第14話

2-9

●戦闘艦と特務大佐


私は今涙を拭いながら、戦闘艦ウラスを操船しクドラメーヤ星系へ向かっている。


おばさまは帝国のトップ、提督は軍のトップ、父上はクランド家及び貴族のトップ、この3人に命令されたら誰も断れない。

このままこの戦闘艦で何処かに逃げてしまおうかとも思ったけど、今度は命令違反で帝国軍に追われる身になってしまう。

たまたま逃げられても、逃亡先で生活していけるとは思えない。

傭兵組合に登録すれば、直ぐに軍にばれてしまう。

海賊にはなりたくないし、あんな非道な事、私には出来ない。


私の脳裏に命令書を受け取った時の事が思い出される。

『ふふっ。彼奴は本当に重要人物だぞ。嫌われぬよう十分注意するのじゃ。アニエル、彼奴はのお前の夫君になるやもしれぬ男じゃからの。』

『彼奴にはお前の出自は話しておらん。まぁ。クドラ子爵が気が付いてすぐにバレるとは思うがのう。』

『貴族が権威を振りかざして横暴に物事に対応すると嫌われるからのう。その点は十分注意するのじゃ。』

『彼奴は貴族自体を嫌ってはいないが、遠ざける性格をしておるからの、自分の友達のように接するのじゃ。』

『そして、アニエル、お前が彼奴の子を宿せねば帝室の未来はない。このような事は外聞が悪く貴族の権威に傷が付くので言いたくはないのじゃが、最悪彼奴を押し倒してでも子種を貰う事を考えて置くのじゃ。』

『彼奴にはお前が婚姻を目的にサポート役をしに行く事は話していないからの。婚姻などと言う事はつゆとも思っておるまい。』

『最後にな、彼奴的には帝室が途絶えようが滅亡しようが関係がない。なにせ彼奴は帝国の国民ではないからの。』

『もう一つ、お前との婚姻が決まったら、彼奴を帝国の国民として爵位を与えるか、わらわの養子として迎える。その点は心配しなくて良いぞ。』

『もう一つあったの。彼奴とは関係ないが、クドラ子爵の三男、トァカミの研究している技術は口外してはならぬ。』


私はもう一度考えてみた。

1つ、彼が私との婚姻を望んでいるわけではない。

2つ、帝室は是が非でも彼と私が婚姻を結ぶことを望んでいる。と言うか、彼との間に子供を作る事を望んでいる。

3つ、彼は貴族が権威を傘に横暴に振舞う事を嫌う。

4つ、彼は帝国の国民ではない。

5つ、クドラ子爵の三男、トァカミ氏の研究は極秘事項である。


こうして考えてみると、彼自身は悪い人では無いのでしょう。私からすればむしろ帝室の方が悪人です。

彼は帝国国民ではないとはどういう事でしょう。イルミナ商政民主連合の人間なのでしょうか。ただ、あの国にはヒューマンは居なかったはずですが。

それと、クドラ子爵の三男、トァカミ氏の研究は何か関係があるのでしょうか。


私はおばさまが彼の任務に付いても話していた事を思い出した。

彼の任務は最辺境の調査、帝国の図版を超えての調査になるらしい。

おばさまが命の危険がある場合には、彼を止めろとも言っていた。

しかし、彼はただの民間船で武装した海賊船3隻を撃墜した凄腕のパイロットであるとも言ってした。


そうこうしているうちに、私はクドラメーヤ星系へ着いた。

ここから惑星クドラへ向かい、辞令書と戦闘艦の引き渡しをするのですが、気が重い・・。


◆----------

俺達は近衛隊から連絡があり、戦闘艦の引き取りのため、惑星クドラ上の宇宙港に来ている。


機体の仕様は既に近衛隊から情報が送られて来ている。


★FLK-0137-C:ウラス(FLK-0137調査船仕様)

・最大搭乗人数:17名

・居住スペース:

  艦長室(個室) 1室

  上級士官室(個室) 3室

  下級士官室(2人部屋) 2室

  一般兵室(3人部屋) 3室

  会議室(定員20名) 1室

  食堂(定員15名) 1室

  娯楽室(定員15名) 1室

  浴室(定員5名) 1室

  トイレ 5ユニット(1ユニット=[男性用、小2、個室1:女性用、個室3])

・機体サイズ:

 全長:150m、全幅:100m、全高:30m(垂直尾翼含む:35m)

・ジェネレーター:

 2基搭載。最新ジェネレーターに換装済み。

・武装:

 上部、旋回式レーザー砲 2門

 機首部、固定式レーザー砲 2門

 翼元部ミサイルポッド 各1門(各20発)計2門

 翼端部、電磁式20mm実態弾連射砲 各1門計2門

 翼底面、旋回式パルスレーザー砲 各1門計2門

 付属戦闘艇 1機

・探査用センサー:

 レーザーセンサー

 赤外線センサー

 光学センサー

 超音波センサー

 X線センサー


・付属戦闘艇仕様

 最大搭乗人数:2人

 機体サイズ:全長:20m、全幅:12.3m、全高:5m(垂直尾翼含む:5.5m)

 武装:機首、固定式レーザー砲 1門、

    翼端部、固定式パルスレーザー 各1門計2門

    機底部、ミサイルポッド1門(10発)



以上が近衛隊から送られて来た機体の仕様である。


そうこうしていると、ラウンジから見ている空に黒い点が見えてきた。

黒い点はぐんぐん近づいて大きくなり、ラウンジの窓いっぱいに機影が映り停止した。

機体の底面が幾つも開き、ぶっといランディングギアが生えてきて、今度は降下してきた。


とにかく機体がデカい、トァカミさんの宇宙船も大きいと思ったのに、これはその倍以上ある。

もう、この宇宙港の駐機場の半分近くを占有してしまっている。

たまたま、宇宙港に来ていた他のお客さん達も目が釘付けだ。

普段、この宇宙港には軍艦が来るなんて事はめったにないのだろう。


トァカミさんに大きさに付いて聞いたら、駆逐艦級の船だからこんなもんじゃないかと言われてしまった。

トァカミさんの実家は領軍を持っていて、巡洋艦級の船を何隻も持っているそうだ。もちろん駆逐艦級も多数持っているとの事。

まぁ、戦艦級は旗艦の一隻だけだそうだけど。


このデカ物をここに置いておくと邪魔そうっだたので、ここに置いておくのか聞いたら、宇宙港の裏手に領軍の地下駐機場があるらしく、そこに格納するそうだ。

殆どの事案が巡洋艦級の艦船で事足りので出さないが、戦艦もそこに格納されているらしい。

どんだけ広い駐機場なの・・。


ボーディングブリッジが掛けられ、戦闘艦ウラスの扉が開くと、中から軍服の女性が下りてきた。

輝くような金髪を後ろで銀の半円状の飾りでまとめている。

顔も整っていて物凄い美人さんだ。

俺、こう言う人、気後れしちゃうんだよね。

性格が可愛かったら行けるかもしれないけど、あとはグイグイ来れれると絆されちゃうかも・・。

うーん。やっぱ無理かな。佐井田さんの方がまだ好みかもしれない、怒ると怖いけど・・。


女性がゲートから出て来ると、トァカミさんとカムミムさんがお辞儀をしている。

トァカミさんはボウ・アンド・スクレープだし、カムミムはカーテシーだよ。


何だこれ。偉い人なのか?

俺もした方が良いのだろうか。


女性は、トァカミさんとカムミムさんに『そう言うのは今日はなさらなくて大丈夫ですよ。今日は軍のお仕事で来ておりますので、頭を上げてください。』と微笑みながら言っている。なんか、優しい感じだ。

女性は、出遅れた俺の前に来ると、『ユースケ・クサナギ様でしょうか。』と尋ねてくる。

俺が『はい。』と答えると、凛々しい顔になりピッと敬礼をされた。

『提督、及び、皇帝陛下の名代として、辞令書、及び、命令書、乗艦される戦闘艦ウラスの引き渡しの参りました。』

俺は『ご苦労様です。拝命致します。』と言って、辞令書、命令書、艦艇引渡書を頂いた。


女性は、書類を受け取った俺に向かって再度敬礼をした。

そして、『クサナギ様、あなたはこれより特務大佐となり、私の上司になります。私の事はアニエル少佐をお呼びください。』

俺も見よう見まねで敬礼をして『了解しました。』と言ったら、『ふふっ。』と笑い『敬礼は練習された方が良いですよ。将官の中には煩い方もいらっしゃいますので。』と言われてしまった。


その後、トァカミさんが『ご案内します。』と言って、アニエル少佐を伴ってクドラ子爵家の車の方に歩き出してしまった。


「え、俺、戦闘艦の中見たいんだけど・・。」

と思っている俺の背中をカムミムさんがグイグイ押して、車に突っ込まれた。










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