第15話

2-10

●試運転とパプラス金属鉱床


俺、と言うかトァカミさんとクドラ子爵だが、アニエルさんを応接室に連れて行き、家族の紹介と挨拶をしている。

ただ、末娘のシアーナさんは学校で居ないんだけどね。


俺はと言うと朝食を食べ終わったら急にイチゴのタルトが食べたくなってタルト生地を焼いている。

生地自体は朝食後、直ぐに作り始めて冷蔵庫に入れておいた。


タルト生地を焼いている時間で、アーモンドっぽい物を粉にしてアーモンドクリームを作った。

これが本物のアーモンドかは疑わしいんだが・・。形が違うんだよね。丸っこい。まぁ味も似ているしOKでしょう。w。

そして、今はカスタードクリームを仕込んでいる。

カスタードクリームって気を抜くと、速っこー失敗コースだよね。

出来上がったら、カスタードクリームは冷蔵庫行。


タルト生地が焼きあがったら、アーモンドクリームを中に塗って?盛って平らにし、もう少し焼く。

焼きあがったら、粗熱をとるのにキッチン机の上で放置。


次にナパージュを作る。果物に塗ってキラキラさせるやつだな。

小皿に水をいれて沸騰させ、砂糖をよく混ぜ合わせる。

そこに、ほんとはゼラチンを入れるんだけど、無かったらふやかしたアガーを入れる。


冷蔵庫から出したカスタードクリームをヘラでよくネリネリして絞り袋に入れる。

放置していたタルト生地にカスタードクリームを投入し丘のように真ん中を高くする。

後は、俺がイチゴだと思った果物をスライスし飾り付けて、ナパージュを塗って冷蔵庫で30分位冷やせば完成。


今回は2ホール作ったから、1ホールを8等分すれば2つ余りだね。

前回みたいに12等分はちょっと少なすぎだったからな。


俺は執事さんと応接室に向かった。イチゴのタルトはメイドさんがワゴンに載せて付いてくる。

途中で俺は、メイドさんに『今日は2つ余りますから、1つはシアーナさんに取って置いて下さいね。また拗ねちゃうから。』と言いながら向かった。


応接室に入るとなんかアニエル少佐が困った顔をしている。

クドラ子爵が大仰な接待をしたのかな。


『皆さんの所に行き渡ったと思いますが、少しお待ちください。』

切り分けたイチゴのタルトを執事さんが少し食べて、『大変おいしゅうございます。』と頷き、皆がフォークを手に取ったタイミングで『あー。アニエル少佐は大変身分が高いお方の様なので、後30分お待ちください。執事さんに異変がなかったらお召し上がりください。』と言うとアニエル少佐はガーン!とマンガの様な顔をして文句を言ってきた。

『どうしてですか。大佐も食べるんですよね。』

なんか、ブンブン、フォーク振り回してる。ちょっとかわいい。

『私が作った物ですから、睡眠薬とか入れてるかもしれませんよ~。w。なんて、嘘でーす。どうぞ食べてください。w。』

『もう。もう。大佐は意地悪です。』と、プンスコ怒って、ほっぺを膨らませてる。ほっぺを膨らませながら食べてる・・。器用だな・・。

と言うか、執事さん、なんでもう完食してるの、カイゼル髭にカスタードクリーム付いてるからね。


皆がタルトを食べ終わり、紅茶を飲んでいると、そこで、アニエル少佐が衝撃の一言を言い放った。

恥ずかしそうにではあるが・・。『はしたないのですが、もう一つ頂けませんでしょうか。』

クドラ子爵が『ハイ、どうぞ。』と気軽に言ってしまって、俺はクドラ子爵に机の陰から人差し指を立て残り1つだと伝えようとしたが伝わらず。

執事さんがおろおろしながらも厨房に走った。


結局、残り2つの内1つはメイドさん達がおいしく頂いてしまった後で、最後の1つをアニエル少佐が食べることになった。


その後、シアーナさんが帰宅し、また自分の分のケーキがなかった事に激怒し、『もう、お父さんとは口きかない。』と宣言して部屋に籠ってしまった。

1時間後、クドラ子爵が俺にもう一つ作ってくれと泣きを入れてきたのは言うまでもない。


◆----------

その日の夕方、俺とトァカミさんとアニエル少佐でウラスの試運転に付いて話し合っていた。


明日はクドラ子爵に頼まれてイチゴのタルトをもう一度作らなくてはいけないので試運転には行けない。

材用がもう足りなく、買い出しからになるのでイチゴのタルト作りはほぼ明日1日掛りだ。


ウラスの試運転は明後日の朝から出発して、途中ウラスの動作試験を挟みながら惑星エイメーヤまで行ってみようと言う事になった。

惑星エイメーヤとは先日鉱床が枯れ廃坑になり、その後、トァカミさんがクドラ子爵から貰い受けた惑星だ。


俺は『じゃぁ。トァカミさんの研究も惑星エイメーヤでテストしませんか。生物の生息状況とか。パプラス金属の捜索とか。』と言うと、トァカミさんは『そうだな。やってみるか。』と了承してくれた。


次の日、俺は午前中を使って買い物をし、午後からタルトの作成を行った。

と言うか、昨日と同じイチゴのタルトだと面白くないのでフルーツタルトにしてみた。

イチゴだけでなく、桃、オレンジ、ブルーベリー、キウイ等盛りだくさんで作ったよ。


シアーナさんは帰宅すると、早速食べて喜んでいた。でも1ホールの1/4は食べすぎだと思うぞ。

残りのタルトはメイドさん達に処理してもらい、俺はまた三次元行列計算との戦いへと向かった。


次の日、朝早くから起きだし、宇宙港へやってきた。

昨日のうちに連絡しておいたので、既に機体が駐機場に止まっている。

宇宙港のラウンジには朝早い事もあり、殆ど人がいない。

受付のお姉さんも眠そうだ。


俺達は受付で出航の申請を行い、戦闘艦ウラスに乗り込んだ。

アニエル少佐に操縦に必要な操作をある程度説明してもらい、最初はアニエル少佐にメインパイロット席に座ってもらい、俺はサブパイロット席だ。

コロニー型宇宙港までの間、アニエル少佐に操縦をお願いして、それを俺が見学させてもらう事にした。


トァカミさんには、レーダー観測員席に座ってもらい、同時に近くに、物質転送システム(小)を設置してもらった。

それと、トァカミさんにはこの機体のレーダーシステムを転送システムのスキャン情報を取り込んだ物に改造出来ないか相談してみた。

トァカミさんは『やってみる』とは言っていたが直ぐには出来ないだろう。

なんせ、このシステムを使うと物質を透過した情報も取れるからね。

けっ、決して、お風呂を覗こうなんて思ってないぞ。

まぁ、男性か女性か位は分かるけど、このシステムのスキャン情報にそこまでの解像度はないからな。カムミムさんだと分からないかもしれないのは内緒だ。

画像データがあればテクスチャの如く、再現できるかもしれないが・・。

・・後でこれも相談してみよ。


今日は本当は俺とアニエル少佐とトァカミさんの3人で来る予定だったんだが、佐井田さんに話している時に子供たちに聞かれてしまい。

『わたしも行く~。』『わたしも。わたしも~。』となって、佐井田さんが諫めていたけど、効果なし。で、皆で一緒にやってきました。

今はコックピット内のお客様(予備シート)シートに座っている佐井田さんとカムミムさんに抱っこされてうつらうつらしている。まだ、朝早いからね。


早速、アニエル少佐は機体を操作して浮上し、この惑星のコロニー型宇宙港へ向かわせた。

見る限り特に民間機と操縦方法は変わらないようだ。

まぁ。違われても困るんだけどさ。


そうしている間に、コロニー型宇宙港に着いた。

武器類の封印解除と就航許可申請を行い。後は、許可が下りるのを待つだけだ。

軍用艦だから結構待つのかと思っていたが、何事もなく、10分程度で封印解除が終わり、15分も掛からず許可がおりた。

その間、俺はメインパイロット席に座って自分が操作し易いようにモニター類とタッチパネル式のスイッチ類の配置をカスタマイズしていた。


カスタマイズも終わり、俺はオートモードでドッキングベイを離れ、一路、惑星エイメーヤに向けて発進した。

目的地を表示させたメニューから選んで自動で座標を入力し、後はオートモードで船を走らせれば終わりである。

・・つまらん。

後はコロニー型宇宙港管轄内では他の宇宙艦船に接触しないよう、レーダーを見ているだけだ。

接触しそうだったら、ジョイスティックを少し右に倒す。今はそんな艦船居ないが・・。

この時も変更した進路に障害物があると船のアシスト機能で回避してくれる。

宇宙港管轄を外れたら、その後は、もうパイロットシートに座っていなくても良い。暇すぎる。


1時間30分後、間もなく到着するサインがキンコンなって知らせてくれるので、パイロットシートに座って状況を確認する。


オートで逆噴射が徐々に掛かり、スピードが落とされていく。

30分後、目的に着き徐行に入るとオートモードが切れた。この惑星はコロニー型宇宙港がないので、こんな感じらしい。

宇宙港があれば送られてくる信号に従って、オートでドッキングベイに誘導されドッキングまでしてくれるそうだ。


惑星エイメーヤの軌道上に着いた俺達は、このまま鉱山用の宇宙港に一旦下りるか、大気圏内に入りそのまま鉱床の調査を開始するか話し合った。

結果、鉱山用の宇宙港に行っても今は誰も居ないし何も無いので、このまま鉱床の調査を行う事にした。


調査の方針として、地上から5Kmの上空を地表に沿って周回し、角度5度で地下5km位までを調査することにした。

なので、この船から角度2度で10km先で、幅約9kmを調査することにした。

北天から順に南下していく形で行くのだが、かなりの回数を周回しなくてはならない。


俺たちは北天付近に降下し、地上5kmをキープし調査を開始した。

そして、この惑星の自転と反対に時速1000km位の巡航で回っている。

もっと早く飛べるんだけどなんで1000kmかって言うと、これ以上早く飛ぶとソニックブームが起きて衝撃で木が倒れたりしちゃうからね。

5kmも離れていればそんな事も無いのかもしれないけど、一様ね、一様。


くるくる回って、もう何週したか分からない。でもまだ北半球だよ。org

そりゃそうだよね。専門家がもう無いって言って廃坑にしたんだろうから、そんなに簡単に見つかるはずないよね。


俺が、『ハー。』とため息をついたと同時に、『ハックション』と豪快にくしゃみをしたカムミムさんはそのままスっ転んで「ビッターン!」と音を立てた。

何事かとびっくりして音のした方、カムミムさんを見ると転んだ拍子に捲れたのかスカートが捲れ上がり、パンツが丸見えであった。

て言うか。あのくしゃみカムミムさんがしたのか?乙女がしちゃいけないくしゃみだったような・・。

あと、パンツにフリフリ付いてて、アンダースコートなの?この世界の女性は下着にアンダースコート履くの?


なんか機体がピーピー言ってるので、計器を見るとだいぶ降下してしまったいた。

びっくりして、操舵用のジョイスティック押しちゃったみたい。てへっ。

危うく海に落ちるとこだった。w。


操舵用のジョイスティックを引き戻してホッとすると、トァカミさんが『見つかったぞ。』と言うのだった。








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