第38話
3-13
●パワーアーマーと帝国軍少将
俺は今回10個のサファイヤの塊を転送したわけだけど、陛下に怒られてしまった。
よく考えれば、200kg位の石10個を鍛錬場の一か所にまとめて置いてるんで、そこに2t位の重さが掛かってるんだよね。
『それで、こんなに沢山寄こして、どうするんじゃ。』
『え。まだ足りないって・・。』
『そんなことは言っとらん。まだあるのかと思っていただけじゃ。』
『あ。なるほど。それはすみませんでした。』
『それで、どうするんじゃ。』
『宝石商の方に買って頂きたいのですが無理でしょうか。』
『サイモン。どうなんじゃ。工賃が支払える位はあると思うのじゃが。』
『そうで御座いますね。これ1つで十分だと思いますが、状態が分からないので2つでお願い出来ればと思います。あと、これをすべて買い取る事は資金的に出来ません。買い取れたとしても後2つで御座います。』
『ユースケもそれでいいか。』
『はい。大丈夫です。残りはどうします。陛下に献上しましょうか。』
『いや。1つだけ頂いておこう。後は要らん。』
『分かりました。ではこちらで回収してどこかに隠しておきます。それと後で宝石商の方にアクセサリーのデザインのお話をさせて頂きたいので連絡先を交換させてください。』
俺はトァカミさんにお願いして残りの5つを回収して、宝石商のサイモンさんと連絡先を交換して通信を終えた。
そしてウラスを発進させまた、ワープ航行と通常航行を繰り返し1ヶ月弱掛けてストーミーベルトの上端を超えられる地点までやって来た。
この間、宝石商のサイモンさんと連絡を取り合い、アクセサリーのデザインを決定していった。
一番大変だったのは、やはり、自分の婚約指輪の説明と子供達のデザインした指輪を子供達を説き伏せてネックレスに変更してもらう事だった。
子供達には悪いけど、指輪って成長すると入らなくなるからね。その代わり、子供達が大きくなったら指輪にリフォーム可能なように作ってもらった。
そこから、17日掛け辺境星系ゴルタナまで戻り、そこで2日間休憩を取った後、帰路の最初の星系であるロッシュ星系へ向けて出発した。
そこからは何も起こらず、しかも足の遅い大型輸送船も同行していないため、16日でサトア第一星系の惑星サトアへ着いた。
そこから、2日後、やっと惑星スサノアのコロニー型宇宙港に着いた。
俺とアニエル少佐はサルディン・クレバノ少将に挨拶しようと宇宙港の駐留軍施設に赴いたが、やっぱり今回も地上基地に居るらしい。
今回はお土産で、サファイヤの原石を少し切り出して渡そうと思っているので、地上基地へ降下申請を出し地上へ降りる事にした。
俺はトァカミさんにお願いして10cm角の切り出したサファイヤの原石を角を切り落とし、球体ぽく加工し持って行くことにした。
切り出した余りの削りカスのような物はアマンダ達がしっかり確保し、勿体ないから後で売ると言っていた。
俺とアニエル少佐が駐留軍施設に行き受付で入館手続きをしていると受付までクレバノ少将が迎えに来てくれた。
『突然伺ってしまい申し訳ございません。』
『いやいや。今日はどうされたのかな。』
『いえ。今回帝国の図版外に調査に赴いていたんですが、帰りに拾い物をしましてお届けに参りました。』
『そうでしたか。では執務室でお預かりしましょう。君、執務室にお茶を3人分頼んでくれないか。』
俺達は世間話をしながら、司令官の執務室に向かった。
執務室に入り応接セットに座ると、司令官付きの士官がお茶を入れて持ってきてくれた。
調査の内容を話ながら、士官が退出するのを待って、俺達はハンカチに包んだお土産を応接セットの机に出した。
『これが拾い物なのですが出所は秘匿してください。あと陛下にはこれより大きい物を献上しております。』
『なんでしょうな。見ても宜しいか。』
『どうぞご覧ください。あと調査帰りなので入れ物が用意できずハンカチですいません。』
少将はハンカチの結びを解いて中からサファイヤを取り出した。
『むむ?これは宝石ですかな。だとすると随分大きいですな。』
『はい。サファイヤです。帝国でラプター146-9cと呼ばれている惑星の調査の帰りにたまたま見つけた惑星に存在していた物を発掘して来たんですが、大気がアンモニアで水が濃アンモニア水なんでとても危険な場所でした。発掘時に濃アンモニア水が艦の格納庫の床を溶かしてしまって、後で張り替えないといけないかもしれませんね。』
『なんとまぁ。そんなところから・・。』
『それで陛下と相談して場所はおろかそこからサファイヤが採掘出来ること自体を秘匿しようという事になりました。情報が漏れてしまうと取りに行く方が現れると思いますし、そうすると濃アンモニア水にやられて帰ってこれなく・・。いえ亡くなる方が続出する可能性が大きいのでそうさせてもらったんです。』
『よくまぁそんなところで発掘が出来ましたな。』
『ほら、我々には秘匿技術がありましたので、直接大気圏内に降りなくても採掘出来たので問題なかっただけですよ。』
『そうか。なるほど。それは幸いと言うかなんというか。しかし、この情報は漏らせませんな。』
『そうですね。なのでそのサファイヤも自宅の物置から出て来たとかにしておいてください。』
『自宅の物置か・・。ハハハ。家の物置からはこんな物が出て来るとは思えんがな。』
『ハハ。お手数ですが何とか誤魔化しておいてください。』
『分かった。そうしよう。』
『それでは、これでお暇しますね。』
俺達はソファーから立ち上がったのだが、窓の外にパワーアーマーが何機も並んでいるのが目に入った。
『少将。あれは出撃の準備でしょうか。』
『ん。あぁ。あれは"PAM-12AS"だな。あれは戦闘支援用に開発されたマルチロールパワーアーマーだったんだが、使いどころがないのでこの度廃棄が決まった機体なんだよ。今は廃棄業者が取りに来るのを待っている状態だな。』
『んー。あれって俺の艦に配備出来る物でしょうか。』
『あれを今からか?多分無理じゃないか。帝国軍全体で廃棄が決まった機体だからな。大体あの機体はいろんな武器を搭載出来るのは良いんだが性能的にどれも中途半端だぞ。』
『ハハ。そうなんですか。ただ俺達のように単独で行動しているんだったら、むしろその方が都合が良いような気がしますがね。』
『うむぅ。なるほどなぁ。そうしたら提督に話してみるか。』
俺達は一旦立ち上がったソファーに再度腰掛け、情報端末で提督に連絡を入れた。
『ユースケ君。また何かあったのか?』
『やだなぁ。提督何もありませんけよ。けど確認したい事があって連絡しました。』
『また、ユースケ君の事だから、女性士官をウラスに乗せられないかの相談だと思ったのだが。ブハハハ。』
『はあぁ。違いますからね。』
ほら、アニエルがジト目になっちゃったじゃないか。
『まぁ。それはともかく。何の確認だ?』
『はい。今惑星スサノアの地上基地に居るんですが、パワーアーマーのPAM-12ASを廃棄されるという事で準備が行われてまして、廃棄するのでしたらウラスに配備出来ないものかと思いまして、その確認です。』
『あぁ。あのマルチロール機か。あれは役に立たんぞ。』
『そうですかね。確かに集団戦では役に立たないかもしれませんが、俺達みたいに単独で戦闘を行う場合には、その場の状況に応じて武器を変更出来るのは有用だと思うのですが。』
『なるほどなぁ。しかし、あれはもう廃棄が決定していてそこは覆らん。後継の標準機ではダメなのか。』
『その後継の標準機がどのような物か分からないので何とも言えませんが、単一目的に特化した物だと使い何処が無いかもしれません。』
『そうか。だとするとやっぱり、PAM-12ASの方が良いかもしれんな。』
『提案なんですが、あれを個人で買い取る事は可能でしょうか。』
『うむ。軍から直接個人に販売はできないな。やるとすれば廃棄業者から購入することは可能だろう。だがメンテナンスをどうするんだ。もう、あの機体のメーカーも生産を打ち切るみたいだぞ。』
『そうなんですよねぇ。最悪5・6機購入して使用機以外は部品取り回すかするしかないですかね。あぁ。パワーアーマーの技術者雇えないだろうか・・。』
『まぁ。本気で購入するのであれば廃棄業者に言っておかないとスクラップになってしまうから、2週間以内に連絡してくれ。』
『了解しました。』
俺は情報端末の通信機能を切った。
『アニエル少佐。どうしよう。買っても良いか。』
『そうですねぇ。今は資金がありますが無駄使いは感心しませんね。本当に必要なら仕方がないですが。』
『ワハハハ。ユースケ君はもう尻に敷かれてるのか。』
『いや。そうでは・・・・。あるかも・・。』
あら、頬を赤らめてそっぽを向いたアニエルの顔が可愛い。
俺達は司令官室を後にして、ウラスに戻って来た。
ダイニングの椅子に腰かけ情報端末を確認すると、宝石商のサイモンさんからメールが入っていた。
『アニエル。サイモンさんがアクセサリーのモックが出来たから帝都の店で確認してほしいそうだ。』
『行きます。直ぐ行きましょう。』
『・・・・。』
どんだけ楽しみなの、小躍りしてるし・・。
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