第24話
2-19
●初仕事と積み荷
ジーコ男爵邸に戻った俺達は早速ジーコ男爵に依頼を受けたことを報告した。
『ジーコ男爵、男爵の出されていた依頼をお受けしたのですが、どの位運べばよいでしょうか。』
『そうか。そうか。それは有難い。近頃は受けてくれる奴が居なくてな。助かったよ。それで、60立方m位詰めそうか。』
『はい、全然、問題ないです。』
俺の乗っているウラスは小型の駆逐艦とはいえ軍用戦闘艦だ。
その格納庫は長さ30m、幅25m、高さ10mとかなり広い。
普通はミサイル等の弾薬類を積んで置くのだろうが、俺は戦争に行くわけでもないので、それなりにしか積んでいない。
そこに60立方メートルを1列で積んでも、10立方mで一辺2.154m × 6 だから長さ12.924mだ。2列に積めば長さ6.462m、幅4.308mだ。
『分かった。じゃあ、明後日までに60立方m用意しよう。いや、良かった。これで惑星カレドナの方でも十分肥料が撒ける。』
『そうだ。雄介君。たい肥の運搬用の容器だが、Gにそれほど強くないから気を付けてくれ。使い捨ての容器にあまり金を掛けられなくてな。普通に飛んでる位なら問題ないが、戦闘機動なんてせんでくれよ。』
『わはは。こんな田舎に海賊も来やしないだろうから大丈夫だろうがな。』とジーコ男爵は言うが、なんか、フラグが立ったような気がする。
俺は、『・・はい。』と答えるしか出来なかった。
次の日の昼過ぎ、軍の精神科医の女医さんが到着した。
クラーサ少尉の治療で少しの間ジーコ男爵邸に滞在してもらう事になった。
治療としてはクラーサ少尉に催眠術を掛けて原因を把握し、ナノマシンと催眠術で原因の記憶を封印してしまうそうだ。
ただ、強い刺激があると1時的に記憶が戻ってしまう事もあるので、なるべく原因と同じような状況には立ち会わせないでほしいとの事だった。
そして、また次の日俺たちはウラスにたい肥を積んで出航した。
ただ、今回は場所が近いし、クラーサ少尉の治療の事もあるので、トァカミさんやカムミムさん、佐井田さんと子供達には残ってもらい、俺とアニエル少佐で行くことにした。
惑星カレドナはここから民間船で行くと星系内航行のためワープは使えず通常航行となるため4日間かかるが、俺の乗っているウラスは軍用戦闘艦になるので、3日で到着できる。
ワープも技術的には出来るのだが、他の航宙艦との接触の可能性があるため、原則禁止されている。
星系外と星系内とでは航行している航宙艦の数も違うし、星系外のワープはワープポイントを決めてそのルートを量子コンピュータで計算のして障害物や航宙艦の有無を確認し航行するためセロではないが、航宙艦同士が接触することはほぼ皆無である。
実際、ワープ航行が開発されてから今まで、正規ルートをワープした場合の航宙艦同士の接触事故は1度も起きていない。
まぁ。非正規ルートでのワープで海賊船同士が衝突し大破しているのが2件ほど見つかっているらしいが・・。
出航してから、1日半何事もなくアニエル少佐と操艦を交代しながら、惑星カレドナに向けて航行していた。
俺は暇だったので主操縦席をシュミレーションモードに切り替え、戦闘シュミレーションを行っていた。
するとアニエル少佐が、『大佐、1万5千キロ先の浮遊岩石に航宙船が居ます。船数4。』と言ってくる。
俺は即座に戦闘シュミレーションを中断して、通常操艦モードに切り替えた。
レーダーを確認すると確かに4隻の航宙船が岩石に纏わりついている。
『なんだろう。採掘船か。』
俺は、アクティブレーダーを起動し、相手に分かるようにピンガーを打った。
すると、岩石に纏わりついていた4隻の航宙船一斉に岩石から離脱し、明らかに逃走を始めた。
俺はやっぱりフラグだったかと肩を落としながら、広域通信を起動した。
『こちらは帝国軍所属艦ウラス。そこの4隻の航宙船止まりなさい。ポンダーが出ていないぞ。所属と艦名を通知しなさい。そこの4隻止まりなさい。』
一度マイクを切り、アニエル少佐と操艦を変わりスピードを上げた。
『ボス。ダメだ。追いつかれる。』
『くそー。岩石にへばり付いていたのになんで分かったんだ。仕方ねえ。反撃だ。反転しろ。』
俺はアニエル少佐に旋回砲塔のレーザー砲を任せ、自動姿勢制御を切ろうとして躊躇した。
たい肥の運搬用の容器が持つだろうか。
たしかジーコ男爵は戦闘機動と言っていた。ただ、それは自動姿勢制御を切らずに戦闘した時の話だ。
どうする。自動姿勢制御を切ってGを軽減させるような機動で海賊を倒せるか。
嗚呼もう。なんちゅう縛りプレイさせるの。
えーい。やけくそだ。
俺は自動姿勢制御を切って海賊船を迎え撃つことに決めた。
『アニエル少佐。悪いが俺は操船に集中する。海賊船への迫撃はたのむ。』
『了解しました。』
早速、海賊船は2隻づつ分かれて攻撃をしてきた。
レーザー砲を積んだ機体が二手に分かれ、そのサポートで1隻づつ付いている。
俺はレーザー砲を積んでいる2隻にだけ注意し、射線に入らないようにふんわり機体を動かし、レーザーを回避していった。
その代わり、パルスレーザーはバシバシ食らってるんだが・・。
『ボス。あの船動きがおかしいですぜ。』
『何処かイカレてるのかもな。チャンスだ。攻撃密度を上げろ。』
うお。あいつらミサイルまで撃ってきやがった。
アニエル少佐もレーザー砲で敵を撃っているが、俺の操艦に戸惑っているようだ。
俺はアニエル少佐に声を掛けた。
『アニエル少佐。ダンスだ。ダンス。はい。1,2,3。1,2,3。1,2,3。』
『大佐。何をこんな時に・・。あ。あれ。この動き・・。』
アニエル少佐も気が付いたようで、艦の動きのリズムに合わせて海賊船を続けて3隻撃墜していった。
『なんあんだ。あの船。あんなスローな動きしてるのに、レーザー砲があたらねえ。』
そんな最後の海賊船もアニエル少佐が撃ちはなったレーザーに爆散した。
俺は、戦闘が終わりホッとして、操縦席の椅子で脱力した。
アニエル少佐はなんだか興奮気味で『なんですか、あの船の動き。すごく優雅にレーザーを躱して、どうやったんですか。』と問い詰めてくる。
やば。思い出した。格納庫のたい肥の容器を確認しなきゃ。
俺は『すまん。操艦代わってくれ、格納庫の荷物確認してくる。』と言って、コックピットを飛び出した。
格納庫に付き容器を確認したが、問題はなく本当にホッとしたが、束の間、ガーン。と衝撃が走り、俺は格納庫の壁に捕まって耐えた。
艦内インターホンでコックピットに居るアニエル少佐に連絡を入れると、海賊船の残骸でミサイルが暴発して飛んで来たらしい。
慌てて回避したが、近くで爆発し衝撃が来たようだ。
幸い、機体に損傷ななく、再度、ホッしようとしたが、たい肥の容器がピシッと音を立て、中身が微妙に漏れ出してきた。
俺は近くにあった用具箱から急いで耐圧テープを取り出してたい肥の容器に近づきテープを張ろうとしたが、物凄い腐臭で嗚咽を起こし、涙を流しながらテープで容器を修理を行った。
その後の航行には問題なく、惑星カレドナの地上の宇宙港まで到着し、荷物を引き渡す事ができた。
ただ、格納庫が腐臭で大変なことになっており、停泊した2日間、デッキブラシと大型扇風機で掃除と空気の入れ替えをする羽目になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます