第23話

2-18

●航宙艇傭兵組合とGランク


あれから佐井田さんとカムミムさんに頼んで、アニエル少佐とクラーサ少尉を回収してもらった。

まぁ。実際にはメイドさん達が運んでいたのだが・・。


それから3日間、子供たちに付き合わされ、庭で鬼ごっこだの、かくれんぼだの、縄跳びだの、だるまさんが転んだだの、おままごとだのやらされへとへとだよ。

毎日、ローテーションで遊びが変わるんだが、もう、俺、おじさんでいいよ。

ホント子供は元気、世のお父さん、お母さんの偉大さに改めて敬意を表したいよ。

はぁ。ちっとも覚えてないけど、子供の頃の俺も両親をこんな風に引っ張りまわしていたんだろうか。


次の日、俺とアニエル少佐は買い出しに行くアムミムさんの車的な物に同乗させてもらい、宇宙港近くの町にやってきていた。

て言うか、アニエル少佐、俺の顔を見るたび頬を染めて視線を外すのやめて、俺まで恥ずかしくなるから。

そして、アムミムさんと待ち合わせの時間を決めて、俺たちは航宙艇傭兵組合へ向かった。


辿り着いた惑星シュナジーコの航宙艇傭兵組合はこじんまりした普通の事務所だったよ。

もちろん、カウンターがあって受付のお姉さんが居たけど暇そうだ。

俺はもっと広くて、人が多くてがやがやした雰囲気を想像してたから、肩透かし感がすごい。

受付カンターの向かいには銀行に置いてあるような長椅子が置いてあって、事務処理を待つ間はそこで待つようだ。

ただ、その長椅子も15人位しか座れそうにないし、今は誰も待ってないけど・・。


俺達は受付に行って航宙艇傭兵組合に加入したい事を告げた。

『すいません。航宙艇傭兵組合に加入したいのですが、お願いできますか。』

『はい。こちらの用紙に必要事項をご記入頂いて提出してください。』

『あ、こちら推薦状になります。』

俺は2通の推薦状を受付のお姉さんに渡した。

受付のお姉さんは『推薦状ですか。』と首をかしげている。

普通は航宙艇傭兵組合に加入するのに推薦状は必要ないみたいだ。

しかし、受付のお姉さんは『なな、なんですかこれ。帝国軍の押印と提督のサインが入ってるじゃないですか、それとこっちは、てて、帝室の押印?・・。』と言って、慌てて奥の部屋に駆け込んでしまった。


俺は先に渡された用紙の記入を済ましてしまおうと筆記用具を取り用紙に目を落とした。

まず、氏名と性別はいいだろ、住所は・・。どうしよう。俺住所不定なんだけど・・。

ソル星系惑星地球とか書いても分からんだろうし。

拠点の住所書いとけばいいだろうか。でもあそこ普段はシュバルツさん位しか居ないんだよな。

なのでアニエル少佐に住所をどうしたらいいか聞いてみた。

アニエル少佐は頬を染めてそっと自分が書いていた用紙を差し出してきた。

いや、いや、アニエル少佐の実家の住所を書けってこと、ダメだ、聞く人間違えた。


アニエル少佐に用紙を返して、情報端末を取り出し通信機能をオンにして、トァカミさんに連絡を入れた。

『雄介君。何か様かい。』

『はい。今航宙艇傭兵組合に来て加入手続きをしてるんですが、住所をどうしようかと思いまして。惑星エイメーヤの拠点にするのが一番無難なんですが、あそこシュバルツさん位しかいないじゃないですか。』

『なんだ。そんな事か、うちの実家の住所で出してしまって良いよ。実家には私から伝えておくから。』

『有難う御座います。分かりました。それでご実家の住所教えて頂けますか。』

『あぁ。そうだった。住所はクドラメーヤ星系惑星クドラ、クラドラド市クドラ子爵邸だ。』

『なんですかそれ。超簡単じゃないですか。』

『そりゃそうだろ。領主の家なんだから。一般の住民たちは○○市××何丁目何番地とかの住所になるぞ。』

『なるほど。そりゃそうですね。有難う御座いました。』

俺は通信機能をオフにして、用紙にトァカミさんの実家の住所を書いた。

なんか、アニエル少佐が頬を膨らませながら『トァカミさんの実家の住所を書くのなら、私の実家の住所でもいいじゃない。』みたいな事を言ってるが、全然違うからね。

後は用紙に搭乗機名をウラス、型番にFLK-0137-Cと記入した。


しばらく長椅子にに座って待っていると、奥から受付のお姉さんがジーコ男爵と同じ位のお年の男性とそれよりも若い男性と共に現れた。


そして、俺の前に来ると若い方の男がお年の男の持っている推薦状を指して怒鳴ってくる。

『お前ら、こんなもの持参しても優遇されると思うなよ。』

俺は、何のことだか分からず頭をかしげる。何か勘違いしているのは分かるが、正直面倒くさい。

俺は、無視して情報端末を起動し、トァカミさんに連絡を入れた。

『雄介君。今度はなんだい。』

『何か、傭兵組合の職員の方が怒ってらちゃるのですが、意味が分からないので、ジーコ男爵に取りなしてもらえないかと思いまして。ジーコ男爵って今いますか?』

『あぁ。今私とお茶をしている。代わるよ。』

そういって、トァカミさんはジーコ男爵に情報端末を向けてくれた。

『雄介君、聞こえてたが、傭兵組合のサムナンに代わってもらえるか。』


俺は誰がサムナンさんなのか分からないので、情報端末の画面を傭兵組合の職員の方に見えるように差し出した。

『ジーコ男爵がサムナンさんに代わってほしいと言ってますが。』

若い男の方はそれも気に入らなかったのか剥れている。


年の行った方の男性が俺の携帯端末を受け取って話を始めた。

ジーコ男爵が『何か問題が有ったのか?』と聞くと、男性は『こんな推薦状を貰ったことが無くてな。』と結構気軽に話している。

『わははは。そうりゃ、そうだろうな。こんな田舎にそんなもの持ってくる奴はおらんはな。ただな、ちょっと訳ありではあるが、彼らは帝室の関係者でな。女性の方は公爵様のご令嬢だし、男性の方は陛下の遠いご親戚だ。首が飛ばないように対応しろよ。物理的にもな。』

『分かった。ただな、何か要求されても対応できんと思うがの。』

『?何か要求されたのか?』

『いや、何も。まだ話すらしておらん。』

『なんだ。彼らが無茶な要求をする事は無いと思うがな。雄介君、何か要求があるのか?』

俺は『いえ。ないですね。私達は軍籍があるのですが、極秘任務上で傭兵組合員としての登録が必要で、陛下と提督に一筆書いて貰っただけなんで。』

『なんだよ。サムナン。ちゃんと話を聞いてから対応しろよ。今度、綺麗なお姉さんの居るお店でおごりな。』

『ちょ。ちょっと待て。話を聞かないで突っ走ったのは此奴だぞ。』

『そうなのか。ウルナン君。分かった。監督責任としてサムナンが半分、ウルナン君がもう半分な。』

サムナンが肩を落とし、俺の情報端末を返そうとしてきたんだが、横から受付のお姉さんにさっと持っていかれてしまった。

『おじさま。カムミムが帰って来てるんですか?』

『ん?あー!ジュリアン君か。ああ、帰って来ているぞ。カムミム。ジュリアン君だぞ。』

いやいや、俺の情報端末かえして。

それから、しばらく受付のジュリアンさんとカムミムが話していたんだが、俺はバックで流れている音の方が気になって仕方なかった。

まずは、ジーコ男爵の奥さんのサリミムさんの声が聞こえた。

『あなた、綺麗なお姉さんのお店とはなんですか。』

『い、いや。なに。サムナンに奢って貰うんだったらちと高い店が良いかなと・・。痛い痛い、××××××××・・・・。』

途中から聞こえなかったが、気になる・・。


結構な時間を食ってしまったので、アムミムさんと待ち合わせしている事をサムナンさんに言って、俺達は一旦待ち合わせ場所まで移動した。

待ち合わせ時間までまだ少し時間があったが、既にアムミムさんは待っていてくれた。事情を説明しアムミムさんには先に帰ってもらうように伝えたら、『それは、大変でしたね。』と言って、タクシー乗り場を教えてくれた後に帰って行った。


俺達はもう一度航宙艇傭兵組合に戻り、航宙艦戦闘技能確認をシュミレーターで行い。傭兵組合員として登録出来た。ランクは一番初心者のGランクだけどな。


そこで、早速、最初の仕事を受けるのに、登録時に情報端末に入れた組合員専用のアプリを起動して、Gランクの仕事を探した。

Gランクの仕事もそれなりに沢山有るのだが、如何せんこの付近の仕事がない。

まぁ。どこの仕事もGランクだと何かの輸送の仕事なんだけどね。


そんな中、1件だけ惑星クドラの仕事があった。

しかも、依頼主はジーコ男爵だった。

まぁ、依頼の内容はたい肥の運搬なんだけどね。

なんか、この依頼は常設依頼みたいで、運搬する10立法メートル当たりで値段が決まっているようだ。

運ぶ量は依頼主と相談みたいだから、後でジーコ男爵に相談してみるか。

俺たちはとりあえず、これしかないし、この依頼を受けることにした。


その後、街をぶらぶらウインドショッピングしながら、タクシー乗り場に向かった。


タクシー乗り場に到着すると、そこで偶然にここの司令官のクラナム大佐とあった。

クラナム大佐は仕事帰りだが、明日は休暇でこれから実家に行くとのこと。

普段はこの街にある自宅に住んでいるけど休暇という事で実家に行く事にしたら、奥さんと子供は自家用車で先に行ってしまって、自分はタクシーで行くらしい。


俺はそこで思い出したので射撃練習場の事を聞いてみた。

『射撃の練習をしたいのですが、駐留軍の射撃練習場は貸して頂けるものですか。』

クラナム大佐とは『利用する時に書類にサインが必要だが問題ないぞ。俺が居なかったらこの番号に連絡をくれ。』と情報端末の連絡先をくれた。

『有難う御座います。駐留軍の施設に行ったら連絡させて頂きます。』と答えた。


クラナム大佐は『では、またな。』と手を振ってタクシーに乗り込んでいった。

俺達も次のタクシーでジーコ男爵邸に戻った。着いたら依頼の件の相談しなくては。















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