第30話

3-4

●クランドルン大学と惑星情報_3


アニエル少佐との買い物も終わり、今は皇帝陛下の私的な区画の食堂?で陛下が待っていてくれた。

普通公の場だと俺達が先で陛下は一番最後に来るものだが、私的な食事会だからいいのか?


『へいか、おまねきいただきありがとうございます。』

お、今日はあみちゃんが率先してカテーシーをしながら挨拶している。

ミナちゃんも一緒にあみちゃんを見ながらカテーシーをしてるし。

陛下は『よく着たなぁ。挨拶も出来て偉いぞー。』とあみちゃんとミナちゃんの頭をなでている。

『アニエルお姉ちゃんに教えてもらったの~。』とあみちゃんが言うとミナちゃんも『あたしも、教えてもらったー。』といつもとセリフが逆なんだが、嬉しそうに答えている。

陛下も『そうか。そうか。』と目を細めている。


当のアニエル少佐は今現在剥れている。

俺がドレスを着たアニエル少佐を褒めなかったかららしい。

そんな事言われても、俺貴族じゃないし。そんな習慣知らないし。


今の服装はアニエル少佐は派手ではないけど綺麗なドレス。俺はモーニングのようなスーツ。服屋で陛下に謁見するって言ったらこの服出してくれたんだよ。

佐井田さんもスーツなんだけど、タイトスカートでどちらかと言うと授業参観のお母さん見たいな服。言うと怒られそうだから言わないけど・・。

子供達も子供用のフリフリが沢山付いた可愛いドレスだ。あみちゃんがピンク、ミナちゃんはパステルな黄色。どっちも可愛いぞ。


夕食の料理はフランス料理のコースのように前菜から始まって、メインはお肉、最後にデザートが出た。


食事も終わり、陛下と俺とアニエル少佐はサロンと言うか、リビングと言うか豪華な応接セットが置いてある部屋に移動した。

これから、陛下に報告と確認をするので、佐井田さんと子供達は別室で待っていてもらっている。

まぁ。報告の方はレポートとして既に提出済みなので、今日は口頭での報告で雑談の続きのようなものになるが、一様お給料も貰ってるし、形式だけでも整えておこうと思っての事だ。


俺達がソファーに座るや否や陛下が問いかけて来る。

『それで、アニエルはなにを剥れているのじゃ。』

『だって、叔母様、ユースケさんが酷いんです。私が綺麗だって言ってもらいたくて実家で何を着ようかさんざん悩んで持ってきたドレスなのに、一目見てプイってしたんですよ。もう。子供達には『かわいいよ。』『お姫様みたいだね。』って声を掛けてるのにぃ。』

『フハハ。なんじゃ。アニエルは子供達に嫉妬しておったのか。』

『そっ、そんなんじゃ・・。』

『フフフ。あんまりユースケ君を困らせると嫌われてしまうぞ。それはそうとユースケ君はどういう女性が好みなのじゃ。』

なっなんだよ。急に俺の方に話が飛んできたぞ。

『そうですねぇ。容姿はあまり関係ない気がします。俺と要るときは兄妹みたいに付き合える方が好みですかね。』

『具体的にはどうなんじゃ。』

『んー。お会いしてる方が少ないので難しいいですね。まぁ、カムミムさんなんかは好みなんですが、なんせトァカミさんの婚約者ですし、どちらも好きあってますからね。なんであの二人は直ぐにでも結婚しないのですかね。』

『アニエルは好みではないのか?』

おいおい。本人のいる前で突っ込んでくるな。

『容姿的には美人過ぎて俺には釣り合わないでしょう。ただ、時折見せる子供みたいな所は好きですよ。だから、美的センスがない俺が言うのも何ですが、今日の装いはちょっと大人すぎてしまって気後れしてしまいますね。』

『フフフフ。良かったのう。アニエル。嫌われてはいないようじゃぞ。』

『知りません。』

アニエル少佐が赤い顔をして、そっぽ向いちゃったよ。


『あー。それでは簡単ですが、活動の報告して宜しいですか。』

『いや。報告はレポートで貰っておるし、まだ、帝国内の近隣を移動しただけじゃろ。今回は説明しなくても良いぞ。それより、何か相談事があると言っておったのう。どんな事じゃ。』

『はい。では報告は割愛させて頂きます。それで相談なんですが、お借りしている戦闘艦ウラスを改造しても大丈夫でしょうか。主に内装なのですが。』

『ふむ。どうしたいのじゃ。』

『改造したい点は4つありまして、1つ目は居住スペースが殺風景で壁紙をはるか壁材を変更するかしたいのです。まぁ戦闘艦なので当たり前ですが今は金属むき出しの一面金属色で、子供達も危ないですし安全のためにも、ここは最優先で改造したいです。』

『なんじゃ。そんなことは全然問題ないぞ。子供たちの危険が無いように改造して良いぞ。』

『分かりました。それで2つ目と3つ目は部屋の使用目的の変更したく、これも改装なのですが、まず、会議室が利用しないのに無駄に大きいので一部を改装してトレーニングスペースにしたいのと、一般兵室の3人部屋が3室あるのですが、これも私の部下に一般兵も居ないので2人部屋の下級士官室にしてしまいたいです。』

『会議室はそんなに大きかったかのう?』

『はい。定員20名で艦長の私室と執務室を合わせた場所より大きいです。』

『そうか。まぁ。フレーム自体を変更するのでなければ大丈夫だと思うが、一様、軍の技官に確認してから改装するのじゃぞ。あと兵の部屋は一室ずつユニットだったと思うのじゃが、これも技官に確認して改装を進めてほしい。』

『最後は兵器の事になるのですが、現在搭載されている翼端部の電磁式20mm実態弾連射砲が今のままでは使いどころがなく、トァカミさんの技術を使って遮蔽物の裏側に実態弾を送り込めないかと考えております。ただ、まだこの件はトァカミさんに話していないので実現できるかは分かりませんが、実現できれば強力な武器になると思われます。とりあえず出来るか出来ないかは別にして許可だけ取って置ければとご相談させて頂きました。』

『また、ユースケ君は物騒な事を思い付くものじゃな。実現したらさらにトァカミ君の技術は外に出せなくなるぞ。』

『ですよねー。ただ、安全のためにお願いして見ようとは思ってます。』

『分かった。但し成功したら連絡をするのじゃぞ。それと提督にはこちらから情報を共有して置く。』

『有難う御座います。では艦内の改造に関しては明日にでも提督に話してみます。兵器に関してはトァカミさんの了承が取れたら一度陛下に報告します。』

『うむ。宜しく頼む。あぁ。そうじゃ。今後の予定も聞いておこうかの。』

『そうですね。まだ日程が決まってないのですが、来週か再来週あたりにクランドルン大学で生物の生息出来そうな帝国外の惑星の講義を受けてきます。その情報から調査する惑星を決めて実際に行って見ようと考えており、都度々になってしまいますが、行先はご報告させて頂きます。』

『分かった。ん-。ただな、今はゴラン星系には近づくなよ。隣国と戦争をしておっての。まったく、わらわは戦争してまで図版を拡大したいなどとは思っても居ないのに勝手する奴が居って困ったものじゃ。』



10日後、俺とトァカミさんとアニエル少佐はクランドルン大学で講習を受けた。

大学の授業なんて何年ぶりだろう。

トァカミさんは気まずそうにしているし、アニエル少佐はワクワク顔だ。

そういえば、アニエル少佐の大学時代の話は聞いた事がないな。

まぁ。俺も話したことがないからお互い様か。


まずは、ギュンター助教授の宇宙形成学の授業だ。


何故か受講している生徒たちが中盤以降の席に座っているので不思議に思っていたが、ギュンター助教授の授業が始まってその理由が分かった。

ギュンター助教授の授業では3Dホロ映像を使って行われるようで、最前列に座ってしまうとほぼ真上にその映像が映し出されていて、一時間真上を向いて授業を受けるのはそりゃキッツいよね。

まぁ。俺達は最初から一番後ろの席に座ってるんだがな。


ギュンター助教授の授業の内容を簡単にまとめると以下のようになる。

まず、宇宙創成期の定説ビッグバンにより宇宙が広がり始め、約3分後には冷却されクォークとグルーオンという素粒子が誕生した。

さらに膨張と冷却が進むと、陽子と中性子が生成され、原子核が誕生した。

そして宇宙が十分に冷却し、中性水素原子が安定的に存在できるようになった。

中性水素原子は光を透過するため、宇宙は透明になり、光が自由に伝わるようになった。この現象を「宇宙の晴れ上がり」と呼ぶ。

「宇宙の晴れ上がり」以降、重力の作用によって中性水素原子が集積し、次々と星や銀河が誕生していった。


そして、生物に不可欠な水が存在する惑星は、ビックバンが発生したと思われる地点から一定方向の三角錐の形にしか観測されていない。

この三角錐の範囲の事を「ハビタブルゾーン」と呼ぶ。

「ハビタブルゾーン」は頂点の角度はさほど大きくはないが、辺の長さが長大になるため、底辺部の空間は広大なものとなる。

そして、クランドルン帝国は三角錐の頂点からおおよそ2/3位の距離で三角錐の中心線から外周の辺までの半分くらいの位置にあり、その大きさも広大だと思われているクランドルン帝国だが「ハビタブルゾーン」と比べると蟻程度にしかならない。

また、現在の技術では観測の難しい場所に同じような「ハビタブルゾーン」が存在する可能性は否定できない。


と、まぁ。ギュンター助教授の授業はこんな感じであった。

なるほど、地球を探すのに全宇宙を放浪しなくて良い事は分かった。



次の授業は、クラリッサ助教授の宇宙生物学だ。


クラリッサ助教授の授業の内容を簡単にまとめると以下のようになる。

まず、生命の誕生には水以外に大気の存在が重要になる。

惑星は誕生当初、高温で火山活動も活発な状態で、大概の場合、大気も酸素はほとんどなく、メタン、アンモニア、水素、二酸化炭素などのガスが主な成分となる。

ただ、この状態から生命がどのように誕生したのかは、まだ解明されていない。

ただし、有力視されている仮設が存在し、以下の様になる。

1、化学進化説: 無機物から有機物が自然発生し、さらに複雑な有機物が合成されて生命が誕生したとする説。

2、タンパク質先行説: 最初にタンパク質が誕生し、それが遺伝情報を伝えて生物が進化したとする説。

3、RNAワールド説: 最初にRNAが誕生し、それが遺伝情報と代謝機能を担って生物が進化したとする説。


上記の1~3共にタンパク質の生成がキーワードになるが、タンパク質を構成する基本単位はアミノ酸となる。

このアミノ酸がどのように生成されたかも判明していない。これに付いても以下の2つの仮説が存在する。

①アブイオジェネシス: 無機物からアミノ酸が自然発生したとする説。

②宇宙起源説: 隕石や彗星などが惑星にもたらしたとする説。


そして、何億年もかけて進化し、淘汰され、生き残った種族の中から文明を手にする者が現れ、その間にも環境の変化に取り残されて脱落して行く者がおり消えてゆく。

一時覇権を取った種族でも環境の変化に適応できなければ滅んでゆく。たとえそれが自分達の作り出した環境でも同じように滅んでゆく。

その環境に適応した次世代の覇権者にとって代わられ、過去の文明は途切れ新しい文明が作られていく。

全ての生物が環境に適応出来なかった場合には、その惑星上に生物が存在しなくなる。

ただ、それは宇宙や惑星からすればそれは一瞬の出来事で、惑星が誕生した時点と何も変わらない。

もしかすると、我々が探しているアミノ酸の起源は前時代の文明の遺産かもしれない。


そして、現在、帝国の図版外で確認されている水と大気が存在する惑星の代表的な物を以下に記載する。

但し、これは観測されていると言うだけで、観測されていない惑星が他にも存在する可能性は大いにある事に注意が必要である。


(以下、距離が近い順)

ラプター146-9c:クランドルン帝国から約42万光年離れた最も近い恒星ラプター146-9を周回する惑星。

グッジャー 1002b:クランドルン帝国から約110万光年離れた赤色矮星グッジャー 1002を周回する惑星。

ケニー 182b:クランドルン帝国から約360万光年離れた赤色矮星ケニー 182を周回する惑星。

トライピット-1e:クランドルン帝国から約 395万光年離れた超小型恒星トライピット-1を周回する惑星。

ルハス 1140b:クランドルン帝国から約400万光年離れた赤色矮星ルハス 1140を周回する惑星。

ケプラー186f:クランドルン帝国から約490万光年離れた赤色矮星ケプラー 186を周りを公転する惑星。

ケッパー53b:クランドルン帝国から約300万光年離れた恒星ケッパー53を周回する惑星。

プロマキシ・シータ(θ):クランドルン帝国から約1400万光年離れた恒星であるプロマキシを周回する惑星。


と言う感じで、クラリッサ助教授の授業も終わった。


なるほど、ただ太陽系の恒星太陽は赤色矮星ではないから、行くとしたら「ラプター146-9c」「トライピット-1e」「ケッパー53b」「プロマキシ・シータ(θ)」になるな。

後は補給をどうするか考えておかないといけないな。










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