第26話

2-21

●ロボとお芋ほり


◆----------

なんだか予感がする。

今日言わないと、ずっと言えない気がする。


私のモヤモヤが何か分かった。

いえ、最初から分かっていたのかもしれない。


私は大佐に、ユースケさんに恋をしている。


顔はちょっと幼く美青年って感じではないけど、悪人と戦っている時の凛々しい目、少し子供っぽいけど誠実な態度。

ユースケさんの事を思うと心が弾む、ドキドキする。

顔が熱くなる。泣きたくなるほど。


学生の頃でも、こんな思いをしたことはない。

いいなと思った人も、話をすると幻滅した。

皆、私の父に媚びを売りたいだけ、縁を結びたいのは私じゃない。


でも、ユースケさんは違う。ちゃんと私を見てくれる。でも、少し遠ざけられてるのが悲しい。


今日は2人切りだし、他の皆に見られていない。

皆に見られていたら、私は言い出せなくなるだろう。今日しかない気がする。

でも、拒絶されたら、線を引かれてしまったら、私はどうしたらいいんだろう。

考えただけで、涙が出て来る。


今日行かなくては、絶対今日。

涙があふれる。嗚咽が漏れる。でも、でも・・。


◆----------

『はー、さっぱりした』

俺は船に戻り、再度格納庫の掃除をしていたが、匂いが取れず一行埒が明かない。

もう、夕方になってきてしまい、一旦掃除を止めて風呂に入り部屋で寛いでいた。


するとドアをノックする音が聞こえた。今日はアニエル少佐しか居ないけど、どうしたんだろう。

俺は、立ち上がって『はい。』返事をし、ドアを開けるとアニエル少佐が俺の胸に飛び込んできてしがみついた。


なっ何だこれ。泣いてる?何か有ったのだろうか。

ラーメン食べすぎて太ったとか?いやいや。体重の話は女性には厳禁だった。

それに、これ背中に手を回してさすった方が良いのだろうか?

でも、なんか抱きしめてるみたいになっちゃわないか。セクハラとか言われたくないし・・。

びっくりして広げた手のやり場がないんだけど・・。もういいや。背中をポンポンしとこ。

『どうしたんだ。陛下に何か言われたのか。』

アニエル少佐は小さく首を振る。

『じゃあ、公爵様か提督に怒られたのか。』

アニエル少佐はまた小さく首を振る。

さっぱり分からん。やっぱり、太った・・。いや、違うよね。ごめん。


なな、なんか、本格的に声を上げて泣き出したしたんだけど。

俺、何かしたかな。嶋さんの家紋が入った4004チップしか積んでない俺の頭では理解できないって。

はっ!俺が「太った」って考えた事をフ○ースで読み取ったのか。流石だ、ジェダ○マスター。

心を無にしなくては。俺はポールハンガー。俺はポールハンガー。俺はポールハンガー・・・。違う気がする。


5分経しようやくアニエル少佐が泣き止んだ。

俺、頑張った。5分間、ポールハンガーになり切った。背中をポンポンはしてたが。


アニエル少佐が俺の胸から頭だけ放し俺の顔を上目使いに見つめて来る。

ずるい。するいよ。美人さんに涙が溜まった目で上目使いで見つめられたら、俺我慢できるか分からないじゃないか。

そんなアニエル少佐が不安げに口を開く。

『わたし、私、ユースケさんの事が好きです。大好きになってしまいました。だから、だから・・。』

俺はアニエル少佐の口を立てた人差し指で塞いだ。

『今は、まだダメなんだ。俺の故郷、いや子供達を親がいる場所へ届けて会わせてやりたいんだよ。ごめん。』

アニエル少佐は驚いて涙が引っ込んだようだ。

『俺、精神的に軟弱なところがあるからさ、多分、こっちで結婚して奥さんが出来たら、きっと故郷を探すことが御座なりになってしまうと思うんだ。だから、俺は結婚して大切な人が出来てしまわないうちに故郷を探して、子供達を親に合わせてあげる。これが今の俺の目標だし、希望なんだよ。この目標が叶うまで待ってくれる。』

アニエル少佐は小さく頷いてくれた。

俺は立ち話も疲れてきたので、アニエル少佐をベットに座らせ、俺は椅子に座ろうと思ったんだが、アニエル少佐が俺のシャツを握って放してくれなくて、いっしょにアニエル少佐の隣に座った。

『ただな。俺達こっちの食べ物と一緒に添加されてるナノマシーン用栄養素も食べちゃったでしょ。それで子供達が後々嫌な思いをしないか心配もしてるんだよ。』

アニエル少佐が不思議な顔をして首をかしげている。

『あぁ。俺の故郷って普通は80歳位しか生きられないんだよ。長くても100位?。でもあの子達は300歳位まで生きられるかな?故郷に付いたら普通の食事になるからね。そんな中80歳を超えても若いまま、100歳を超えても見た目が20代後半だったら、変だ、おかしいって思われるよね。』

アニエル少佐も分かってくれたようだ。

『それで、俺の故郷に八尾比丘尼伝説ってお話があるんだけど、その主人公の八尾比丘尼さんが・・・・・・・・・・・。』

そんな、俺の故郷の話を長々と話していたら、夜も結構な時間になってしまい、アニエル少佐も色々あって疲れたのか座ったまま俺に持たれて寝てしまった。

起こすのも忍びなかったので、そのままアニエル少佐を俺のベットに横たえて、俺はソファーにでも寝ようと思ったんだが、何だろこの執念?俺のシャツ放してよ。

もういいや。俺はアニエル少佐に掛け布団を掛けてやり、その隣に横になった。

Hな事なんてしようと思ってないぞ。添い寝だからな。添い寝。



次の日、俺が目覚めたら、アニエル少佐が布団を両手で引き上げて顔を半分出してこちらを見つめている。

うわっ。何このすごくかわいい生き物、やばいルパ○ダイブ決めたくなる。

『・・おっおはよう。』

『おはよう・・・ごじゃいましゅ。』

あっ。かんだ。やば、おっ俺の煩悩が・・。

頭の中で悪魔が囁く。「へっへっ。やっちゃえよ。ほら、ぶちゅーっと行っとけって。据え膳食わねばって格言もあるだろ。」

てっ天使くーん。助けてー!「えっ!俺。いいんじゃね。相手も乗り気だし。」

・・・。俺の頭の中には天使が居なかった。


俺は断腸の思いでベッドから転がり出て、『シャワー行ってくる。』とダッシュで部屋を出た。

途中、バスタオルを忘れた事に気づき部屋に戻ったが、アニエル少佐がベットから降り掛け布団をめくってシーツを触りながら何かを探しているようだった。

ドアを急に開けたのにアニエル少佐はびっくりしたのか掛け布団を後ろ手に持って振り向いた。

俺は『バスタオル忘れた。』と言ってクローゼットからバスタオルを取り出し、再度風呂に向かって部屋を出た。


その後は何事もなく、俺は掃除の続きをして、市場からの荷物が届くのを待った。

・・2人で食べた朝食はちょっと気まずかったが・・。


そして帰路に着いたが、すんなり惑星シュナジーコに帰ることが出来、今はジーコ男爵に夕食がてら報告しているところだ。

『いや。海賊船と交戦した時はどうなるかと思いましたよ。最終的には少し漏れてしまいましたが、容器もヒビが入った位で補修もすぐ出来ましたから良かったです。それとメイン道りの端っこに「バナス」って店があって、そこの「具とパスタ入りスープ」が美味しかったんですよ。俺の故郷にあったラーメンって料理にそっくりだったんですが、見た目が酷くて誰も店に入っていませんでしたね。なので見た目が良くなるようにちょっとアドバイスして来たんですが、今後が楽しみです。』

ジーコ男爵は『そうか。分かった。』とうんうん頷いている。


ただ、子供達がラーメンに反応して『私も食べたい。』と騒いでいる。

『またね。今度行こうね。』と諭したら、『今度って何時。明日?』と言われてしまった。

佐井田さんが『あら、ミナちゃん。明日は雄介とお芋ほりに行くって言ってなかった。』

『行く~!雄介。明日お芋ほりしよー!』

『分かった。明日お芋ほりに行こうな。』


こうして、明日は芋ほりに行くことが決まった。

そんな子供達との話し合いも終わったころ、ジーコ男爵から男爵の執務室に誘われた。


何だろうと思いながら男爵の執務室へ向かった。

執務室へ入ると、奥さんのサリミムさん、カムミムのお姉さんのアムミムさんとその旦那さんのマスォンさん、トァカミも居た。

ジーコ男爵はトァカミさんと俺を見て話を始めた。

『さて、この話はアニエル様と佐井田さん、カムミムにも後で話しておいてくれ。』

ジーコ男爵は、フーとため息を吐き出すと本題に入った。

『クラーサ嬢の治療だが、本日の午前中で完了して、軍の医者は駐留軍の宿舎に戻った。治療方法に関しては既に知っていると思うが、ナノマシンと催眠術によって記憶を一部封印したとの事だ。』

ジーコ男爵は、一旦話を切り、悲しそうに話を再開した。

『クラーサ嬢には家族の中でセナミノフ子爵とその妻、長男と次女は海賊の襲撃で死亡した事にしている。幸いだが次男と長女は家を離れていて助かった事になっている。』

ジーコ男爵は、再度話を切り、俺を見てから話を再開した。

『クラーサ嬢自身は海賊に捕まっていたが、ユースケ君によって救出された事にしたらしい。ユースケ君の記憶も消そうとしたらしいが、何か抵抗があって消せなかったそうだ。』

ジーコ男爵は辛そうに話を付け加えた。

『俺はな。隣領と言う事もありクライン・ダ・セナミノフ子爵とは親しい仲だったのだが本当に残念だよ。クラーサ嬢にも幼いころに会っているのだがな。』

ジーコ男爵は忘れていたのかもう一つ話を付け加えた。

『あぁ。そうだ。医者が強い刺激に対して一時的に封印が解ける場合があるから注意しろとも言っていたな。』


ジーコ男爵の話は終わり、皆それぞれに部屋を出て行った。

俺も部屋を出て、借りている部屋に着くと情報端末を取り出して、アニエル少佐にジーコ男爵からクラーサ少尉の治療に関して報告があった事とアニエル少佐と佐井田さんに伝えたいので子供達が寝るまで待っていて放しいとメッセージを入れた。

アニエル少佐からは直ぐに返信があり『分かりました』との事だった。

次いで佐井田さんにもジーコ男爵からクラーサ少尉の治療に関して報告があって、音声チャットをしたいから子供たちが寝たら連絡をくれるようにメッセージを入れた。

少ししてしてから、佐井田さんからメッセージの返信があり、子供たちは寝たとの事で、音声チャットルームのアドレスとパスワードと送り、チャットで2人とクラーサ少尉の治療に関して情報共有を行った。


次の日、朝早くから俺たちはジーコ男爵の畑に芋ほりに来ている。

今日は佐井田さんに子供達、アニエル少佐にクラーサ少尉、カムミムさんにアムミムさん、後、ジーコ男爵と俺。

トァカミさんは大学に定期報告と研究があるからと欠席。マスォンさんは毎度の如く領主の仕事の勉強中で今日は領主代行で欠席。

サリミムさんはメイド隊を指揮して家事仕事なので殆ど家からでない。


畑についた時に、俺達より早く来て作業の用意をしてくれている人達がいたんだが、よく見るとロボだった。

顔はキカ○ダー01のような感じだが、透明部分もなく色分けもなくシルバーの金属色だけで、見たまんまロボなんだけど、モンペを履いて、麦わら帽子をかぶっている。上はジャンパーのような作業着なんだが・・。


俺たちは、ロボが掘り返してくれた土を探って芋を取り出す係り。

子供達は大喜びで芋を掘り出していた。


掘り出した芋も大きくて、子供たちの顔位ある物もある。

それに、ロボ達が定期的にお茶をくれるし、子供達の顔に泥が付いたりするとタオルで拭いてくれる。

スゲー紳士だ。いや、あっちの紳士じゃないからな。

しかも、周りを見るとロボだけのチームもあり、掘り出すのが早い早い。トラクターと変わらないんじゃない。


俺達は午前中芋ほりをお手伝いしたが、そこでギブアップ。中腰での作業はキツイ・・。


お昼のお弁当を食べた後にアムミムさんに男爵邸まで送ってもらい、俺は申し訳ないのでおやつをを作る事にした。


まずはタルト生地を作って、その中に芋生地を入れて焼いてスイートポテトを作ろう。

タルト生地は型がないので耐熱の深皿で代用。

深皿にタルトの生地を敷いて焼いて、器の代わりにする。

中に入れるスイートポテト生地は芋を茹でて潰しバターと砂糖を加えよく混ぜる。

卵黄を半分入れて・・卵が大きいから半分でも多いな。まぁ良いか。生クリームをいれよく混ぜる。

深皿で焼いたタルト生地にスイートポテト生地を入れて上に残りの卵黄を塗る。卵黄は全部使わなくてOK。

後は190度に設定した自動調理器にお任せ。ww。

これを3つ作って、メイドさんに夕食後出してもらうようにお願いした。


夕食後、俺達はお茶を飲みながらスイートポテトを食べていた。

今回は1つのホールを6等分で2ホールを切って出してもらった。

残りはメイドさん達で分けてね。

いや、材料のサツマイモが美味しいからスイートポテトもうまいなぁ。


そんな中、クラーサ少尉が騒ぎ出した。

『なんか、今日はユースケ大佐とアニエル少佐の距離が近くありませんか。ずっとくっ付いてるし。』

『そうか?たまたまだろ。』

『いーえ。明らかにアニエル少佐がくっ付いてます。』

アニエル少佐も俺を腕を引っ張って組もうしない。

『ほら、やっぱり!』

だから、勝ち誇った顔をしない。アニエル少佐。

『うっ。ぐすっ。やっぱり。でも、大佐。私の裸見ましたよね。私貴族の娘なんですけど。裸見られら他の方と結婚できません。責任取ってください。』

えー。俺が見た事になってんの。クラーサ少尉が見せたんじゃん。

アニエル少佐、脇腹抓らないで、痛いって。

『ぐすっ。ユースケ大佐。えっぐ。わっ私、助けて貰った時から好きです。け、結婚してください。』

それを聞いたミナちゃんが、『わたしも裸で一緒にお風呂入ったよ。結婚してー。』と言い始めた。

『わたしも雄介すきー。責任取ってー!』とあみちゃんも言い始めた。

君たち、意味分かって言ってるのかね。フハハハハ。

『あー。もういいよ。みんな面倒見てやるよ。』

佐井田さん、なんで遠慮気味に手を上げてるの?

『私もお願いします。』

えー。佐井田さん。そんな素振り見せてなかったじゃん。


すると、突然ジーコ男爵が大笑いし始め『ユースケ君はモテモテだなぁ。』と言い出した。『羨ましいぞ。俺にも秘訣を教えてくれ。』

それを聞いたサリミムさんがすかさず『あなた、何処でモテようとしてるんですか。』と言い出した。

ジーコ男爵は、ハッとして『いやな。モテようとかではなくてな。羨ましいなぁーと・・。』

サリミムさんは『そうですか。ちょっと彼方に行きましょうか。』と言って、ジーコ男爵の耳を掴み引きずって行った。


それを見て俺はブルっと震えが来たが「口は災いの元」だなーと思ったよ。

いや、それより、何なの俺、厄年なの。女難の相が出てるとか。今までの生活を返して・・。





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