第17話

2-12

●惑星エイメーヤと拠点構築


これからユースケ大佐が曲芸飛行をするみたい。でも曲芸と言って侮ってはいけません。

戦闘時に有用な飛行テクニックが見られるかもしれない。

私も大佐の操船テクニックを見て参考にしなければ。


『じゃぁ。行きますよー。最初はループコースター。』


さあ、始まるわ。でも、ループは分かるけどコースターって何かしら。

ティーカップの下に引く敷物の事かしら、でもループと何の関係が・・。

わっわっわ。ナニコレ体がぞくぞくする。なにかお尻がスーっと。シッシートから離れちゃいそう。

それに、大佐の左手が、物凄い速さでタッチパネルのスイッチを次々に押している。

子供たちが『キャー!キャー!』言ってるけど、大丈夫なのかしら。


『次はトルネードーー!』


次の技に行くみたいね。

ぐッ。今度はシートに押し付けられる。それに目が回る・・。

いえ。大佐の動きを見なくちゃ・・。

えっえっ、左手が物凄い速度で動いてるん・・ですけど・・。

あれ、指の残像・・。あっあんなのわたしは・・真似できない・・。

うぐっ。目が回って・・きっ気持ち・・悪い・・。

子供たちはよく平気ね。すごく喜んで笑い声をあげてるんですけど・・。


『最後はフィギアスケートの三回転フィリップ~!』


えっなに。三回転は分かるわ、でもフィギアスケート?フィリップ?ってなに。

あら、子供たちの声が遠くに聞こえ・・・るぅ。

あれ?あははっ。大佐の指が・・10本に・・・。

じゅっぽ・・・・。

じゅ・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・。




『・・・ちゃん。・・えちゃん。おねえちゃん。アニエルおねえちゃん。だいじょうぶ?』


『はっ!』わっ私、気を失ってたのかしら・・。子供たちに起こされて・・・。

私は子供たちに『うん。もう大丈夫ですよ。起こしてくれてありがとうね。』と言って頭をなでてあげた。

『おねえちゃんになでてもらった~。』『あたしも~。』と言って恥ずかしそうにニコニコしている。

ふふっ。子供達はかわいいわね。私にもこんな子供が生まれるのかしら・・。


大佐の方を見ると床に座らされている。佐井田さんが叱っているみたい。あっ拳骨、いっ痛そう。私まで首をすくめちゃったわ。


あら?なにか・・。だっ大丈夫。すす少しだから・・。

大佐が怒られているうちに、こっそり着替えちゃわないと・・。子供達も気が付いていないみたいだし・・。


◆----------

その後は何事もなく・・、たん瘤は出来たが・・。惑星クドラのコロニー型宇宙港に到着し、地上の宇宙港まで帰ってきた。

宇宙港からは、トァカミさんのお兄さんのジーザさんがワンボックスカーのような車で迎えに来てくれ、俺たちはクドラ子爵邸に辿り着いた。


一旦、貸して頂いている部屋に荷物を置き、応接室に戻ってみるとシュバルツさんがクドラ子爵に怒られていた。

『気持ちはわかる。だがな、あそこはもう船も行かない星になるはずだったんだ。どうやって生活していくつもりだったんだ。』

『それは、一様小さいですが畑を作りまして、自給自足を・・。』

『野菜だけで生き延びようとしたのか?それだけでは量も栄養も足りないだろう。それに病気やケガをしたら、どうするつもりだったんだ。あそこはもう連絡用の通信機も置いてないんだぞ。』

『・・・。』

『分かったか?私とて意地悪を言っている訳ではないんだ。廃棄した星に手違いで人を置いて来てしまいましたとなったら、それこそ管理者である私の責任だ。その上、その者が餓死や病気で亡くなったら、目も当てられん。』

『子爵様、お願いだ。儂はどこにも行くところが無いんだ。もう親類も居ない。頼れる奴も居ないんだ。お願いだ、あそこに住まわせてくれ。』

『そうれは、もう聞いた。』

クドラ子爵も呆れた顔をしている。


俺は近くに居たトァカミさんに小声で聞いてみた。

『教授、将来的にあの星には研究棟と滞在用に屋敷を建てないといけないと思うんですが、彼をそこの管理人にしてしまうのはどうでしょう。』

『それは良いかもしれないね。父上も困っていらっしゃるようだしね。』

『ただ、簡単には行かないとと思うんですよ。まずは物資の物流をどうするか、少人数のために船を行き来させるとなると経費がかさんで大赤字だと思いますよ。それこそ教授のシステムで物資を送り込めれば問題なさそうですが、今度は安全性が問題になりますよね。』

『そ、そうだな・・。』

『もう、簡易的に作ってしまうなら、システムを彼方と此方に設置しお互いに通信出来るようにして置いて、自分の持ち場「転送用の空間」の安全と座標を相手に送るみたいにしたら、とりあえずは問題ないじゃないですか。自分の持ち場なんで、安全確認を量子スキャンだけでなく、各種センサーにも頼れますし。』

『うむ。』

『で、このシステム。俺が一番恩恵に預かれるんですよ。w。ほら、故郷を探しに行く時に船の中で補給が完結する。ww。』

『そっちが本命か。ハハハ。』

『まずは、研究棟を建てないと話が始まらないので、その事を子爵様に話して、もう、その工事の責任者に彼をあてがってしまっても良いかもしれませんよ。』

『そうだな。父上に話してみるか。』


クドラ子爵もこちらでコソコソ話しているのが気になったのかこちらを伺っている。

『父上、彼の事なんですが、惑星エイメーヤで拠点を建築する責任者ととして、私が雇っても宜しいでしょうか。』

『そうれは、構わんが・・。あそこに屋敷を建てるのか?』

『はい。屋敷もそうですが、研究施設も建てたいと思っております。それとこれは彼しだいなのですが、守秘義務契約をして頂ければ、建築の終了後も屋敷と研究施設の管理人として雇っても良いと考えております。』

『シュバルツ。息子がこう言っているがどうする。』

『儂はあそこに住んでいいならお願いしたい。それで儂は何をしたらいいんだ。』

トァカミさんは『とりあえずは、惑星エイメーヤで拠点を建築する責任者をして頂きたいのですが、その前に父上、こちら、クドラ側にも研究施設と言うか物流施設を建てたいのですが、何処か良い所は無いでしょうか。』

『あまり人が来ない方が良いんだよな。うむ。』

『それと、定期的に彼方から採掘したパプラス金属を送りたいので、あまりこの屋敷から離れているのもどうかと思われます。』

『む。そうか。では、この屋敷の隣の庭に建ててしまってもいいが、どのくらいの大きさで建てたいんだ。』

『そうですね。一度にどれくらいの大きさの物を送るかに寄るのですが、生活物資はそれほど大きくは無いと思いますし、パプラス金属を送る量次第でしょうか。』

『では、ガレージ位の大きさがあれば問題ないな。』

『そうですね。高さがもう少し欲しいかもしれません。それと制御室の分もう少し大きくなるかもしれません。』

『なるほど。少し大きいくらいなら大丈夫だろう。』

『それで、父上、採掘したパプラス金属を売って建設費に充てたいのですが、これが後何個位あれば大丈夫でしょうか。』

トァカミさんが荷物から10cm×10cmの立方体を取り出した。

それを見たシュバルツさんがいきり立った。

『坊ちゃん。それはパプラス金属か、鉱床がまだあったのか。』

『まぁ。鉱床はあったんですが、人の行ける所ではないですね。』

俺は慌ててクドラ子爵の方を向いて『すいません。シュバルツさんに先に守秘義務契約をしてもらった方が良いんじゃないですか?』と言った。

クドラ子爵も慌てて、執事さんに契約書を持ってくるように言って取りに行かせた。

持ってきてもらった契約書2枚にクドラ子爵はパプラス金属、及び鉱床と物質転送システム関連の追記と自身のサインを行い、両方にもシュバルツさんにサインしてもい、片方をシュバルツさんに渡した。


『では、俺から今回発見されたパプラス金属鉱床について説明させてもらいます。』と言うとクドラ子爵が、待ったをかけた。

念のため、盗聴防止用の妨害電波のような物を発生させる装置を起動し、ついでに窓のカーテンを閉めた。

そして、壁に付いたスイッチを押すと天井からスクリーンのようなもんが下りてきた。

トァカミさんが俺の情報端末とスクリーンを有線で接続してくれ、ついでにアプリを起動してくれた。

これで、俺の情報端末に文字や絵を描くとスクリーンに映し出されるようになった。


俺は大雑把に宇宙港があった大陸の端を線で情報端末に描き、その上方に『大陸』と書き線で区切った反対側に『海』と書いた。

大陸の海側中央付近に星マークを描き矢印で『宇宙港』と書き、海側の大陸から離れた場所に大陸に沿って線を描き矢印で『海溝』と書いた。


『今回発見されたパプラス金属鉱床はこのあたりになります。』と、海溝の大陸側に色を変えて弓状に線を引く。

『この鉱床は海溝の淵に存在し、海面から約6000m下になります。』


クドラ子爵とシュバルツさんが同時に『6000m』と呟いている。


『無理をすれば海面下6000mに深海調査艇等で行って岩盤の掘削を行う事はもしかすると出来るかもしれませんが、当然、その岩盤の上には堆積した土砂が分厚く乗っています。掘削する振動でこれが崩落したら確実に帰ってこれません。』


クドラ子爵とシュバルツさんは冷や汗をかいている。


『しかも、この鉱床は幅180m、高さ230m、長さ3000kmと超巨大です。』


クドラ子爵は『3000km』と呟いていたが、シュバルツさんはもうポカーンとしている。


『そこで、トァカミさんの転送システムを利用し、採掘を行えば人的被害無くパプラス金属を入手出来るのではと考えました。』


クドラ子爵はうんうん頷いている。


『しかし、これにも落とし穴があります。それは採掘した場所が空洞になってしまい、放置すると海水の圧力で崩壊し、巨大津波が発生する可能が出てきてしまいます。』


クドラ子爵は今度は『うむー。』と唸っている。


『そうなると、多少高台に作られているとは言え宇宙港や居住施設もですが、全て流されてしまう可能性があります。従って、この鉱床は少しづつ採掘し、直ぐに埋め戻しながら行う必要があると考えております。』


クドラ子爵はまたうんうん頷いている。


『埋め戻しは、最初は以前の採掘で出た残土で賄おうと思いますが、この鉱床の大きさを考えると直ぐに残土は尽きてしまうはずです。そこで小惑星帯からある程度の大きさの岩石を採取し、その後はこれを埋め戻そうと思います。』


クドラ子爵は大きく頷いて『分かった。』と言ってくれた。


ここで、今まで黙っていたトァカミさんがクドラ子爵に売却について相談を持ち掛けた。

『それで、父上、パプラス金属の売却なのですが私達では伝手がなく、売却益の2割を手数料としてお支払いしますので、クドラ子爵家で販売して頂くことは可能でしょうか。』

『いや。そんなもの貰わなくともやってやるから心配するな。』

『あのぉ。すいません。クドラ子爵。私としては税務省に変な疑いを掛けられるのは嫌なので、貰って頂けると嬉しいのですが。』

何故か、執事さんがコクコク頷いている。

『旦那様、宜しいですか。先日パプラス金属鉱床の廃坑申請を行った時の税務省の役人をお忘れですか。』

執事さんがしゃべった・・。クドラ子爵も思い出したのか、嫌な顔をしている。


『ですので、契約書をしっかり作成して、お金の事はきっちりハッキリさせておいた方が後々税務省に難癖を付けられなくて良いと思うのですが。』


『う、うむ。分かった。但し、手数料は1割で良い。それで契約書を起こそう。』


『分かりました。そうしたら、トァカミさん。惑星エイメーヤの拠点ですがクドラ子爵のご家族が滞在できるように広めにお屋敷を建てましょうか。』





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