第34話
3-8
●商隊護衛とラプター146-9c_3
アマンダ機の格納も完了し、俺はアマンダと乗員のミリア、ロッテの3人に守秘義務契約のサインをしてもらった。
それと同時にエツコの予備のメイド服も貸し出している。
3人部屋の一般兵室を使っていいことを告げ、後はクラーザ少尉に案内をお願いし、着替えが終わったらダイニングに連れてくるように言った。
ダイニングでお茶を飲んで待っていると、クラーザ少尉とアマンダ達がやって来たので皆にアマンダ達を紹介した。
『みんな今日から少しの間だけ、一緒に旅をすることになった。アマンダさんとそのクルー達です。自己紹介してください。』
『"さん"とか付けなくていいぞ。アマンダだ。惑星ゴルタナまでだが宜しく頼む。』
『ミリアです。宜しくです。』
『ロッテだよ。物を作るのが趣味なんだ。何か作るときは手伝わせてね。』
『有難う。じゃぁ。こちらの紹介な。こちらの男性がトァカミさん。この船の研究員で大学の助教授です。そのお隣がカムミムさん。トァカミさんの婚約者で助手です。次にこちらが佐井田さん、隣にいる子供達がミナちゃんとあみちゃんです。で、こちらがクラーザ少尉。子爵令嬢でこの艦のナビゲーターをしてもらってます。後はいまここ居ませんが、この艦の副パイロットのアニエル少佐は後で紹介します。最後に子供達の後ろに居るのが生体アンドロイドで子供達の護衛兼メイドのエツコです。』
それぞれ『宜しくお願いします。』と挨拶して、お茶の時間を再開した。
いや、しかし女性のコミュニケーション能力は凄いな、直ぐに打ち解けて話を始めている。
俺とトァカミさんなんてテーブルの隅っこでお茶を啜っているだけで会話に入れないよ。
まぁ。トァカミさんは何時もの如く情報端末を起動して難しい本を読んでるんだけどな。
するとミナちゃんが俺に寄ってきて『ねぇねぇ。何時ものお菓子作って。』とおねだりして来た。
『良いけど、何時ものってどれの事?』
『いちごとか、ももとか、ピカピカしてるやつ』
『あぁ。フルーツタルトか。いいよ。じゃぁ。一緒に作ろうか。』
『うん。いっしょにつくる。』
俺は立ち上がってキッチンに行こうとしたんだけど、そこでアニエル少佐から艦内放送が入った。
『もうすぐ商隊と合流します。あとお菓子を作るのでしたら私の分は取って置いてください。』
コワ!なにそれ。盗聴器仕掛けてないよね。思わず机の下覗いちゃったよ。
アニエル少佐。やっぱ、ジェダ○の騎士だったのか。覚醒したのね。
俺とミナちゃんとあみちゃんでフルーツタルトを作っている間に、商隊と合流し惑星ゴルタナに向けて出発した。
その後は、何事もなく・・。まぁ、アマンダ達がフルーツタルトに騒いだ位で、順調に進み惑星ゴルタナに到着した。
惑星ゴルタナのコロニー型宇宙港の工廠でアマンダの機体を下したんだが、アマンダ達が見積もりを見て泣きついてきた。
どうやら、外部のスラスターの部分だけでなく、内部の二次コンプレッサーが全損、ジャネレーター内部の配管にヒビが入っているらしく、ジェネレーターを含めた出力系統を丸々交換しなくてはならないらしい。
しかもアマンダの機体は結構な年代物らしくこの辺境では部品がないため、ここで修理するには中央からの部品の取り寄せが必要になり、その輸送費を含めるとかなりの高額になってしまうとか。
そして今アマンダ達は俺とアニエル少佐の前で土下座している。
『頼む。ユースケの船で働かせてくれ。船の修理に18億Gなんてアタイ達には払えない。頼む。』
『えー。』
『あんな修理が必要な古い船を買ってくれる奴はいないし、廃棄するにしても手続き料と廃棄料で手持ちの金は無くなる。アタイ達みたいなスラム出身の元傭兵なんてこの星で雇ってくれるところなんて限られてる。娼館なんて行きたくないし、悪事になんて手を染めたくない。頼む。なんでもする。ユースケの船で働かせてくれ。』
『困ったなー。一様俺の船、帝国軍の駆逐艦なんだけどなぁ。アニエル少佐どう思う?』
『そうですね。悪い人たちではない事は分かっているんですが、陛下と提督に了承頂かないと問題になる気がします。』
『やっぱり、そうだよなぁ。』
とりあえず、アマンダ達は今まで貸していた3人部屋を使ってもらう事にして、陛下と提督にに確認を行う事にした。
その日の夕方俺は陛下と提督とアニエル少佐で通信会議を行い、陛下は俺が了承してるならOKとの事で、提督はとりあえず新人の試用期間として軍籍に置くが惑星クランドルの帝都に戻った時に講習と試験を受けてもらう事を条件に了承してもらった。
次の日、アマンダ達に会議の内容を説明し、試用期間として軍で雇用する事になったと伝えた。
同時に帝都に戻った時に講習と試験を受けなければならない事も伝えている。
アマンダ達は試験と聞いて肩を落としているが、士官の試験んじゃないんだし帝国軍の一般兵の試験なんてそんなに難しい物でもないと思うんだが・・。
『そんなに難しい試験じゃないと思うが、アニエル少佐とクラーザ少尉に教えてもらえ。』
こんな感じでアマンダ達が一緒に行動することになったのだが、今回の目的はあくまでラプター146-9cの調査である。
今回は傭兵組合から護衛料と海賊機9機撃墜の報奨金と有名な海賊だったのか懸賞金が掛けられていて、結構な量のお金をもらったので懐はあったかい。
俺達は食料と水の買い増しとアマンダ達が艦内で着る洋服を何着か購入し、調査に出発することにした。
ただ、航路に関して未開の地であるため不確定な情報が多く、量子スキャンによる航路の調査を3日かけて行い、ワープ航法が可能なルートを割り出した。
ワープポイントまで2日掛けて移動し、そこからワープを実施して1週間ついに彗星ストーミーベルトの手前までやって来た。
この1週間の暇な時間。俺は作りかけだった情報端末で動作するカードゲームでババ抜きを完成させたんだけど、これはこれで面白くはある。
ただ、カードゲームはやっぱりみんなでわいわい話しながらの方が面白い。と言うか顔の表情とかも見えれば心理戦とか出来そうだよなぁ。
それと、女性はすっぴんの顔を出すのは嫌だろうし、選んだアバターに名前を付けて出さないとダメだろうなぁ。
実際のプレーヤーの表情を読み取ってアバターに表情を付けるのか。なんか難易度爆上がりなんですが・・。
とりあえず、チャット機能だけは付けてから公開しよ。
まぁ。カードゲームの事は置いておいて、彗星ストーミーベルトの攻略法を計算しなくては。
トァカミさんから量子スキャンで得た彗星ストーミーベルトの動きをウラスに搭載されているコンピュータに投入し航路を計算しているんだが、あんまり船から近い場所を計算していても、計算結果が出るころにはポイントが通りすぎてしまって役に立たないので、彗星群の進行方向とは逆の結構先の方から計算しなくてはならない。
しっかし、この彗星群というか岩石群。移動速度もそこそこあるんだけど、縦の幅がどの位あるのか目視ではさっぱり分からない。
もう、でっかい穴の開いた壁が動いているみたいだ。
今回ここに来るにあたって、ミサイルはもちろん多めに摘んできたし機雷等も武器庫に積んできた。
まぁ。使わずに済めばそれに越したことはない。
よし、計算結果が出た。
俺はウラスを壁に沿って、彗星群の進行方向と速度を同期させて進んだ。
当然、自動姿勢制御は切ってある。自動姿勢制御で左右に曲がる度に機体をバンクさせてたら、彗星群の岩石にぶつかってしまう。
俺はタイミングを見計らって彗星群へ飛び込んだ。バッチリ、計算結果の通りだ。
この後は、機体を15度傾けて傾けた方向に機体をスライドさせるように移動し、傾けた機体を元に戻す。
と、まぁ、イライラ棒的な動きを30分近く行って、やっともう少しで脱出出来る。もう、精神的にも体力的にもくたくただよ。
”ガガガッ”
やばい。気が抜けたのか、垂直尾翼にかすった。
幸いにも、シールドが押し戻したのか、破損したような感じではないのが救いである。
えー!今度はかすった岩石が押し戻されて、隣の岩石にぶつかり、その隣の岩石にと連鎖的にぶつかっていき、ウラスの脱出出来る空間が無くなったんだけど・・。
『トァカミさん。すいません。俺のミスで脱出する空間が無くなってしまいました。機雷を放出するんで、量子転送で機雷を移動させて右斜め後ろの岩石にぶつけて岩石の速度を落とせませんか。』
『計算と転送設定をするので少し待て。』
『・・・。』
『よし、設定は終わった。計算のの結果も出たが、うむー。機雷が爆発してから15秒以内にこの空間を出ないと、上部の岩石が下がってきて潰されるが大丈夫か。』
『それしかないんですよね。やりましょう。このままではどちらにしても、ここから出られないですから。』
『分かった。機雷放出の時は声を掛けてくれ。それと爆発してからは私がカウントダウンする。』
『了解です。では機雷放出準備!3・2・1。放出!』
『転送空間でキャッチ。転送!よし。爆発確認!』
俺はウラスの左側の姿勢制御用スラスター全開にした。
『15、14、13、12、11、10、』
カウントダウンが進む中、機体を微妙にコントロールしながら横滑りさせていく。
『9、8、7、6、5、』
冷や汗が、頬を伝い上着に落ちた。
『4、3、』
手にも汗をかいて、操縦スティックが滑りそうだ。
『2、1、』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます