第35話
3-9
●彗星ストーミーベルトとラプター146-9c
『3、2、1』
"ガガッガリッ”
最後、左側の翼端が岩石に触れたが、何とか脱出することが出来た。
俺は、彗星ストーミーベルトの近くにいつまでも滞在したくないので、メインスラスターをふかして遠くに離れた。
『ふう。危なかった。トァカミさん、有難う御座いました。』
『あぁ。いや、危なかったな。』
『これ、帰りはここ通りたくないですね。物凄く遠回りで1ヶ月位掛かってしまいますけど、彗星ストーミーベルトの上を通過した方が良さそうです。』
『そうだな。こんな賭けみたいな事はやめておこう。』
俺は改めてため息を吐き、タッチパネルを操作して自動姿勢制御を復帰させ同時にウラスの出力を上げた。
その後、10日間、たまに飛んでくる大きな岩石を避けながら通常航行で進み、やっとこさラプター146-9cへ到着した。
ラプター146-9cは大気圏外から観測するに地球と似たような感じで海があり陸がある。雲が地上を隠し陸地には木々が生い茂っている。
ただ、違うのは月がない事と、この星系の恒星は太陽よりも大きい気がする。
いや、宇宙から実際に太陽を見た事ないのであっているか分からないが、色合いも若干オレンジが強い気がする。
まぁ。この情報たけでも地球ではない事が分かってしまったわけだが、帝国にどのような惑星なのか情報を持ちかえるためにも、この惑星の調査を継続した。
まず、俺達はラプター146-9cの大気成分を分光によるスペクトル分析を行いどのような大気なのかを観測した。
結果は酸素、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、メタン等、大体他の惑星と同じような構成で割合もさほど変わらない。
若干、酸素の割合が大きいのとオゾン層が厚い感じだが誤差としてしまってもいいだろう。
俺達はウラスでこの惑星の外周をゆっくり回りながら陸地がどんな形をしているのか確認した。
目視で確認するとともに、画像スキャナーを駆使して立体的な惑星の3Dモデルを作成した。
この惑星には3つの大陸が存在する。
3つのうち1つは砂漠の大陸で何もなく、ごつごつとした岩の壁に囲まれた中央部がすべて砂漠である。たとえると城塞都市の城壁が岩の壁で、都市部分がすべて砂のような感じだ。
後の2つの大陸は密林?ジャングル的な感じで木々が沢山生えていて、標高の高い山と海岸線に土が見える程度だ。
大陸の配置的には、陰陽マークの白部分と黒部分が斜めに離れた感じで、凹んでいる部分が両方とも赤道近くにあり、その海の真ん中に砂漠地帯があるような感じだ。
まぁ、白黒部分の大陸の外側は陰陽マークみたいに丸く弧を描いてるような感じではないんだが、砂漠大陸側は結構丸く凹んでいる。
ただ、砂漠大陸側は崖立っていて、岩がむき出して海岸ような所はない。
俺はウラスを大気圏内に降下させ、光学センサーのデータから抽出した真下の映像をコックピットの床面に投影した。
『皆、ゆっくり飛行するんで、何か生物とか動物とかが居たら教えて!』
コックピットの補助席に座った子供達が手を上げて『はーい!』と元気よく返事をしている。
最初に砂漠大陸を調査したが、生き物が住んでいる気配は全くない。
次いで、砂漠大陸の右側の大陸を調査しようと、海の上の移動していると、子供達が『お魚がいるー!』と教えてくれた。
俺はウラスを止めて、映像を来た方向に動かして拡大したんだけど魚なのか?
シルエット的には魚と言うかイルカっぽいんだけど、息継ぎに浮上して海面に出て来た生物には鱗があった。
哺乳類なのか魚類なのか分からん生物だ。しかもデカそう。海の上で対象物がないから分かりづらいけど、多分、3~4m位ありそうだ。
それが、10頭位むれて泳いでいる。
俺はその様子を録画して、この星の資料として保存した。
ウラスは右側大陸の海岸線に来たのだが、結構高さの崖になっており、崖に波が打ち付けているばかりで生物的な物は発見出来なかった。
多分、海の中に潜れば魚とかはいるんだろうが、今回はそこまでしない。
海岸線の崖を通過するとそこは木々で覆われており、その下がどうなっているのか分からない。
量子スキャンに関しては、形状とその構成物質は分かるが、それが動物かどうかは形状を見て判断するしかない。
なので、例えば人型を取っていて筋繊維がありそれを脂肪なんかが覆っているとかだったら、多分、ヒューマンなんじゃないかな位のかんじだ。
これが、既知の物質だったりすれば、その構成成分によってこれは鉄だとかガラスだ等分かるのだが・・。
今の所、木々の下に小動物らしき生物はいるようだが、ヒューマンと言えるような存在は確認出来ていない。
そんな中、山脈に活火山と思われる噴煙を上げている山の手前に大きな草原が存在した。
その草原の周りは木々に囲まれているが、そこだけ高台になっており草原になっている。
そしてそこには草原の草を食べている4~5mの4本足の恐竜のような動物がいた。
体は硬そうな大きな鱗に覆われ体毛はなく足は太い。最初見た時は岩かと思ったくらいだ。
頭の部分の鼻先にはサイのように尖った角が付いている。
ただサイの角と違って、丸い断面ではなくトランプのダイヤマークのような断面の角になっていて、その先端は鋭い。
この恐竜のよな動物が何頭ずつか群れで草を食べている。
俺達がその動物の観察を終えて次に向かおうとした時に、森との境界あたりで草を食べていたその動物の群れに森から飛び出して来た鶏ポイ生き物が襲い掛かった。
鶏ポイと言ったのは、体毛は羽毛みたいなのだが翼はない。その代わりさほど長くないが鉤爪の付いた腕があり、草を食べていた動物に腕を振り下ろし攻撃している。
顔の部分は嘴の中に硬そうな鋭い歯が付いた口を開けて相手に嚙みついている。
草を食べていた動物も頭を振って攻撃しているが小さい個体が倒されお腹を食い破られている。
どうやら、草を食べていた動物はお腹の部分には硬い鱗が無いようだ。
大きな個体は敵が近づくと逃げづに座り込んでしまい、急所を守っているようだ。
そうすると何処に噛みつかれても、引掻かれても問題ないようだ。
そうしている間も頭を振り、角で襲撃者達を屠っていく。
俺はモニター越しにその光景をみて、これがリアルなジュ○シックパークと地球で見た映画を思い出していた。
そんな高台の草原地帯を抜けるとまた森が続いている。
ウラスが大陸の反対側海岸線に着くと、そこには森に飲み込まれているが明らかに人工物である町?があった。
コンクリートで作られたと思われる建物は一定方向に倒れている。しかし、ヒューマンの痕跡は見つからなかった。
思わず俺はトァカミさんに話しかけた。
『トァカミさん。これって崩壊した文明の遺跡で合ってますかね。』
『そうだな。私も不自然に湾曲したこの大陸の海岸線に違和感を持っていたんだが、これは大きな隕石が衝突したと考えれは納得できる。』
『そうですね。ただここまで植物に飲み込まれている事を考えると、相当昔の話みたいですけどね。』
俺は思わず合掌して「南無阿弥陀仏」と唱えてしまった。
その後、ヒューマンの捜索をしてみたが痕跡は全くなく、多分、隕石落下直後にほぼ壊滅して残った人達もその環境変化に耐えられなかったんだろう。
俺達は写真や動画を取り帰路に着く事にした。
俺は大気圏外に出したウラスを一旦停止させ、ワープ航法が出来ないか船のコンピュータに計算させている。
帰るのは彗星ストーミーベルトを通るのはやめたので、かなり時間が掛かるだろう。
3日後、計算結果が出たが、やはりワープ航法が取れるのは途切れ途切れで、途中を通常航行で次のワープポイントまで移動しワープをするようになる。
愚痴っても仕方がないので、俺はウラスを発進させ最初のワープポイントへ向かった。
そして、2回目のワープが終わり3回目のワープポイントへ向かっている途中、俺達は青い惑星を見つけた。
雲のようなものもあるようで大気中を流れているのが観測出来た。
『トァカミさん。あの惑星は何でしょうか。こんなところに水のある惑星があるとは大学では言ってなかったような気がするのですが。』
『そうだな。調べてみるか。』
トァカミさんは、量子スキャンでその惑星を調べてくれた。
その結果、その惑星の青は水ではなく大量のサファイヤが光を反射して光っているものだった。
多少の大気と水もあるが、生物が生きていける程はないそうだ。
俺は通り過ぎようとしたが、サファイヤと聞いて女性陣が黙っていなかった。
俺は女性陣の圧力に負け、仕方なくこの青い星に寄り道する事になった。
はぁ~。
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