第18話

2-13

●自動調理器と航宙船シュミレーションシステム


昨日は夕方まで三次元行列と戦闘を繰り広げ、その後クドラ子爵の用意した契約書にサインをして終わってしまった。

今日はクドラ子爵に惑星エイメーヤのパプラス金属鉱床の説明をしてから三日後である。

持ってきたサンプルのパプラス金属も売り、やっと自分のお金が出来た。

あの金属すっごい高い。10cm角の立方体が1億Gだって。俺の取り分で4000万G。今まで地球で6年間働いてた時でも4000万Gなんて見たこと無いし、預金通帳の記載に乗ったこともない・・。


それで、俺達は今カムミムさんの実家に向かう前の買い出しで、惑星クドラの商業施設街に来ている。

この商業施設はとにかくバカでかい建物で東京ドーム2個分くらいある。

地下は2階で、高さは5階とそれほど高くない。

聞いてみると、この商業施設は元々あった、個々のお店を1つにまとめて作ったそうで、4階と5階はその人たちの住居になっているそうだ。

まぁ、4階と5階の全てが住居と言う訳ではなく、この商業施設に出店している会社の事務所だったり、倉庫だったりと色々だそうだ。


地下2階は総菜などの厨房や倉庫、地下1階は各種食品、惣菜店、菓子店、フードカートリッジもここで購入できる。

地上1階は化粧品店、洋品店、雑貨店、寝具店等の生活用品が販売されている。

地上2階の半分は専門店街?各家電や情報端末、コンピュータや家具等がメーカー毎にブースを構え商品を販売している。量販店ではなく直販だ。

後2階半分は自動車ディーラーや航宙艦ディーターや中古自動車、中古航宙艦等の販売店等が入っている。

地上3階は結構マニアックで、自動車や航宙艦のカスタマイズ部品や素の電子部品、コンピューターの純正メーカーではないいわゆるサードパーティ的な各種インターフェースや、何かの部品らしき物やジャンク品等も販売されている。


俺たちは地下1階で航宙時の食品類を購入し、船に配達してもらい。そのまま、1階の洋品店や雑貨店等を物色しながら、ぶらぶらと2階に上がった。

店を見ていると、コンピューターが目に入り、そうだquantum言語の勉強に1台購入しようと思いつき、結構なハイスペックノート型パソコンを1台購入した。

1台、120万Gだぜ。まぁ。地球でも出始めのころのパソコンって本体とモニターに100MのHDD付けて買うとこの位したらしいからな。G(ギガ)でなくM(メガ)だからな。

パソコンは、トァカミさんの実家の子爵邸に送ってもらい、また手ぶらで店の物色を開始した。


2階をふらふらしていると、1軒のお店から出てきたスーツを着た男の人が話し掛けてきた。

『トァカミ坊ちゃんじゃないですか。実家に帰ってらっしゃったんですね。』

『ん。君はサトゥクか?実家に帰って来てるのはその通りだが、坊ちゃんはやめてくれ。』

『では、トァカミさん、どうです研究の方は。』

『うむ。順調とまでは行かないが、多少は成果が出ている。』

『そうですか、それは良かった。ところでお連れさんはどなたです。』

『あー。この子は私の婚約者でカムミム。それと後ろに居るのは帝室の関係者だ。』

『てっ。帝室・・。これは大変失礼いたしました。私はトァカミさんの中等学校の時のクラスメイトでサトゥク・シュミットと申します。』

サトゥクさんが俺たちの方を向いて言う物だから、俺は『いえいえ。帝室の関係者と言っても俺たちは爵位もありませんし、気軽に接してください。』と言っておいた。

『ところでサトゥク。君はここで何をしていたのだ。』

『やだなぁ。トァカミさんここは私の店ですよ。ほら、シュミット自動機器工業って看板出てるでしょ。』

サトゥクさんが店の看板を指さして言うのを、トァカミさんが見て『なるほど。』と言っている。

『なるほどじゃないですよ。中等学校の時にも話してますよ。』

トァカミさんは『そうだったかぁ』と頭を掻いている。

続けて話題を変えようとしたのか『それはそうと、君の方の仕事は順調か。』とサトゥクさん聞いた。

サトゥクさんは困り顔で『それが、今一つなんですよ。』と言う。

『そうなのか。』

『うちは地方メーカーですし、自動調理器は後発メーカーですからね。あ、すいません。外で立ち話も何ですから、お店の中に入りませんか?』

俺たちは誘われるまま、シュミット自動機器工業の店舗の中に入り、応接用のテーブルに座った。


『それで、うちは後発メーカーですし自動調理器は帝都の先行メーカーにシェアを独占されている状態で売り上げが思わしくないのですよ。』

『なるほどな。それで今後の施策はあるのか。』

『いやー。これがなかなか・・。各社の自動調理器の料理も食べてみたのですが、違いはほとんどないんですよ。』

サトゥクさんはほとほと困った顔をしてそう言った。多分、沢山試行錯誤したんだと思う。


『あのぉ、すいませんが、子供たちにお菓子を食べさせたいのですが、調理できる場所を貸していただくことは可能でしょうか。後、同じ物を自動調理器で作って頂きたいのですが、レシピをお渡しすれば可能でしょうか。』

俺は、色々お菓子を作ってきて、なんとなく自動調理器の欠点を感じていたのでそう提案してみた。


『え。あ。はっ。はい。店のバックヤードの調理スペースがありますのでお使いください。自動調理器の方も難しい物だと設定に時間が掛かってしまいますが簡単な物でしたら大丈夫です。』

突然の提案にサトゥクさんは驚いているが、調理スペースを貸して貰えることになった。

後、カムミムさんのニコニコが増幅したみたいだが、気にしないでおこう。


『では、クッキーを作ってみましょうか。レシピはこれになりますがサトゥクさんの情報端末に送りますね。』

俺は翻訳して置いたクッキーのレシピをサトゥクさんの情報端末に送り、『材料買ってきます。』と言ってサトゥクさんのお店を出て、地下1階に行き薄力粉、バター、砂糖、卵を購入した。

でも、卵1個で売ってなくて6個パック残りどうしよう・・。卵デカいし・・。

塩と牛乳とコショウも買って行ってスクランブルエッグも作ろうかな、ホテルの食堂でも出てきたし、自動調理器を設定しなくても出来るかもしれないからな。

牛乳とコショウを買って、塩は合成塩ではなく、天然塩を選んで購入した。


サトゥクさんのお店に戻り、調理スペースで先ずはクッキーの生地を作った。

今日はプレーンクッキーである。


バターを潰して、かき混ぜて、砂糖を入れ、またかき混ぜ、卵の卵黄を潰してよく混ぜる。潰した卵を少しづつバターに加えながらよく混ぜ、薄力粉を加えてさっくり混ぜると。手でまとめて、ラップをかけて、冷蔵庫に保管。


クッキーの生地を休ませている間に、スクランブルエッグを作って、とはいえ、バターを自動調理器用のフライパンに入れて溶かして、温まったら卵液と牛乳、コショウ、塩を混ぜた液を流し込むだけ、後は自動調理器がフライパンの中身を混ぜてくれるので出来上がるまで待つ。

仕上がりも、自動調理器に設定しておけば、半熟から、ソフトスクランブル、ハードスクランブルまで自由自在だ。すごいよね。今回は半熟で設定してみた。

それと同時に、自動調理器にフードカートリッジからスクランブルエッグを作ってもらっている。こっちも半熟設定だ。

この後クッキー生地の作業をするので、両方とも冷めないように、自動調理器に保温してもらった。


30分たったので冷蔵庫からクッキーの生地を取り出し、伸ばして、生地を同じ大きさの四角に切る。いい加減クッキー型が欲しいぞ。

天板にバターを薄く塗って、粉を振り、切ったクッキー生地並べて自動調理器で焼く。

いやぁ。お店だけあって自動調理器が何台もあって大助かりだ。


その間に、自動調理器取り出したスクランブルエッグをもって、皆のいるテーブルに運ぶ。

まずは、自動調理器が作ったスクランブルエッグから食べえてもらった。

サトゥクさんはうんうん頷いて食べている。

次に俺が作った卵液で作ったスクランブルエッグを食べてもらう。

サトゥクさんはスプーンで一口たべて少し驚いたようだが、次に掬ったスクランブルエッグをまじまじと見ている。

いや、スクランブルエッグの下を覗き込んでもスプーンしかないから。


そうこうしていると、クッキーが焼けたようだ。こちらまで甘い匂いが漂ってきている。

俺が自動調理器からクッキーを取り出し、皿に盛り付けていると、何処からか、小さな女の子がやってきて『何してるの』と聞いてくる。

お店の調理スペースに店の関係者以外の子が来ることも無かろうと思い『今、サトゥクさん達とお菓子食べようと思ってクッキーを作ってるとこだよ。』と言うと、女の子はタターと奥に引っ込んだと思ったら、大きな声で『ママー。おじさんとパパがお菓子たべるんだってー。わたしもたべていい。』と聞いている。

いや。おじさんはやめてー。と言うか、サトゥクさんのお子さんだったのね。


『あらあら、すいません。』と先ほどの女の子と一緒に女性が戻ってきて言う。

俺が『一緒に如何ですか』と聞くと、女性が『あらあら。じゃぁ。お茶を入れましょうね。』と言って、お茶を用意をしてくれた。

クッキーを盛ったお皿を持ち皆のいるテーブルに戻ると、先に自動調理器が作ったクッキーを食べてもらい、その後に俺が作ったクッキーを食べてもらった。


食べ終わって、サトゥクさんは『いやぁ。驚きました。自動調理器で作った料理もおいしい。しかし、あなたの作った料理はもっとおいしい。この違いは何なのでしょう。』と言う。


俺は『そうですねぇ。私も詳しくないので推測ですが調味料の違いなんじゃないかと思ってます。』と答えた。

『調味料ですか。』

『はい。多分、自動調理器は調味料もフードカートリッジの材料から生成してるんじゃないかと思うんです。要は人工甘味料に人工塩と言った調味料を使って、料理を作成しているんじゃないかと思ってます。』

『その通りです。味付けに関してもフードカートリッジ内の材料を元に塩味、甘味、酸味、苦味等のを再現しております。』

『やっぱり、そうですか。これも推測ですが、例えば塩味を表現するのに塩を生成していると思うのですが、塩その物、科学的な塩を生成しているんじゃないかと思うんです。でも、天然の塩は科学的な塩以外の物も含まれていますよね。それがこの微妙な味の違いになってくるんだと思います。』


『そうですか。大変参考になりました。有難う御座います。』

『いえいえ。自動調理器で俺が楽したいだけなので、お礼などは・・。あ。1つ良いですか。300度位までの耐熱性能がある紙と言うか紙にシリコンを塗布したような物とか知りませんか。』

『んー。私は知りませんな。何に使われるのですか?』

『さっきもクッキーを作った時に天板にバターを塗って粉を振って焼くのですが、バターが付いていると天板を洗うのが面倒じゃないですか。そこでその紙を敷いておけばバターを塗らずにクッキーが焼けるし天板を洗わなくて済むので楽なんですよ。』

『それは私も欲しいですな。自動調理器の洗浄で余計な水を使わずにすむじゃないですか。』

『そうですか。見つかったら教えてほしいのですが、宜しいですか。』

『はは、お教えしますとも。いや、無かったらうちの会社で作ります。』

『ww。宜しくお願い致します。そうだあと、この辺で中古の航宙艦シュミレーションシステムを販売してる所をご存じないですかね。』

『あれは、中古で販売してる所は無いんじゃないですか。大型のゴミ処理業者とかなら回収して持っているかもしれませんが・・。後はうちの親会社が3年前まで製造してたんですが、今は売れなくて止めてしまったんですよね。はは、親会社と言っても私の父の会社なんですが、そこに不良在庫が残っていればお譲りしますよ。』

『そうですか。うれしいです。』

『ただし、メンテナンスサービスも終わってるので壊れたらおしまいですので、その点だけ了承ください。』

『分かりました。』





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