第16話
2-11
●鉱床と転送システム
俺がカムミムさんのパンツを見ていて戦闘艦の高度を落としてしまい、「ヤバッ!」と焦っていると、トァカミさんが『パプラス金属の鉱床が見つかったぞ。』と言った。
『海面から6000m下だ。』
いやそれ、人では掘れないですから。
『幅は・・・。約180m、厚さが・・ムー。約230m』
デカッ。
『長さは・・。分からん。まだ、南北に続いていそうだ。』
それは凄い。
・・でもトァカミさんはそろそろカムミムさんに気付いて上げて、なんかワンピースのスカートが頭に絡まってバタバタしてるから・・。
俺は『じゃ、じゃあ、この高度を維持したままさっきの場所まで戻るので、鉱床を見えたら言ってください、それに沿って北に向かいますね。』と言って船を旋回させた。
見かねた佐井田さんが、カムミムさんを助けに行ったよ。
子供たちに『お姉ちゃん、たいじょうぶ。』と聞かれて、カムミムさんは『ふえーん。』と泣き出してしまった。
カムミムさん鼻血出てるけど、顔打ったのね・・。
カムミムさんは佐井田さんと子供たちに付き添われ、コックピットを出て行ってしまった。
って言うか、トァカミさん研究の事になるとほんと周りが見えないよね。もう少しカムミムさんの事、気にしてあげなよ。婚約者なんだから・・。
トァカミさんが『よし、見えてきた。北へ進路変更だ。』
俺は『・・・。らじゃー。』と言って進路を北に向けた。
機体を北に向けて30分、鉱床の北端に到着した。
先端が少し西側にある大陸の方にに曲がっているようだ。
今度は南に向かって機体を向け、探索を開始したんだけど、行けども行けどもずーっとパプラス金属の鉱床がある。
4時間弱、やっと鉱床の南端に着いた。
大体、時速800km位で飛行して来たから、・・・約3000km・・。
鉱床の南端は北側の端と同じように西側に曲がっていた。
なんか、チョコクリームとミルククリームを混ぜる時に先にチョコクリームを台に流しておいて、後からミルククリームをチョコクリームの上から注ぐとチョコクリームが押しやられてこんな感じに曲がった曲線が出来る事があるんだけど、このパプラス金属の鉱床もまだ大地が固まっていない時に押しやられてこんな風になったのだろうか。
という事は、今まで西側の大陸で採掘してきた鉱床ってこれの飛沫ってことか。いや、知らんけど・・。
俺たちは、鉱床の南端で一辺10cmの正立方体のパプラス金属のサンプルを入手し、今夜はこの星の鉱床用宇宙港で一泊することにした。
この星の時間でも日は沈み夜に入っており、標準時でも夜中に近い。
ただ、俺たちは船の外に出て祝杯を挙げていた。
まぁ。子供たちはお眠の時間で既に寝ているが、大人たちだけで、近くの森から薪を集めて火を起こし鉄の串に塩コショウした肉を刺して焼いて、ビールでの祝杯だ。
肉のタレは醤油が無いからアルコールを飛ばした透明な甘いお酒に塩とレモンの汁を加えたシンプルなものだ。
醤油は探せばあるのだろうか。
『お疲れさまでした。明日は子爵様に報告しないといけないですね。』
『そうだな。』
『ただ、これを売るにしても我々だと伝手がなく、子爵様頼りになってしまうんで、手数料払って売ってもらうんで良いですかね。』
『そうか?父上ならタダでやって貰えると思うが。』
『いえ。ダメですよ。お金の事はちゃんとしないと、所得に対して税金とかの申告だってあるんですから。子爵様に実入りも無いのに莫大な税金払わせるのは嫌ですよ。』
『なるほど。』
やっぱり、トァカミさんって研究以外の事はほんとうといなぁ。
『へっへっへっ。で、取り分どうしやす。ダンナ~。』
『誰がダンナだ。』
『いえ。ちょっと乗りで。w。で教授どうします。子爵様に手数料で2割。教授が5割。俺が3割でいいですか。』
『私は教授では・・。まぁいいか。私は5割ではなくていい。私と雄介君で4割ずつにしよう。』
『え。良いんですか?ここ教授の星ですよ。』
『鉱床を見つけたのは君だろう。』
いえ。見つけられたのは、カムミムさんのパンツのおかげです・・。でも言えない・・。
『ハハ。これでやっと佐井田さんと子供たちを養っていけそうですよ。』
『君はそんな事を考えていたのか、それは私たちが責任をもって養っていくから安心しろ。それが償いでもあるのだから。』
『いえね。とても有難いとは思うんですが、俺としては男の矜持と言うか、プライドと言うか、やっぱりこう養って貰うって言うのはちょっと。あ、相談とか助けて貰うとかこの先も沢山あると思うんです。その時に相手にして貰えれば俺は良いです。その時も絶対助けろとか相談事を解決しろだとか言いませんよ。そんなの我がままでしかないですから、聞いて貰えて助言が頂ければそれで良いです。』
『・・そうか。』
『で、カムミムさんとのお子さんは何時頃生まれる予定ですかね?w。』
『ばっ。まだ、結婚もしてないのに生まれるはずがないだろう。』
『アハハハ。俺としてはこう言う馬鹿な話も受け止めてくれる関係が良いんですよ。』
『まったく。君は人を揶揄うのも大概にしろ。』
と、言うか知らない間に人が増えてるんだが・・。小さいおじさんが・・。
『で、そこのおじさん誰でしょう?』
びっくりしたカムミムさんがトァカミさんの後ろに隠れちゃったよ。
『儂か。儂はここに住んで居るシュバルツだ。』
『???。子爵様にはもう誰も居ないと聞いていたんですが。』
『なんだ、子爵様の知り合いか。誰かと思ったぞ。』
いや、肉を勝手に焼いて食べてるし、ビール飲んでるし・・。
『???。トァカミさんはご存じですか?』
『いっ。いや。知らないが・・。』
『わっはっはっはっ。儂はなここで工夫をしておったんだが廃坑になってしまってな。行くところも無いし、もう年だから何処も雇ってくるところもなかろう。
でな、ここで死んでいった、先達や同僚の墓を守って行こうと思って、ここに残ったんだ。』
『はぁ。そうですか。ってか、なんで肉食って、ビール飲んでるんですか。』
『いやなに、家に居たらいい匂いがしてな、それに酒の匂いもして来てみたら、誰だか知らないが、肉を焼いて、酒飲んでるじゃないか。声を掛けようと思ったんだが、なにか良い話をしていて、掛け損ねてしまった。てへっ』
てへっ。じゃ無いよ。おじさんがするなよ。かわいくないからな。・・最近俺もやったような・・。
それに声掛けられなかったら、待つだろ普通。
なんか、むかっ腹が立ってきた。気分良く飲んでたのに・・。
『でも良かったですね~。我々に今見つかって、今度新開発の採掘機を誰も居ないここで試そうって話してたんですよ。危うくシュバルツさんを挽肉にしてしまうところでした。ハハハ。』
『なぬっ・・。』
目を見開いて驚愕してるようだけど、なんで肉食うのもビール飲むのもやめないかな。
『あと、子爵様には報告させてもらいますからね。それと、この星ですが、既に子爵様からそこに居る子爵様の息子さんのトァカミさんに譲渡されてるんで、退去されないのでしたら、軍に通報させてもらいますよ。・・あ。俺がその軍でした。w。』
肉と酒も尽き、宴会も終わりななった。
と言うか、シュバルツおじさんにほとんど食われたんだけど・・。
シュバルツさんには今夜は空いている一般兵室に泊まってもらい。明日子爵さまに報告することにした。
部屋に入ってもらう時に、『逃げたら、挽肉になっても知りませんよ。』と言っておいたから大丈夫だろう。
次の日、早速子爵様に通信を入れ、パプラス金属鉱床が海の中で見つかった事と、シュバルツさんがこの星に残っていた事を報告した。
詳細は戻ってからと言う事で、パプラス金属鉱床については概要だけ話しておいた。
シュバルツさんに関しては、子爵様に連れて来てくれと言われ、身の回りの物を家に取りに行かせた。
シュバルツさんを載せて惑星エイメーヤを出発して惑星クドラへ向かっている途中、子供たちに『きょうは、ぎゅいーーんてやんないの。ねぇやってー。』とリクエストを貰ってしまった。
『ん-。じゃあやって上げるから、シュバルツのおじちゃん呼んで来てくれるかな。』
まぁ。この戦闘艦になって戦闘機動の練習もしてないからな。今回は自動姿勢制御外すけど、速度はリミッター速度を越えなければ大丈夫だろう。
子供たちがシュバルツさんをコックピットに連れて来て、補助のシートをもう一つ出して座らせた。
みんなが着席しシートベルトをしたのを確認してから、俺は『じゃぁ。行きますよー。最初はループコースター。』
下方に降下しながら速度を上げて、クルンと一回転。上の頂点付近で減速と下方に落ちる感覚を再現させた、スペシャルループだ。
子供たちが『キャー!ハハハハ。』と言っている中、『ギャー!』っと汚い声が聞こえる。
『次はトルネードーー!』と言い、機体を同心円上にクルクル回す。
子供たちが『キャハハ。キャー!。』と言っている中、『ギャーー!』っとまた汚い声が聞こえる。
『最後はフィギアスケートの三回転フィリップ~!』と言い、機体を半回転させてバック走行の位置にし、ちょっと跳ねさせてから、水平方向に3回転クルクル回してバック走行の位置に戻る。
子供たちが『ワー。アハハハ。キャー!。』と言っている中、『ヤメッ。ギャーーー!』っとまた汚い声が聞こえる。
子供たちが『たのしかったね。』『ねー!』と言っている中、シュバルツさんは白目を剥いて気絶していた。
ん。アニエル少佐。なんか目を開いたまま首がカクンってなってるけど大丈夫だよね。
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