十倍に大きさの石ころ渡してます。』
『まったく。困ったものだ。仕方ない石ころは有難く受け取って置くよ。』
ミンシアさんは『やったー!』と燥いでいる。
提督は『オホン。』と咳ばらいをして、パワーアーマーの受け渡しに付いて話してくれた。
『ユースケ君。今回の件、廃棄強者には連絡を入れてある。この書状ををもっていけば、購入出来るようになっているから、後でこの場所の業者まで行ってくれ。』
『分かりました。行ってみます。』
『しかし、ホントにあのパワーアーマーを購入するのか?』
『はい。3台位購入して2台は部品取り用ですかね。』
『しかし。それであれば新品を購入した方が良くないか?』
『どうなんですかね。サミリーどう思う。』
『待ってください。私はどんなパワーアーマーを購入するのか聞いていません。』
『あれ。そうだっけ?えーと、PAM-12ASって言うこの間廃棄された。パワーアーマーだよ。』
サミリーは一瞬目を見開いて、がっくり肩を落とした。
『PAM-12ASは、私が設計したものです・・。』
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