第37話
3-11
●皇帝陛下とクランド公爵と宝石鑑定人
俺はラプター146-9cからの帰りに、サファイヤが存在する惑星を見つけた事をメールで陛下に報告し、その事で相談したいので都合のいい時間に連絡が欲しいと送った。
すると30分もしない内に陛下から連絡が来た。ちょうどお昼の休憩時間だったようだ。
『サファイヤの原石を見つけたのか?それと相談とはなんじゃ。』
『はい。原石を見つけたのは良いのですが、売り先に困っていたところ、アニエルの実家の事業で宝石商も行っているって言うんでそちらに頼んでしまって良い物か確認したかったのが1点と。陛下に献上するのに原石ってどれ位お渡しすれば良い物でしょうか。』
『なんじゃ。そんな事か、売り先はアニエルの実家に頼んで良いぞ。情報の秘匿もしてくれるじゃろ。あと気を使って献上等せんでも良いぞ。』
『いえ。気を使っていると言うかぁ、ちょっとご迷惑を掛けてしまう感じなんですが・・。』
『話が良く分からんのう。迷惑とはなんじゃ。どんな事じゃ。』
『はい。情報を秘匿するために陛下のご威光をお借り出来ないかと思いまして、なので採取した原石を一旦帝室内の何処かに転送してそこから宝石商に運び入れる分には、誰も不思議に思わないじゃないかと・・。』
『なるほどの。端的に言えば場所を貸してくれという事か。』
『はい。』
『どうしたんじゃ。ユースケ。今回はずいぶん卑屈になっておるのう。』
『はぁ。今回はまったくもって私益のためのご相談なんで、ちょっと・・。いや、アニエル達がこのサファイヤでアクセサリーを作るって言ってるんですよ。で、その工賃をこのサファイヤの原石で払うって言ってまして、それで市井の宝石店に持ち込む訳にもいかず。どうした物かと・・。』
『なるほど。』
『しかも、原石からアクセサリーを作る値段も分からず。どの位の原石が必要なのかもわからず。正直困っておりまして。』
『そうじゃのう。わらわも工賃など分からん。』
『それで、陛下に一旦お預けして、鑑定してもらいながら送るのが一番なのかなと思った次第です。』
『あい分かった。今日の夕方にでもクランド公爵と宝石の鑑定人に来てもらう。その時に送って来い。』
『良かったです。あ。あと俺が意地悪な事を言ってしまった謝罪にアニエル達3人に婚約指輪を要求されてまして、それも作りたいと思ってます。』
『ウフフフフ。良いぞ。作ってやれ。』
『ハハハ。いやいや。それとですね。この原石を発見した惑星なのですが、危険で宇宙船で大気圏内には入れませんので場所も秘匿したいと思ってます。』
『なに。そんなに危険なところなのか。』
『はい。惑星内に入ったら確実に出て来られないでしょうね。俺達はトァカミさんの例の技術が有ったので惑星に接近せずに宝石を採掘出来ましたが、地上に降りて採掘なんて絶対できません。なんせトァカミさんの技術でサンプルを少し採掘したんですが、そのサンプルに付いていた少量の液体で船が損傷を受けましたから。』
『なんとまぁ。それはそうと船は問題ないのか?』
『少量だったので格納庫の床材の鉄が少し溶けた位で何とかなりました。』
『それは良かった。いや、良かったと言って良いのかも分からんが、大事なくて良かった。』
『それでは、連絡頂いた後に送りますね。そうだ、安全のため広い場所でお願いします。あと、下にマットとか引いて置いてもらうと確かります。』
『分かった。クランド公爵の都合もあるので夕方位に一度連絡をいれる。』
◆----------
わらわは執事を呼んで、今日の夕方にクランド公爵と宝石の鑑定人が来れるか確認を取るのと、来れるようだったら何時ごろ来れるかも聞いて来るように伝えた。
しかし、婚約指輪か。アニエルも良く頑張っている。
背に腹は代えられず命令したが、最初はアニエルには悪い事をしたと思っていた。
しかし、今はアニエルもユースケの事を好いているようだし、このままうまく行ってくれれば、帝室の問題も解決とはいかないが先送り出来る。
何とかこのまま結婚まで行ってくれることを祈ろう。
それにしてもユースケは大変じゃのう。アニエルには家内の長としてわがままを言わないように言っておくか。
それはそれとして、転送の場所をどうするか、ユースケは安全のため広い場所と言っていたし、マットを敷いて置けとも言っていた。
それと、秘匿技術の件もあるから、屋外より屋内の方が良いだろう。
うむ。そうなると近衛の雨天鍛錬場が良かろうか。マット等も近くに置いてあろう。
そんなことを考えているうちに執事が戻って来た。
いや、早いな。
報告を聞くと、今日の6時位に来れるとの事だった。
今度は執事に近衛の雨天鍛錬場を5時半で利用を中止させて、マットを引いて置くように伝えた。
フフ。どんな原石が送られてくるのか楽しみじゃ。
良い物であったなら、わらわも少し貰おうかの。
◆----------
俺達は陛下から連絡が来るの待つ間、アクセサリーのデザインを絵に描いていた。
それにしてもアニエルと佐井田さんは絵がうまいな。
クラーサ少尉とカムミムさんは、まぁ普通だな。
トァカミさんは最初から放棄してカムミムさんに丸投げしている。
ミナちゃんとあみちゃんはお花の絵を描いているけど、それを指輪にするんだろうか。
アマンダ達は今回委託するわけではないので書いていない。
俺自身は絵が下手なので、大体のイメージって事で文字で書いている。
って言うか。美的感覚もないんだが・・。
イメージ的には楕円の青サファイヤの周りに蔦が取り囲みさやえんどうのような豆があちこちになっている。
鞘に入った豆の部分に色の違うサファイヤを付けて、外周は雲っぽい感じにしたいな。
これを書こうと思った時に思いついたのが、なんでか「ジャックと豆の木」なんだよなぁ。ハハハ。
ただ、蔦がかっこよくサファイヤの上下を少し覆うような感じで交差するみたいにしたいな。
まぁ、俺が絵を描くとまた黒光りするGになるからやめておくけど。
皆でお茶をしながら絵を描いていると、陛下からメールで連絡があった。
今日の惑星クランドル標準時6時から近衛隊の雨天鍛錬場を開けたのでそこに転送してほしいそうだ。
俺とトァカミさんは座標のチェックのためコックピットに移動した。
『トァカミさん。近衛隊の雨天鍛錬場の場所は知ってるんですが、転送の確認と資金源確保にために拠点に2・3個送って置きませんか。』
『そうだな。ただ、そうするとシュバルツに連絡して場所を確保してもらわないといけないな。』
俺は早速シュバルツさんに情報端末で連絡を入れると直ぐに出てくれた。
『シュバルツさん。ご無沙汰してます。』
『おう。ユースケの旦那。なんかあったのか?』
『いえ、何もないんですが、ちょっとこちらで宝石の原石を見つけたもんで、転送テストを兼ねて拠点に何個か送ろうかって話になりまして、物資の転送施設は今空いてますか?』
『今は開いてるぞ。食料も本星から送ってもらったし、屋敷の方の家具なんかももう送ってこないだろうからな。』
『じゃぁこれから送りますけど、移動させる時はクエン酸水で周りを拭いてからにしてくださいね。アンモニアが付いてる可能性があるので下手に触るとやけどします。』
『おっかねえな。それとクエン酸なんてないぞ。』
『アンモニア水か無い所から掘り出すんで、多分大丈夫だと思いますが念のためです。あと濃いレモン水かお酢でもいいです。お酢の場合は後で匂いが大変ですが・・。』
『分かった。周りを拭いてから運ぶよ。』
『じゃぁ。トァカミさんアンモニアが触れてない部分でお願いします。』
『了解した。それじゃぁ、送るぞ。』
トァカミさん量子転送装置を操作して、惑星のサファイヤを送った。
今度は地表のの物ではなく少しその下の物を切り取って送ったみたいだ。
『どうですか、ちゃんと遅れてます?』
『おう。来てるぞ。大丈夫だ。』
『濡れてたり、匂いとかしますか?』
『ちょっと待て。・・・匂いもしないし、・・分かりにくいが濡れても居ないようだ。』
『了解。では後2つ位送りますんで離れててください。あと、それ倉庫に入れて隠しておいてください。』
『分かった。』
俺はトァカミさんお願いして後2つ転送してもらった。
その後、量子転送装置に近衛隊の雨天鍛錬場の座標をセットし、陛下から連絡を待った。
◆----------
わらわが執務を早めに切り上げリビングでお茶を飲んでいると、執事が来客を告げにやって来た。
執事はクランド公爵と宝石の鑑定人が来訪し、謁見の間の控室で待っているとの事で、わらわも執事の先導で控室に向かった。
『急に呼び出して悪かった。座ってくれ。』
わらわが座るのを待って、公爵のクランドと宝石の鑑定人が椅子に腰かけた。
座ると同時にクランドが語り掛けて来た。
『陛下。今日は宝石の原石が見つかったとの事でしたが、宝物庫でも漁りましたかな。』
『バカを言うな。お前の娘のアニエルの婚約者から、宝石の原石を見つけたから送っると連絡があったんじゃ。』
『アニエルの婚約者のユースケ君ですか?彼は今どこに居るのですかな。アニエルの奴は妻には連絡を寄こすくせに儂にはさっぱりで今何処に居るのかも分からん状態で困っておるのです。』
『ユースケは今帝国図版外の・・。まぁ良い。彼らを紹介せい。そしてこれにサインしてもらえ。』
『あー。なるほど。秘密保持の契約書ですな。オホン。まずこちらの男性が家の系列で宝石商を営んでいるサイモンです。それと奥の女性がサイモンの娘で鑑定人のカルラです。』
『でな。ユースケが宝石の原石を見つけたもんだから、アニエルが自分のアクセサリーを作ると言い出したそうで、ユースケが困って居ったぞ。』
『あいつは・・。なんも。申し訳ない。』
『ユースケも宝石の価値が分かっていないから、どの位採取すればいいか分からんと言って連絡が来たんじゃ。それでのアクセサリーの製作代を原石で払いたいらしいぞ。』
『なるほど。それで宝石の鑑定人ですか。』
『そうじゃ。これから秘匿技術で送ってくるのだが、どの位あれば工賃となるのか判断してほしいのじゃ。あとわらわもついでに何か作ってもらいたい。』
『分かりました。』
『ではの。転送してくる場所まで移動するか。』
わらわ達は近衛の雨天鍛錬場に移動し、ユースケに情報端末で連絡を入れた。
『ユースケ。こちらは準備出来たぞ。』
『はい。安全のため壁際に居てください。あ、一点、転送するサファイヤですが採取と同時にそちらに送りますので、こちらではどんな色をしているか分かりませんので当たりかハズレかは分かりません。その点はご了承ください。それでは転送しますね。』
ユースケが言うやいなやに鍛錬場の中央付近に引いたマットの上で光が走った。
次いでゴトッと音がしたと思ったら青やピンク、黄色が入り乱れた透明な四角い石が現れた。
いや、しかし、トァカミの技術もすごいが、この原石大きくないか。普通の原石もこんな感じなのだろうか。
わらわは拳大位の物を送ってくるものだと思っていたが、1m四方の立方体の石を送ってくるとは・・。
等と思っているうちに、光が3度瞬いて、同じ大きさの石が3つ追加された。
『・・・。まだ(あるのか?)・・。』
『え。なんです?。まだ足りない?トァカミさん。追加で6個位送っちゃってください。』
次いで光りが6回瞬いたと思ったら同じ大きさの石が6個出現した。
『やっ、やめんか!バカモノ!鍛錬場の床が抜けるわ!』
久々に声を荒げたわ・・。ふぅ。
見ろ、宝石商のサイモンとカルラがアホみたいに口を開けて固まってるじゃないか・・。
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